「離婚」分野での弁護士の評判が教えるもの

      「過払い」請求というニーズの、件数としての頭打ちが言われ出して以降、度々弁護士の新たな「開拓地」として挙げられてきた「離婚」ですが、その現場のある状況を伝える記事が、ネットに流れています。タイトルは、「え…最悪!離婚を余計にややこしくする『こじらせ弁護士』急増中」

     「20年前には離婚事案など引き受けてくれる弁護士は皆無でしたが、今やネットで検索すればその数は数千件以上!」
     「ところが、もともと企業案件や借金事案しかやってきていない中、離婚事案が安定した収益になると踏んで参入している弁護士事務所が大半で、経験不足・知識不足の弁護士が多いのが現状です」
     「そうなると、当然のことながら相談者の納得のいく形にはならない事案が多くトラブルが目立ちます」

     具体例として、この記事は、「子どもの取り合いをしている夫婦の事案で、子どもを連れ去られてしまった妻が弁護士に依頼したところ、弁護士の対応があまりにも遅過ぎて、子どもに会うことすら出来なくなってしまった」というトラブル、とか「離婚相談に行った弁護士事務所で、心無いことを言われたり罵倒されたりといった『ローハラ(ローヤーハラスメント)』で二重被害に合うケース」が挙げられています。

     この例そのものは、「ごじらせ」ているというニュアンスとは若干違うような気もしますが、要は「開拓地」へ流れてきた弁護士が、もともと離婚を専門にしようとしていたわけではなく、あくまで収益のためにきたものが多いため、経験・知識不足のしわ寄せが利用者に回ってきている、という話です。こうした話は確かに聞こえてきます。後段の「ローハラ」に関しては、必ずしもこうした事情のなかですべて説明がつく話とも思えませんが、説得を含めた自らの能力・経験不足が、こうした形となってあらわれることも否定できません。

     以前も書きましたが、当事者への双方関与という形で、需要創出を期待できるこの分野を、弁護士の「開拓先」として膨大な皮算用をする見方が弁護士会のなかにはありますが、必ずしも弁護士にとって食指が動く分野できない、という事情もありました。離婚訴訟自体は決着の相場も含めて、結論が見えている分野ながら、当事者の説得への手間がかかったり、当事者から逆恨みのリスクがあったり、調停にも時間がとられる。それだけに、この分野に臨む弁護士は、逆に費用を上乗せをすることも含めてビジネスで割り切るタイプか、相談にも法律家という枠を越えて対応している「ライフワーク」あるいは「使命感」型タイプに分かれているともいわれています(「『離婚』に対する弁護士の本音」 「『訴訟社会』と同じ顔の未来」)。

     この記事が伝える現状は、こうした事情とも重ね合わせることができるように思えます。一口にいえば、収益化に期待し「開拓地」に来た、逆にいえば、そのことがなければ、この分野に来ていない大量の弁護士たちが、必ずしも利用者の期待にこたえておらず、逆に警戒すべき対象になり出しているということです。

     「離婚事案は離婚するにせよ修復するにせよ一生の問題なので、安易に進めたり、簡単に弁護士依頼を決めてしまうとお金も時間も多大に浪費することになり、取り返しのつかない後悔をすることになります。なかなか難しいことだとは思いますが、離婚事案に詳しい人から紹介してもらうなど、弁護士選びはくれぐれも慎重にお願いしたい」

     この記事の結論は、30,000件以上の離婚カウンセリングとコンサルティングの実績を持つ「離婚110番」の代表カウンセラー、澁川良幸氏のこんな言葉を引用し、安易な弁護士利用にクギをさす形で終わっています。結論からすれば、前記ビジネス型ではない弁護士に、なんとかたどりつくことを勧めているようにもとれますが、それを可能にするものが「紹介」である現実も含め、結局、依頼者市民には、困難で心細い現実が横たわっていることになります。

     少なくとも二つのことを、この現状は教えているように見えます。「市民のため」「社会のため」とされた弁護士増員の果てに、「弁護士のため」に設定された「開拓地」では、皮肉にも弁護士会サイドからいわれるような、弁護士を「お気楽に活用」できるものとして、市民は受けとめられなくなっている、あるいは受けとめるべきではないものになっていること。そして、依頼者市民にとって、一番有り難く、あるいは一番求めたいことは、ただ単に手が届くところに沢山の弁護士がいることではないこと、です。


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    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





