日弁連会長選をめぐる「現実論」

     あけましておめでとうございます。
     
     このブログが6年目になることを機に、タイトルの一部を変更することに致しました。いつまでも古巣である「法律新聞」の名前を引きずるのもどうかな、という気持ちもさることながら、現在の同紙が、悲しいかな私が在籍し、それなりの存在価値を認めて取り組んできた当時とは、編集方針も質も変わってしまったようだからです(そういう業界内からのご意見も頂戴致しました)。このブログを通して、業界外の方々が、一般に聴きなれないこの古い新聞に関心を持って頂けるのは、ある意味、有り難いことである半面、残念ながらいまやお勧めできないなあ、ということを感じてきました。

     そういったわけで、今後は、このタイトルでいかせて頂きます。引き続きよろしくお願い致します。

     さて、新年早々、弁護士界内の話題になっているのは、やはり日弁連会長選挙への2氏の出馬です。既に報じられている通り、立候補を届け出ているのは、大阪弁護士会所属の中本和洋氏と、東京弁護士会所属の高山俊吉氏(届け出順)。立候補の締め切りは12日までですが、今のところ、他に出馬の動きはなく、一騎討ちの公算が強くなっています。今年から、ウェブサイトを使った選挙運動が可能になったため、サイト上で両氏の主張をみることができます(中本氏のサイト高山氏のサイト)

     不思議なくらい関係する弁護士の目の色が変わるこのシーズンは、それこそ前記新聞社時代にも、記事の扱いをめぐって、すぐさまクレームがくるような、ピリピリしたムードがあって、駆け出しのころはしきりと神経を使うように教え込まれました(これもまた、今の同紙がどういう報道姿勢なのかは分かりませんが)。もっとも、何が公平な扱いなのか、というところは、いつも悩むところで、第三者的な論評自体は、有利不利にかかわらず有効なものだと思うのですが、そこは業界紙だけに逆に風当たりも強かった印象があります。言及しない公平というのも、やはりおかしな感じがします。

     ただ、業界紙を離れて、特に感じることは、やはり有権者である弁護士会員と、外の人間の目線はやはり違うということです。そもそもいうまでもないことかもしれませんが、日弁連という組織には二つの顔があります。対外的に意見表明や活動をする専門職能集団の顔と、いわゆる業者団体としての顔です。

     どんな業者団体でも、公的な意味での外向きの顔と、会員を束ねている内向きの顔があるともいえるわけですが、日弁連・弁護士会という組織の特殊性は、その前者に重い意味があるという点です。いうまでもなく、司法の一翼を担う、在野の法律専門家がまとまることによる、権力対抗性と社会的な影響力です。

     弁護士自治というテーマは、この二つの顔にまたがっているものです。ただ、「改革」が弁護士に突き付けた現状は、弁護士会員たちの意識に変化をもたらしました。弁護士としての生存がかかった経済的激変は、強制加入制度下の業者団体としての適格性、有り体にいえば、生存ために組織がより何を会員にもたらすのかへの関心を高めることになっている、と同時に、前者の顔に対する関心が離れつつあるということです。

     もともと弁護士会活動には会員の意識に濃淡があるのは事実ですが、会員間で弁護士自治という存在に対して、後者の役割での注文・欲求が高まりはじめている。それは、言い方を変えれば、前者の役割のなかで、弁護士自治の意義をとらえる見方がどんどん後方に押しやられているということを意味します(「『弁護士自治』の根拠」)。

     最近、前者の役割に関して、「日弁連・弁護士会には決定権がない」ということが、会内からしきりに聞かれるようになりました。しかし、それを悲観的な意味でいってしまえば、ほとんど弁護士会の前者の役割は、すべてに当てはまる。「決定権がないのだからやるだけ無駄」というならば、それはほとんど過去の活動実績も含めて、日弁連・弁護士会活動の全否定につながるといってもいいものです。そして、それをいってしまえば、その先には、当然に弁護士自治の存在意義も問われることになります。対外的な役割に対して、構成員たちがやるだけ無駄の活動としかみていない団体に、通常の業者団体以上の強固な自治を認めるいわれもなくなってきてしまうからです。

