日弁連会長選挙結果から見える現実

     2月5日に行われた日弁連会長選挙の投票で、大阪弁護士会所属の中本和洋氏が次期会長に当選しました。同日現在の日弁連開票結果仮集計によれば、投票率は、通常の会長選で史上最低となった前回を下回らなかったものの、2番目に低い47.2%にとどまりました。中本氏が獲得した1万2282票は、初めて1万票の大台にのった前回を上回り、候補者単独の得票では史上最高ということにはなりますが、会員数増で選挙人数そのものが2700人近く増えています。むしろ、全選挙人数に占める得票数の割合は、仮集計結果をもとにすれば、前回当選者村越進氏の33.6%を、中本氏は32.9%と下回っています。

     一方、対立候補の高山俊吉氏の得票数は4923票と伸びず、最多票獲得会も4会にとどまり、支援者のなかには「予想外」という声も聞かれます。高山氏は2000年から2008年での連続出馬に加え、今回通算6回目ですが、前回2008年の得票数7043票を大きく下回り、かつ有効投票数に占める割合でみても、42.8%から今回28.6%と、「勝ち負け」の選挙からは遠ざかってしまった観があります。

     争点そのものは、はっきりしていたと思います。大まかに括れば、これまでの法科大学院制度も含め「改革」路線維持のうえで、弁護士の活動領域拡大を目指す従来からの日弁連「路線」派の中本氏に対し、はっきりと弁護士激増政策に反対し、法科大学院制度廃止を掲げた高山氏(「日弁連会長選をめぐる『現実論』」)。さらに選挙期間中は、中本氏の稲田朋美・自民党政調会長への献金問題(「おかしなネット日弁連会長選挙」)が加わり、日弁連会長としての適格性も問われました。

     今回の結果からだけみれば、「改革」路線を抜本的に問う高山氏の主張への支持が会内で後退してしまった、ととることもできます。選挙期間中、高山氏の主張に対しては、日弁連会長選で「憲法」や「戦争」というテーマを持ち出すことに対し、「イデオロギー的だ」とか「『改革』に対する主張には賛同するがそこに違和感がある」といった反応を会内で耳にしました。そのこと自体の妥当性はともかく、この点で会内の「改革」反対派支持層を割ってしまった、という見方はあります。

     今回、投票率が50%を上回ったのは28会(前回2014年は30会)で、20%台に落ち込んでいるのは、埼玉、愛知、札幌。いずれも反「改革」派の勢力が強いと言われるところで、各会前回を下回り、かつ、前々回2012年の宇都宮健児氏が僅差で「改革」路線派に敗北した再選挙(三度目)と比べると、各会ともほぼ半減といっていい数値です。反「改革」派が高山氏支持で大同団結できなかったということは、否定できないと思います。

     ただ、それだけでこの状況を語りきれるとはいえません。日弁連会長選挙の投票率は69.6%もあった2002年からほぼ一貫して下降。4氏出馬、史上初の再投票、再選挙にもつれ込んだ前記2012年選挙以降、がくっと落ち込み、半数を割りました。前回投票率の落ち込みの背景として、日弁連に対する失望と、「改革」に対する失望が読みとれることを書きましたが(「日弁連会長選、史上最低投票率の現実」)、今、弁護士の経済的な異変をもたらしている「改革」路線は、日弁連ももはやどうすることもできない、誰が日弁連会長になろうとも、この状況は固定化するという、会員の無力感もまた、固定化しつつあるということが推察できるように思います。

     今年、行われた東京弁護士会副会長選挙には、昨年、弁護士会の任意加入制導入や会費半減を掲げて出馬し落選した64期の赤瀬康明氏(「『任意加入制』提案、東弁副会長候補出馬という『始まり』」)が、予想通り再出馬。結果は今年も落選ですが、昨年を51票上乗せする356票を獲得しました。強い派閥選挙健在のなかでは、いまだ「勝ち負け」には至っていないという見方もありますが、一方で、日弁連・弁護士会に対する、「改革」路線への会員の無力感とともに、会員の内向きの欲求は確実に高まりつつあることもうかがわせます。

     「改革」路線に反対する層のなかにも、むしろ「改革」が生み出す結果となったといっていいこうした欲求そのものには理解を示す声も聞かれます。いわば流れを変えられないのならば、強制加入団体として最低限会員の方を向け、というものです。

     投票率が上がらない会長選挙と、会内に膨らみつつある会員の欲求。この現実こそが、日弁連という組織の未来を暗示しているように思えてきます。


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    No title

    日弁連は変えるのではなく消えてなくなるものです。

    No title

    もう行き着くところまで行くしかない。弁護士自治もだんだんと怪しくなるだろう。いずれは、執行部路線の大破綻が訪れる。マイナス金利を打ち出した途端、株価の大幅下落で命脈が尽きそうなアホノミクストと同じく、改革幻想に踊り狂った阿呆連中のお祭り騒ぎもそろそろ終演が近づいている。生きてるうちだ、せいぜい舞い踊ればよろしい。そのうち、推進した連中にもあの世からのお迎えが来る。
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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