弁護士「格付け」の無理とニーズ

     弁護士の「格付け」については、いろいろな見方があります。

     この手のもので、よく話題になるものに、日本経済新聞や日経ビジネスなどに掲載される弁護士ランキングがあります。あくまで大企業に対するアンケートを基にしていますので、企業ニーズを前提とした大企業の「顧客満足度」が見えるものといってもいいかもしれません。

     こうしたビジネス系弁護士のランキングについての同業者の評価は、さまざまですが、弁護士の仕事ぶりや評判について、意外と見えていないともいわれる同業者間で、その筋の弁護士や弁護士とかかわりを持つ企業関係者からは、「なるほどあの人ね」と、うならせる結果への感想も聞こえてくるにはきます。

     ただ、こうした「格付け」的なものが、企業ニーズに限らず、弁護士一般についても、あり得るのかとなると、意見が分かれます。

     問題として、まず、何をもとにするのかということがあります。「顧客満足度」の中身は、事案に対する具体的な対応・処理の仕方、結果、姿勢が考えられます。しかし、これを細分化して、指数のような形で集計しても、果たしてそれが「弁護士の格付け」として成立するのか、ということです。

     弁護士の対応は、事案によってさまざまで、ある対応の仕方がAの当事者に満足でもBの当事者を満足させられないことはいくらもあります。それを指数換算がどこまで反映できるのか、です。前記日経のランキングにしても、大企業ニーズに特化して、それなりの指標として成立している面もありますが、それこそ中小企業のニーズを念頭に置いたならばどうなんだ、という意見も出ています。

     集計ができたとしても、それが伝える市民へのメッセージとして、どの部分をランキングの意味するところのものと提示できるのかをはっきりしなければ、あるいは結果として、それをもとにして弁護士を選んだ市民の不満を生んだり、期待を裏切るだけに終わる可能性もあります。

     もうひとつの問題は、「格付け」の「権威」です。実施主体が、どれだけ社会的に信用されているかが、いわば「格付け」の「格付け」になります。その的確性の問題がありますし、弁護士ということについていえば、そうした「権威」が作られること自体に不安もあります。「権威」が成立している背景によっては、その顔をうかがうような弁護士が、必ずしも「格付け」を意識して、正しい向上心から社会にサービスを提供するようになる、よい意味で「評判を気にする弁護士」だとはいえないと思うからです。

     自治の責任主体として、では、日弁連が「格付け」主体になるのはどうか、といえば、関係者の話を聞いても、現状では難しいと思います。問題の一つは、強制加入団体として、「格付け」をすることの会員間の公平性が必ず問題になること、もう一つは前記したように弁護士の「格付け」方法自体の持つ困難性です。要するに、「格付け」の結果に対する会員と利用者からのクレームに対して、組織としては責任が負いきれないという見方があるようです。

     ただ、一つの動きとしては、弁護士の「専門」に関する認定制度を作る議論があります。これはランキングのような「格付け」とは意味が異なりなりますが、基準や責任という問題が発生する面では、前記した「格付け」と共通するものをはらむので今後の対応は注目されるところです。

     では、こうした「格付け」は必要かと大衆に問えば、どのような答えが返ってくるのでしょうか。おそらくは「必要」もしくは「あったらあったにこしたことない」といった回答ではないでしょうか。それは、少なくとも弁護士選びに対して、決定的に大衆は情報不足を感じ、選ぶ際の指標や目安、手かがりを求めていることは事実だからです。

     広告が原則解禁されているといっても、日弁連の弁護士業務広告規程やその運用指針を見れば、一般的な感覚からすると、相当な縛りがかかっているものに見えると思います。「格付け」の対象として、よく引きあいに出される「勝訴率」の表示は許されず、「専門」を名乗ることも、「得意」「取り扱い」という表現とは区別して、「自称」の弊害から前記認定制度構築を待つように指導しています。

     客観的基準が問題になることを強く警戒しながら、こうした社会的なニーズを認めざるを得ない日弁連の姿勢もうかがえます。

     インターネット普及という状況下では、既に口コミという大衆評価が、客観性の問題をはらみながら、あらゆる分野で、ひろく選択指標として活用されている現実や、既に「専門」にしても弁護士自身がホームページ上で、いろいろな形で情報を発信している現実があります。

     「ニーズ」ということを含めたそうした現実が、弁護士「格付け」への道を開いていくのか、それとも今後とも客観性という壁による区別化が、それを阻んでいくのか――。最終的にどちらが、この国の弁護士と大衆のつながり方としてふさわしいのかという視点で、注目していかなければなりません。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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