弁護士会費「納得の仕方」から見えてくるもの
その負担感から、弁護士会員の了解度が低下しつつある高い弁護士会費(「弁護士会費『減額』というテーマ」)。「改革」の無理によってもたらされた経済的困窮化のなか、強制加入に縛られた個々の会員のこの負担感は、当然に弁護士会活動そのものへの厳しい見方を生むとともに、いまや強制加入や自治の屋台骨をぐらつかせかねないところまで来た、といっていいと思います。
もちろん、この背景には、その根本的な原因である「改革」路線に対して、反省を含めたはっきりとした方向転換の姿勢を示さない日弁連に対する会員の不満、もしくは諦めの感情があります。それによって状況が変わる見通しもない「ペースダウン」論と、量産体制が生み出した法科大学院制度支持の方向を変えない日弁連主導層が、一方でこれまで通りの会員負担の上に立つ会務運営を続けようとしていることに、「この状況を変えられないならば、せめて個々の会員への『規制』をするな」という意識が会員のなかに広がっているのです。
それは、逆にいうと、会員の納得の仕方として、もはやそれしかない、というところまで、弁護士と弁護士会が追い込まれていることを意味します。弁護士自治の内部崩壊という最終章もまた、もはや見通せるところまできている、といっていいかもしれません(「『弁護士弱体化』という意図」)。
「高額な弁護士会費の納得の仕方」。ブログ「アメリカの法曹事情」が、こうしたタイトルで、興味深い指摘を掲載しています。文字通りアメリカの弁護士事情を主に紹介するブログですが、今回は、日本の高い弁護士会費についての考え方を提示しています。登録5年から上昇し、「会費」というイメージからは信じられない額に到達する弁護士会費。「公益」活動にも使われるそれが、なぜ、一般人に過ぎない弁護士のサイフから拠出されなければならないのか――。その疑問について、あくまで旧制度下でなった弁護士としての「納得の仕方」を以下のように紹介しています。
「自分なりに考えた理屈は以下のとおりであった。弁護士になるための修習生の期間、年間400万円近い給料プラス手当をもらった。さらには、実務家たちから手取り足取り実務の手ほどきを受けたが、一人年間300万円の授業料を支払っても民間の教育機関が同じ教育をすることは出来ないだろう」
「すると、年間の一人にかかる費用は700万円となり、2年間の修習によって1400万円になる。この部分は国民の税金から支払われているので、この部分を弁護士になって、弁護士会費を支払うことで少しずつ社会に返さなければならないということなのだろう」
これは、あくまでかつての「納得の仕方」の、一つのモデルというべきものかもしれません。ただ、給費制下の弁護士の意識として、国費で、しかも修習期間に他では学べない経験させてもらったということが、少なからずそれを還元しようとする思いにつながっていたことは考えられますし、その仕方が弁護士としての活動であると同時に、あるいは弁護士会活動を通したものであったとしても、不思議ではありません。そして、もし、こうした「納得の仕方」ができるのであれば、それは当然、会費と同時に弁護士会の「公益」活動そのものへの了解度につながっていた、ということを推察することもできます。
「しかし、新制度によって弁護士になった人たちは、どのようにしてこの高い会費を納得しているのだろうか。教育の費用は法科大学院の学費を支払うことで自分たちで負担している。修習期間は貸与制である。修習の期間もわずか10ヶ月である。法科大学院に補助金が支払われているようだが、一箇所に集中していた修習所と異なり、各地に散らばっているために、経済的に見れば非効率で、個々人への恩恵はあまり感じられない」
「新制度で弁護士になった人にとっては、何故これほど高い会費を支払わなければならないのかという疑問に対する回答を何一つ見つけられない。新制度で弁護士になった弁護士が増えれば増えるほど、この不満は堆積し、そのうち爆発するのだろう。ただ、爆発する時期が分からないだけである」
ブログ氏は、返す刀で新制度下誕生した弁護士について、こう書いています。冒頭に書いた高い会費がもたらしている会員の意識傾向と弁護士自治の危機的状況の根底にある現実というべきです。
