弁護士のセカンド・オピニオン

     「セカンド・オピニオン」という言葉も、かなり一般に知られるようになってきました。別の専門家の知見を聞くこと、とりわけ医療分野で主治医以外の医師の意見を聞くことです。

     いろいろな意見はありますが、医療分野でこの考え方が受け入れられていった背景には、やはり、市民側からみて、お医者さんによって、言うことが違うという現実があったということだと思います。これを読まれている方にも、そういう体験をされた方はいらっしゃるでしょう。

     現実的には、患者・医者双方に感情的な面では抵抗感もなかったわけではありません。患者側は別の先生に聞くのに気がひけたり、主治医側も、そりゃ自分の診断を疑われれば面白くはない。ただ、それが医師側もよりよい医療のために、複数の知見を聞く意義を認め、また結果として患者が選択的できる形に理解を示してきたということだろうと思います。

     結論からいうと、弁護士の世界でも、このセカンド・オピニオンがやはり必要ではないか、という気持ちを強めてきました。

     とにかく、市民の声の中には、いま依頼している弁護士の方針に首をかしげる声が多数あります。また、試しに別の弁護士のところに行ってみると、「全く違うことを言われた」という話はよく聞くことです。

     ただ、まず市民側が理解しとかなければいけないことがあります。前も書きましたが、医者と弁護士は全く違います。正確にいえば、医療でのお医者さんの対応と事件に対する弁護士の対応は同一には語れないということです。

     他の弁護士に依頼中の人に対する対応は、難しい面があることを弁護士から聞くことがあります。これは、別に同じ釜の飯をくった仲間への遠慮ではありません。端的にいえば、相談された二番目の弁護士からすると、果たして一番目の対応が間違っている、とまで断定していいのか迷うことになる場合があるからです。

     二番目の弁護士の判断材料は、相談者が提出してきた資料と証言です。相談者が一番目に語ったこと(伝わっていること)と全く同一なことを語ってくれているかどうかで、結論は違ってしまいます。依頼者側が自分に不利なことは言っていない場合もあるでしょうが、そうではなくても肝心な情報が落ちている可能性がある。少なくとも二番目の弁護士は、時間的にもまだ、一番目ほど依頼者の話を聞いておらず、情報量が違うわけですから。元になる事実関係が違えば、弁護士の出す結論は変わります。

     また、「行列のできる法律相談」というテレビ番組をご覧になった方はお気づきでしょうが、驚くほど弁護士によって意見はさまざまですよね。法律の分野では、対処の仕方、考え方がもともと一つではない面もあります。もっとも、前記番組も番組として成立させるため、いろいろな背景や要素を盛り込まない限られた設定での判断ですから、こうなる、というか、意見が分かれるから番組として面白いという作りですが。

     裁判所に提出された事件記録があると、二番目の弁護士は判断しやすい、ということもあるようですが、それでも以上述べてきたように、患者さんの病状に直接接し、あるいは前のお医者さんのカルテを見て対応できる医療分野のセカンド・オピニオンとは全く事情は違います。

     ただ、それでも私は弁護士にもセカンド・オピニオンが必要だと思います。私が聞いた市民の言い分には裁判や弁護士への過剰期待もありますし、前記した二番目の立場と同様、個別具体的な事情に踏み込んで聞けているわけではありませんが、それでもやはり法的対応以前に明らかに弁護士がやるべきことを尽くしていないのではないか、依頼者に向き合っていないのではないか、と思えるケースが沢山あるからです。仮に依頼者に誤解があったとしても、このまま強い不信感をもって、その弁護士と続けていかれるのか不安なケースもあります。もっとも医療のセカンド・オピニオンは、必ずしも主治医を変えるものではありませんが。

     もちろん弁護士としても、医師と同じで、よりよい知見には謙虚に向き合わなければなりません。個人に対してセカンド・オピニオンを認めた場合、企業はどうなんだ、という話にもよくなります。弁護士の中に、ぞっとしないと思う方もいるのは、安定収入である企業との「顧問」契約も合理的ではなくなるという事情もあるからです。ただ、やはり企業についても認めない方向ではないでしょう。顧問弁護士のメリットは、なんといってもその企業の状況に精通しているという、やはり情報量の問題ですから。

     市民としては、やはり勇気をもって、まずは一番の弁護士に疑問をぶつけ、どうしても納得できなければ次の法律事務所の門をたたくべきです。意に沿わない弁護士を次々に切る傾向になることを懸念する意見もありますが、弁護士側も機会保障の観点からも理解していくべきです。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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