「予備試験」出願者減という段階

     法科大学院本道主義の立場から、目の敵にされてきた予備試験人気にも陰りが出始めたことが話題になっています。同試験の今年の出願者数が、昨年より79人少ない1万2543人(速報値)となり、制度開始以降初めて前年を下回り、減少――。今回の減少数から、これを新たな傾向として、どこまで読みとっていいのかという問題はあるにせよ、ついに予備試験までが志望者の「法曹界離れ」を反映した現実を示し出したという見方が広がっています。

     大マスコミを含め、本道主義を貫こうとする側が、「抜け道」扱いし、「穴をふさげ」とばかり、制限論の必要性を唱えてきた予備試験が、その制限以前に志望者から選択されなくなりつつある現実。予備試験は逆に現状、志望者を法曹界に引きつけている最後のルートであり、これを狭めれば、今度こそ決定的に法曹界は志望者から見離される、とする見方が、前記制限を懸念する側にありました。現実はその制限を待つことなく、懸念通りの方向に進んでいることになります。

     法科大学院本道主義の立場からすれば、「穴」をふさいで本道に強制誘導するといった手段の無意味性が露呈し、いよいよ志望者に選択されるための本道の「価値」で勝負しなければならなくなった、ということはできます(「『価値』の実証性から見る法曹志望者の『選択』」)。ただ、それによって志望者を取り戻すことが現状容易でないことは、誰の目にも明らかであるといわなければなりません。「価値」は、司法試験合格であり、また、実務法律家として圧倒的にメリットがある知識・能力の習得です。そして、後者については、その後の法科大学院出身法曹への社会的な評価が、そのメリットを裏打ちするものになるはずです。

     しかし、現状はもはやそういう段階ではないとみることもできます。なぜならば、予備試験出願者減は、志望者が法曹界そのもの「価値」を見切り出したことを意味するからです。より経済的時間的負担を回避するための予備試験、逆に言えば、法科大学院の「価値」を見切った末の選択であったルートが、本道にもどることなく選択されなくなった。それは就職難を含めた、弁護士の経済的に厳しい現実の前に、その世界そのものに志望者が魅力を感じなくなってきている結果ととれます。

     それは、ある意味、いかに「改革」が志望者の目線を欠いた「あるべき」論を押し通してきたのか、選択される側であるということを考えてこなかったか、そのツケが回ってきたようにもとれます。改めてみれば、弁護士の無理な増員政策も、受験機会を奪う本道主義の強制も、より負担を課す「給費制」廃止も、どれをとっても法曹界が志望者から選択され、有為な人材が集まる、ということからは、すべて逆効果のことが選択されてきたというべきです。「改革」は制度を傷つけ過ぎたようにみえます。

     法曹の人材確保ではなく、法科大学院制度死守が目的化したような方々からは、これまで以上に司法試験のレベルを下げる(下げてもかまわない)という方向での要求を強めてくるという見方も出ています。しかし、彼らが志望者の「価値」の選択をめぐる正しい認識と、「それでも人は来る」といわんばかりの姿勢をとってきた「改革」路線(「新法曹養成制度の『強気』」)への反省に立ててはじめて、法曹界はもう一度適材確保への道を歩み出すことができるように思えてなりません。


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    No title

    未成年のお子さんがいらっしゃる方などは大学受験情報に接する機会もあるので、河野さんの分析はすとんと腑に落ちることでしょう。

    http://papimami.jp/30959
    (以下、一部引用)
    文系大学では、この数年で志願者が激減しています。文系より理系の方が就職の可能性が高いこともあり、東京大学でさえ文系全般で志願者が減少しているのです。学部別に状況を見てみましょう。
    (1)法学部
    司法制度改革で弁護士余りが起きていることも影響し、最高峰である東京大学においても、昨年度は文科1類(法学部)で志願者の倍率が下がり、足切りなしという事態に。全体を見ても14年度は志願者数が減少しました。
    不況下では、公務員就職、弁護士試験につながる法学部に人気が集まるものの、弁護士においては司法試験合格率の低下や法科大学院の募集停止、弁護士の就職事情の悪化など、公務員においては公務員採用数の減少、公務員のイメージダウンなど、敬遠される傾向にあるようです。