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    No title

    >分かってて言ってるロー関係者に向けて言っているんじゃなくて、このレスを読み、上の悪意あるコメントに誤導される人が出てこないように言っておくけど。

    体制からはじかれた人(地方議員多数派の政策・公共事業で経済的な損失を負う人)、社会福祉の網からこぼれた人なんかを支えるシステムの一つとして法テラスなんかも期待されたけど、結局弁護士増員もそれになり切れなかったってことで。
    医師も似たようなこと言われててじゃあ、ドクターヘリ飛ばしてみようかとかいろんなチャレンジして、その代りいろいろ予算分捕られてるけど(笑)

    No title

    >某、医師が次々と辞めてしまう(その地全体でいびるとの噂あり)所に行くとか、職安や労基署にでも常駐して、パワハラで辞めましたっていう話があればそこにすっとんでいくとかすればぁ?

    マジレスすれば、これは事件を焚き付けることになりかねないので弁護士倫理から見てアウトになる可能性が高い。

    No title

    某、医師が次々と辞めてしまう(その地全体でいびるとの噂あり)所に行くとか、職安や労基署にでも常駐して、パワハラで辞めましたっていう話があればそこにすっとんでいくとかすればぁ?

    保険制度作ったほうがいいかもね。過疎地で、御近所トラブル聞いてても最低限生活できる程度の収入が得られるように。
    自営業者って、自分の生活は自分の責任なんだよ。
    生活できないところに進出しないんだよ。

    分かってて言ってるロー関係者に向けて言っているんじゃなくて、このレスを読み、上の悪意あるコメントに誤導される人が出てこないように言っておくけど。

    No title

    >そんなことはないですよ。
    >本当に必要とされている需要には対応しますよ。弁護士は。

    そう?ならさ、よくニュースに出てくる
    某、医師が次々と辞めてしまう(その地全体でいびるとの噂あり)所に行くとか、職安や労基署にでも常駐して、パワハラで辞めましたっていう話があればそこにすっとんでいくとかすればぁ?
    生活保護だって支援団体と連携して、支援の必要な人にきちんと支援を受けさせるようにすればぁ?
    結局、「声を上げた場合にしか助けない」んじゃ意味ないんですが?

    No title

    >本当に必要とされている需要には対応しますよ。弁護士は。
    >他人をしてその手続をなさしめるだけの対価を払おうとしないだけでしょ?

    とかく資格取得者の能力による余地も大きいが
    養成の過程で他の業務独占資格よりも桁違いに公金や公的資源をブッコまれてるはず
    医療従事者はそれを体感させられる機会がカリキュラムに自然と組み込まれてる

    世間はそこを訴えたいけど、司法試験とロースクールの特質、さらにそこに紐づけされた法務省のキャリアシステムにかき消されちゃう

    「法テラス」なんかはそれを狙ったんでしょうが、
    >その他人にも生活があることを殊更に無視しようとしているだけ
    って断罪されちゃう

    >結局は「開拓地」ったって無難なものばかり。(2015-02-20(08:56))

    >結局は「開拓地」ったって無難なものばかり。
    だから不動産だけでなく過払い金も司法書士に
    (某ターミナル駅の地名のついた事務所とか)
    未払い残業代・年金は社労士に
    交通事故は行政書士に
    (代理権はないのに報酬は弁護士並)

    持っていかれちゃう
    行政書士なんか非弁行為でずっとトラぶってるのに
    これだけ若手が増えても噛みつく人が増えないんだからどうするのやら

    未払い残業と交通事故って
    労災を介して微妙につながってるんですけどね。

    No title

    ブラック企業・パワハラ・セクハラ対策
    本当に保護を必要とする弱者への対策
    こういう本当に必要とされている需要はスルーされている。

    そんなことはないですよ。
    本当に必要とされている需要には対応しますよ。弁護士は。
    他人をしてその手続をなさしめるだけの対価を払おうとしないだけでしょ?
    その他人にも生活があることを殊更に無視しようとしているだけでしょ?