     問題は、この展開が、果たしてこの社会にとって有り難いことなのか、です。

     今回、日弁連会長に出馬した前記2氏のサイトをご覧頂ければ分かる通り、その主張も立場も全く異なるものです。中本氏は、法科大学院制度を堅持し、1500人までの司法試験合格者削減という、弁護士増員基調のなかで、「利用しやすい司法」「業務拡大」といった、弁護士会「路線」派おなじみの視点にたった政策を並べています。それに対して、高山氏は激増政策の間違いという視点に立ち、法科大学院廃止を含めた、「改革」の根本的な問題性を問う視点で主張を展開しています。弁護士・会をめぐる危機的状況の現状認識は一応共有しながらも、いうなれば、「改革」を規定路線として対策を考えるのか、それとも今、生じでいる事態は、「改革」そのものを根本的に問い直さなければ改善しないとみるか、の違いといえます。

     弁護士自治についても、ともに堅持するとしながらも、中本氏は、会員の不祥事増と会費の負担感という財政的基盤の問題に言及し対策を講じる必要性を掲げているのに対し、高山氏は前記した対外的な自治、そのためにあらゆる層の代理人を務める弁護士を擁しながらも、公害や憲法というテーマでは、弁護士が層としてまとまり社会的な提言をし得る存在である重要性を強調。会費については、現実に増員政策での会費収入で増収している日弁連が、「間違った増収」であることを認め、司法「改悪」を確認する意味で、大幅に削減すべきとするなど立場の違いを鮮明にしています。

     「改革」がもたらしている弁護士・会の危機的状況に対して、その路線のうえに対策を講じることを支持するのか、それとももはや「改革」そのものに対して、大きな転換を迫らなければ、結局はじりじりと弁護士・会は追いつめられ、やがて自治も崩壊することになる、という認識に立つのか――。

     会内の一部からは、もはや「改革」にも会長選にも無力感を持つ会員意識の広がりから投票行動に及ばないという、前回に続く低投票率を予想する声も聞かれます。しかし、有権者ではない私たちは、前記どちらの認識が本当の「現実論」といえるのか、そしてどちらが結果的に社会にとって有り難いことなのかという視点で、弁護士会員の選択を見守る必要があります。


    夫婦同姓規定「合憲」の最高裁大法廷判決についてご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「ニュースご意見板」http://shihouwatch.com/archives/6970

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    No title

    >有権者ではない私たちは、前記どちらの認識が本当の「現実論」といえるのか、そしてどちらが結果的に社会にとって有り難いことなのか

    どちらもだめぽ
    「打ち破れない超閉塞感!」
    http://www.iwata-lawoffice.com/wp/?p=1002

    No title

    >民主党、辻恵、福島瑞穂にも献金したらしい。
    >しかし、稲田朋美はいくら弁護士仲間だからといって、まずいんじゃないか

    どうみても福島瑞穂に献金してることのほうがまずいだろ
    「日本兵達は慰安婦を強制連行した!」と、
    デマでとんでもない人権侵害をやった人間なのに。

    No title

    >言い掛かり(中本氏のコメントあり)
     民主党、辻恵、福島瑞穂にも献金したらしい。
     しかし、稲田朋美はいくら弁護士仲間だからといって、まずいんじゃないか。

    No title

    >大阪の中本は稲田朋美に政治献金(といっても数万円の世界らしいが)をしているとのこと、いよいよ日弁連もネトウヨみたいな野郎をトップに据えるまでになったか。

    ↑言い掛かり(中本氏のコメントあり)
    http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/173526

    No title

    大阪の中本は稲田朋美に政治献金(といっても数万円の世界らしいが)をしているとのこと、いよいよ日弁連もネトウヨみたいな野郎をトップに据えるまでになったか。

    No title

    今こそ、インドのマハトマ・ガンジーさん(実は弁護士)の、非暴力不服従運動に学ぶときでしょう。

    弁護士が弁護士会館前でハンガーストライキすれば、問題が世間に知られるようになります。どのみち食えないんだから、まさに、そのまんまです。

    No title

    投票行動で結果が変わらないと嘆くのではなく、
    会務はしない、修習生は引き受けない、イソ弁は雇わない
    こうした法律上の義務でもないことを「しない」と徹底することで
    マンセーに押し付けることが出来ます。
    マンセーすることにこそ経済的不利益を負わせることで、市場から退場するか、マンセーを辞めるかの選択を突きつけることが出来るのではないでしょうか。

