「弁護士」という名の多様な意識

     弁護士という仕事は、本当にひとくくりにできない仕事です。仕事に幅がある、いろいろな分野に進出している、ということもできるかもしれませんが、取り方によっては、「弁護士」とひとくくりに同じ名称で語られることの方が、大衆への誤解のもとではないか、とすら思える時があります。

     医者が専門でくくられているような形に、弁護士もより専門で分化することで市民により利用されやすくなるとして、それを弁護士会として目指していくべき、という意見もあるようです。それは、それで意味があることかもしれません。得意な分野、専門化した分野を専門医のようにアピールし、あるいは弁護士会がそうした弁護士へのアクセスの橋渡しをすることも考えられます。

     ただ、冒頭に書いたひとくくりにできない、という意味は、多様な専門分野で活動している弁護士がいる、という意味では必ずしもありません。専門化とも無縁ではありませんが、要するに弁護士自身の目的意識、つまり、何で弁護士をやっているのか、ということの意識格差に関してのことです。

     もちろん、どんな仕事でも、その仕事を選んでいる理由、目的についての意識は、個人よってさまざまです。ただ、一つの資格で全員が強制加入の団体に所属している「弁護士」と名乗る人の意識の中身に、大きな隔たりがあることを、実は大衆はよく知らないのではないか、と思うときがあるのです。

     どの世界にもいる成功者とされる者とそうでない者、優秀とされる者とそうでない者、おカネ儲けがうまい者とそうでないもの。こうした分け方を、大衆はもちろん弁護士についてもしているでしょう。ただ、それ以前に、弁護士は自身で、ある種の路線選択をしているのです。

     かなり前になりますが、ある弁護士のブログ(「弁護士夫婦の日常」)で、この弁護士の路線選択を非常に分かりやすく、的確に区分していると感じたものがありました。紹介させて頂きますと、以下の、4つの「人種」(パターン)に分けられるというのです。

     ① 大規模事務所、専門事務所または一定業種の会社等に所属して、一つまたは複数の分野の知識を高めることを追求するタイプ(←私生活の時間が少ないのと引き換えに、地位・名誉・お金を得られる可能性が高い)

     ② 消費者問題、宗教問題、女性差別問題など、世の中の弱者または被害者に該当する人々を救うことを使命と考えて尽力するタイプ(←私生活の時間が少ないと同時に収入も低いことが多いが、社会貢献を感じられる可能性が高い)

     ③ 取り扱う分野ではなく、独立して自分の城を持って弁護士業を行っていくことに喜びとやりがいを見い出すタイプ(←地位・名誉は得られないが、私生活とのバランスはとりやすい可能性が高い。収入はピンきり)

     ④ 弁護士としてのある程度のやりがい、およびある程度の収入が確保できれば、後はあまりこだわらないタイプ

     弁護士のいろいろなスタイルを見てくると、なるほどと思わせる分類法です。これを読んだ弁護士の方々も、一応このどれかに当てはまると思われるのではないでしょうか。

     ①のような人びとは、この30年くらいで、ある意味、よりエリートとしての立場を確立させてきた人びとで、かつてはともかく、今や弁護士の世界を目指す人が、はっきりビジネスローヤーとしての意識で入っていくといっていい世界です。

     かつては②を自認するような弁護士が、弁護士会の活動を主導的に支えてきたような人たちで、「正義」や「人権」から大衆が連想する旧来の弁護士像といっていいと思います。

     実は③、④の弁護士が、これまでにも圧倒的な数で弁護士会の中に存在していたように思えます。弁護士会活動と一定の距離を置いて関与するか、全くしないかの層といえるかもしれません。

     さて、弁護士とくくる場合、大衆は、よりどの弁護士のパターンをイメージしているのでしょうか。実は多くの大衆は、区別がつかないまま、①でも②③④でも「弁護士」としての共通の資格の保証がある仕事とみているような感じがします。

     逆に弁護士からすれば、当然、これは個人の自由に属することだというかもしれません。それは、その通りでしょう。

     ただ、一つだけいえることは、社会にまだまだあるという「ニーズ」も有償・無償がひとくくりにされ、一方で「まだまだやれる」「儲けている」という経済事情がひとくくりにして語られる現実の向こうには、あるいは個人の自由に属してきた弁護士の、これまでのスタイルが許されなくなる未来が待っているかもしれない、ということです。

     そして、さらに問題は、意識としての弁護士の多様性が許されなくなっていく、その先に、どんな意識の弁護士が残り、どんな人がこの世界を目指すことになっているのかです。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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