    No title

    今週、依頼した弁護士事務所から戻ってきて、ため息をついています。
    進んでいたと思っていた手続をすっぽかし越年、こっそりやってきた調停呼出状を届けたら
    「まだ『他人』ですから・・・、もちろん委任状は受け取っているので大丈夫です」
    権限不足、とか慎重に言葉を選ぶはずなんだが・・・。

    医学部は教育側も組合もある種「サービス業としての最低ラインからは辛うじて堕ちない」「知らないことはやっぱりある」という意思疎通で踏みとどまった感はあるが、過払い金バブルだけで生きてきた若手はどうしようもないかと。

    敬称略の事件ファイル、漢字の間違っている名前メモ。
    医者はこういう所は絶対間違わないんだよなぁ、いい意味でも悪い意味でも。

    定石通りに書類が出せたらだれも困りませんよ、弁護士さん。

    No title

    結局は「開拓地」ったって無難なものばかり。
    ブラック企業・パワハラ・セクハラ対策
    本当に保護を必要とする弱者への対策
    こういう本当に必要とされている需要はスルーされている。
    残業代請求の時代とか言ってた時もあったけど、結局は証拠がないだろうし企業相手に訴訟なんて労働者側は難しいだろ。
    結局は、弁護士は潜在的需要なんて探す気なんてさらさらないんだよ。
    一応パンフレットとかポスターとか広告はしても、それは単なるポーズに過ぎない。

    No title

    経験不足、知識不足も酷いが、離婚専門にしている所が、
    コトを大きくして生保を申請させ、さらに法テラスを利用させ、
    巷の相場以上の報酬を税金から受け取っているケースを
    紹介しているブログってなかったっけ?

    No title

    弁護士の数増やして何がよかったのか・・・

    代理人つけないなら不利益こうむっても仕方ないのに、代理人つけずに勝手に不利な和解成立させて、それで後から文句いうやつ(^^)
    自己責任なのに、「弁護士が足りないからだ」とかいうわけよ。
    世の中の弁護士不足論って、そういう勝手なバカが提唱してるんだろ。普段は要らないと思ってるくせに。

    No title

    離婚事件は相性がありますからね。淡々と事件を勧めていく人を好む人もいれば、じっくり話を聞いてくれる人を好む場合もあるからです。
    また、本人の希望通りの弁護士が必ずしもベストとは限りません(例えば、夫と子供の面接交渉を阻止するのは不可能な事案で、安易に面接交渉を阻止できますよといってしまう弁護士など)。

    また、離婚は簡単な離婚もありますが、子供を取り合っている事案、一方の住宅ローンに対し他方配偶者が連帯保証もしくは連帯債務を負担している場合の処理、共有財産を使い込んだと主張される場合の処理等複雑な事案もけっこうありますよ。

    ちなみに、現在まだ弁護士調停委員は少ないため、簡単な事案(定型の調停調書で終結されられる事案)はまだしも、そうでない事案は声の大きいほうが買ってしまう傾向がないとはいえないため(調停委員が忠実に相手方の言い分を伝えてしまう結果)、代理人就任の必要性はそこそこあると思いますけど。

    離婚なんて裁判所はそれこそ形式判断しかしないからね。親権なんて真剣に判断する気ないだろワラ
    慰謝料だって、相手にカネがなきゃあきらめろ和解しろだしね。
    夫側の財産隠しについて調査嘱託もやろうとしない。
    そんな裁判所なのに、いくらいい弁護士がついたところで、家事ほどがんばりがいのない事件はないね。

    No title

    …とちょっと弁護士援護に走ってみたものの、某弁護士会で「協議離婚の廃止に取り組みたい」と言っていたとのことなので(法科大学院の条件を受験要件から外すよう求めていた画期的なところでもあるのですが)、さて…どっちを応援すべきなのか…。

    No title

    …ネット記事を拝見しましたが、どちらかというと制度的(裁判所・司法側)の落ち度が大きいような…。
    子どもの連れ去りについては、悔しいですが先に育児実績が長かったり、早く子供を「片方の親がいなくても快適」状態にしてしまえばいいような方法が先にまかり通ってしまう。加えて母親に親権がいきやすいという状況などもありそうな。更に、特に離婚関係の事件においては今やネットで検索すれば、ある程度自分を有利にさせられるような情報がどんどんでてきます(掲示板の影響もあります)。そういう状況の変化や司法が硬直しているのを棚にあげて弁護士ばかり悪いような書き方もな…と思います。

    No title

    司法改革の成果じゃないですか。
    市民の皆様に、司法改革の成果が見える形になって、いかにマンセー弁護士らが非常識なのかお分かりいただけるじゃないですか。

    ちなみに私も、当事者なのか代理人なのか分からない相手方の弁護士にもう半年も前に調停成立見込みなんかないですよと言っているのに引きずられた件で、こちらの依頼者に費用を請求するのが申し訳なくて。

    頭にきたので、もう歩み寄りはせずに裁判で決着させますけどね。
    ちなみに、相手方はロー弁ではなく老弁ですけどね。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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