    No title

    >今回の減少数から、これを新たな傾向として、どこまで読みとっていいのかという問題はあるにせよ、ついに予備試験までが志望者の「法曹界離れ」を反映した現実を示し出したという見方が広がっています。

    法律をやっている人間は、書かれた法律の中の現実しか知らない。
    これは単に、「司法試験でも受けてみようか・・・」と思い立つ、この国の20代、30代の人口が減少に転じているのが、一番大きな原因。そして、この傾向は法律分野だけに限らないはず。そんなこと、以下の統計資料を見るまでもなく、当たり前のことのはずです。
    http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/kouhou/useful/u01_z19.htm
    法曹資格者かどうかを問わず、したり顔で論じるならば、自分の専門以外のことにもいくつかアンテナを張って情報収集してから論じないと、本当に頭のいい連中から馬鹿にされるだけ、議論さえしてもらえないですよ【別に、河野さんに言っているのではありません】。
    だから、そもそもこの人口減少社会で、弁護士の数を毎年3,000人にするという計画を持ち出していまだに一向に改めようとしないことが、どれだけ歪なことであり、またそれを許している末端の関係者もどれだけ無能で、とても法律や政策立案の専門家と呼ぶに値しないかを、その日々の存在自体が立証しているわけです。

    No title

    志望者が減ったところで合格者が同じだと意味ないですね。
    志望者が合格者数を下回ることで、上限が合格者の数ではなく志望者の数になうような状況になって、非常識な弁護士増員を回避出来ます。
    けど、毎年辞める人間のほうが入ってくる人間を上回らないと人口ってのは減らないですよ。

    No title

    …最早、法曹を目指すというよりは「公務員狙い(判事・検事)」に…。もし、「判・検」と「弁護士」ルートを完全に別々にしたら一体どんなことになるのか…。

    >予備試験出願者減は、志望者が法曹界そのもの「価値」を見切り出したことを意味するからです。

    これについては、人口減の時代なのだから価値を見切ったというよりは増えないあるいは減るのが当然だと(前の方のコメントと同じ)。

    とりあえず今の弁護士の惨状を(自然に)元に戻すためには志望者が減るのはいいこと。政府や国民が積極的に弁護士の救済をしてくれない以上、自然に弁護士の数が減るのをひたすら待つしかない。

    No title

    >法科大学院本道主義の立場から、目の敵にされてきた予備試験人気にも陰り
    >が出始めたことが話題になっています。同試験の今年の出願者数が、昨年よ
    >り79人少ない1万2543人(速報値)となり、制度開始以降初めて前年を下回
    >り、減少――。今回の減少数から、これを新たな傾向として、どこまで読みとっ
    >ていいのかという問題はあるにせよ、ついに予備試験までが志望者の「法曹
    >界離れ」を反映した現実を示し出したという見方が広がっています。

    →たった79人減であれば、頭打ちという見方もできると思うのですが、増員抑制論者の方々は「法曹界離れ」と断ずる傾向がありますね。私は、79人減少でもロー志願者の減少幅に比べれば断然小さいので、予備試験は依然として根強い人気があるんだなと思いました。


    >制限論の必要性を唱えてきた予備試験が、その制限以前に志望者から選択さ
    >れなくなりつつある現実。

    →この点は私は違う見方をしています。志望者は予備試験を選択していますが、志望者そのものが減っているので、予備試験受験者も減っていると考えるのが自然かと思います。


    >予備試験は逆に現状、志望者を法曹界に引きつけている最後のルートであり、
    >これを狭めれば、今度こそ決定的に法曹界は志望者から見離される、とする見
    >方が、前記制限を懸念する側にありました。現実はその制限を待つことなく、懸
    >念通りの方向に進んでいることになります。

    →予備試験受験資格を制限した場合、志望者減少スピードが速まる可能性が高いので、制限すると志望者減という「見方」は今後とも続くと思いますので、今回79人減少したか否かに関わらないかと思います。
    ただ、法科大学院としては、法曹志望者が減ろうとも、法科大学院志望者を増やせればいいので、予備試験受験資格制限は今後も求めてくるものと思います。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
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