    批判は続けましょう

    >主流派の考え方と響きあっているという評価が一体どうやったら妥当するのか全く理解に苦しみます。

    横からですが、話の流れ上、
    「主流派・日弁連執行部への批判に対して、『もうなに言ってもムダなんだよ~』と、
    厭戦や自棄を装って話しをそらし、批判を封殺したがってる人達」
    としか見えなかったからでは

    もしかして違ったらごめん

    No title

    >日弁連など消えてなくなればいい、というのが私の見解です。
    主流派の意見などとは全く共存できる部分がありません。

    全く同感
    日弁連など害悪以外の何者でもない。
    そもそも老害どもが何偉そうにしているんだか。
    偉そうにするなら会費を所得に応じて払ったらどうだい。笑

    No title

    下のコメントで批判の矛先を向けられたコメントをした者ですが、主流派の考え方と響きあっているという評価が一体どうやったら妥当するのか全く理解に苦しみます。
    主流派に馴れ合って政治活動を行おうとしているバカサヨクと主流派は同じ穴の狢です。

    日弁連など消えてなくなればいい、というのが私の見解です。
    主流派の意見などとは全く共存できる部分がありません。

    No title

    昨年11月25日のエントリー「法曹人口増員路線が「実証」した社会」に、私は下記のコメントを投稿しました。


    > 今文句を言っている人はたいてい2000年11月1日には弁護士登録していないか、臨時総会への白紙委任状すら届いていません。

    それなら、その後の会長選挙はどうだったのでしょう。文句を言いながら、主流派の候補に投票したり、棄権したりして、司法審路線を押し進める主流派を支えてきたのではありませんか。

    村越進日弁連会長の2015年度会務執行方針が日弁連のホームページに公表されています。http://www.nichibenren.or.jp/activity/policies/policy_2015.html

    そこには次のような「基本姿勢」が書かれています。

    「社会には、異なる立場、異なる見解のプレイヤーがたくさんいることは当然であり、日弁連は数多くのプレイヤーの1人に過ぎません。日弁連の見解が常に正しいものとして受け入れられるわけではありません。少数意見にとどまることの方がはるかに多いのです。そうした中で日弁連の主張を最大限実現するためには、孤立を回避することが不可欠であり、独りよがりや原理主義と批判されるような言動は排さなければなりません。」

    次のコメントを見て下さい。

    > 法曹一元とか下らない理想に振り回されるから、キチガイに漬け込まれて業界を破滅させられたのです。
    > 法曹一元が憲法の要請?
    > もうなんでもいいですよ。法曹なんて誰もなりたがりません。
    > このまま社会全体が崩落すればいいんじゃないでしょうか。
    > 自分がどうやって生き残るかにしか関心ありません。
    > 今からでも法曹一元を実現するとか下らないことを言っているバカサヨクはまとめて成仏しておけばいいんじゃないでしょうか。

    日弁連主流派の考え方と何と良く響き合っていることでしょう。

    2000年11月1日以降に弁護士になられた方々は、見通しが甘かったのですね。文句を言ってるだけで、積極的に日弁連を変えようとしないのは共犯だと思います。


    以上

    主流派の司法審路線、弁護士激増路線、法科大学院路線推進の共犯をいつまで続けるのかということです。

    >いっそのこと突き抜けていたほうがいいように思ったけどにゃ。

    なにがどう「いい」のかわかりません


    >(完全に見切ることもできず、今の状態は生殺しだにゃ)

    主語も不明で文も不明

    ポエムの練習?

    No title

    >? 日弁連執行部はずーっと、司法改悪マンセーの権力翼賛を継続していますよ。

    ほんとにマンセーなら某ク○リンみたいに突き抜けたりしてるはずなんよ。
    中途半端に会員にもしっぽを振り、政府にもしっぽを振るからこんなことになるんじゃないのかにゃー。
    いっそのこと突き抜けていたほうがいいように思ったけどにゃ。
    (完全に見切ることもできず、今の状態は生殺しだにゃ)

    >寧ろ政治活動から孤立したから今の状況があるんではないのかにゃ?
    >どうやったって弁護士は反権力側だしねえ

    ? 日弁連執行部はずーっと、司法改悪マンセーの権力翼賛を継続していますよ。


    >高山候補は、反戦とかそういうイデオロギーがなきゃ支持するんですけどね。
    >だって日弁連って政治活動の場じゃないですから、そんなこと会員は誰も求めてないし。
    >なんでイデオロギーにこだわって勝ちにいかないのか理解できないです。

    まったく同感です。
    なんでわざわざ極左ぶりをアピールしたがるのか
    あれがなければもっと対抗馬になれるでしょうに

    No title

    >だって日弁連って政治活動の場じゃないですから、そんなこと会員は誰も求めてないし。

    仮に政治活動の場じゃなかったとしても、人脈があるならそれを使うに越したことはないじゃろ?
    寧ろ政治活動から孤立したから今の状況があるんではないのかにゃ?
    どうやったって弁護士は反権力側だしねえ。
    そういや政治連盟とかいう団体もあったが何やってんだ?

    No title

    高山候補は、反戦とかそういうイデオロギーがなきゃ支持するんですけどね。
    だって日弁連って政治活動の場じゃないですから、そんなこと会員は誰も求めてないし。
    なんでイデオロギーにこだわって勝ちにいかないのか理解できないです。

    No title

    >何度でも立候補して、少しずつ支持を伸ばせばいい。

    おいおい立候補にどれだけ金がかかると思ってるんだ……
    (ブログ主さんも自由に書ける立場なのだから、どれだけ選挙活動が金に捕われる活動なのか取材して欲しいね。会員に電話をかけまくるとかなんでもありだし(普通の選挙に比べれば)、懲戒された場合の立候補不可の規制だとかね。外からみて「その活動はおかしいんじゃないの」と思う点含めて)

    どっちが当選するかはわからんけど、これ以上会員に負担はかけない会長がいいさ(両方とも会費についてはなんか言ってるけど)。懲戒制度についても弁護士に規制をかけるんじゃなくてモンスタークライアントやら○○テ○○に対しての規制を厳しくしてくれるような。

    No title

    司法試験合格者を減らさない限り、一切修習にもその後の就職活動にも協力しない、
    この争点だけで闘う候補者が出て欲しいものです。

    宇都宮のときの過ちを繰り返してはいけません。
    票欲しさに「法曹人口の問題」も仕方なくマニフェストに入れるみたいな候補者ではいけないのです。

    No title

    高山候補の当選のカギは、政治的寛容性だ、と思う。

    「国民のための司法」
    という目標と、
    「法科大学院や法テラスの廃止、会費のドラスティックな減額」
    などの方法論が同じなのに、たかだか(と言わせていただく)政治的見解や支持政党の違いで仲間割れなんかしたら、もったいない。

    何度でも立候補して、少しずつ支持を伸ばせばいい。失敗を恐れたら、マチ弁なんかできない。

    No title

    >何が公平な扱いなのか、というところは、いつも悩むところで

    >言及しない公平というのも、やはりおかしな感じがします。

    去年の5月頃だっけ?どっかの書店が左翼系のコーナー作ったら「偏っている」ってクレームがついたの。
    何かの記事では「それは君が考える公平だ」「両方に言及しないのはただの逃げだ」って主張がされてた記憶がある。
    だから「俺が言いたいから言うんだよ!文句あるなら俺に直接言って来い!」ってスタイルでいいんじゃないですか。

    No title

    なぜ、今になってこの論点になっているのか--ってとこにも触れて欲しかったなぁ。
    部外者には、某氏が今まで何故沈黙してきたのか分からないだろうしね(今の若手もわからんだろうと思う)。
    懲戒陰謀論も含めて「日弁連会長選挙は○○だ」と思う。

    放たれた虎がいざ獲物を狩ろうとしても、そこが荒地かはたまた蛇だった相手が竜になってりゃぁ話にならんよ。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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