長く存在した制度の「変革」に当たって、「消す」メリットや「壊す」メリットが強調されるのは、ある意味、当然のことです。しかし、それのメリットを本当に測るには、なぜ、その制度が長く存在したのかと、「改革」が同時に何を消し、破壊するのかを十分に踏まえる必要があるはずです。「改革」が、果たしてそれをどこまで踏まえたのか。そのことを問いたくなります。
「司法ウオッチ」では、現在、以下のようなテーマで、ご意見を募集しています。よろしくお願い致します。
【法テラス】弁護士、司法書士からみた、法テラスの現状の問題点について、ご意見をお寄せ下さい。
【弁護士業】いわゆる「ブラック事務所(法律事務所)」の実態ついて情報を求めます。
【刑事司法】全弁協の保釈保証書発行事業について利用した感想、ご意見をお寄せ下さい。
【民事司法改革】民事司法改革のあり方について、意見を求めます。
【法曹養成】「予備試験」のあり方をめぐる議論について意見を求めます。
【弁護士の質】ベテラン弁護士による不祥事をどうご覧になりますか。
【裁判員制度】裁判員制度は本当に必要だと思いますか
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もちろん、この背景には、その根本的な原因である「改革」路線に対して、反省を含めたはっきりとした方向転換の姿勢を示さない日弁連に対する会員の不満、もしくは諦めの感情があります。それによって状況が変わる見通しもない「ペースダウン」論と、量産体制が生み出した法科大学院制度支持の方向を変えない日弁連主導層が、一方でこれまで通りの会員負担の上に立つ会務運営を続けようとしていることに、「この状況を変えられないならば、せめて個々の会員への『規制』をするな」という意識が会員のなかに広がっているのです。
それは、逆にいうと、会員の納得の仕方として、もはやそれしかない、というところまで、弁護士と弁護士会が追い込まれていることを意味します。弁護士自治の内部崩壊という最終章もまた、もはや見通せるところまできている、といっていいかもしれません(「『弁護士弱体化』という意図」)。
「高額な弁護士会費の納得の仕方」。ブログ「アメリカの法曹事情」が、こうしたタイトルで、興味深い指摘を掲載しています。文字通りアメリカの弁護士事情を主に紹介するブログですが、今回は、日本の高い弁護士会費についての考え方を提示しています。登録5年から上昇し、「会費」というイメージからは信じられない額に到達する弁護士会費。「公益」活動にも使われるそれが、なぜ、一般人に過ぎない弁護士のサイフから拠出されなければならないのか――。その疑問について、あくまで旧制度下でなった弁護士としての「納得の仕方」を以下のように紹介しています。
「自分なりに考えた理屈は以下のとおりであった。弁護士になるための修習生の期間、年間400万円近い給料プラス手当をもらった。さらには、実務家たちから手取り足取り実務の手ほどきを受けたが、一人年間300万円の授業料を支払っても民間の教育機関が同じ教育をすることは出来ないだろう」
「すると、年間の一人にかかる費用は700万円となり、2年間の修習によって1400万円になる。この部分は国民の税金から支払われているので、この部分を弁護士になって、弁護士会費を支払うことで少しずつ社会に返さなければならないということなのだろう」
これは、あくまでかつての「納得の仕方」の、一つのモデルというべきものかもしれません。ただ、給費制下の弁護士の意識として、国費で、しかも修習期間に他では学べない経験させてもらったということが、少なからずそれを還元しようとする思いにつながっていたことは考えられますし、その仕方が弁護士としての活動であると同時に、あるいは弁護士会活動を通したものであったとしても、不思議ではありません。そして、もし、こうした「納得の仕方」ができるのであれば、それは当然、会費と同時に弁護士会の「公益」活動そのものへの了解度につながっていた、ということを推察することもできます。
「しかし、新制度によって弁護士になった人たちは、どのようにしてこの高い会費を納得しているのだろうか。教育の費用は法科大学院の学費を支払うことで自分たちで負担している。修習期間は貸与制である。修習の期間もわずか10ヶ月である。法科大学院に補助金が支払われているようだが、一箇所に集中していた修習所と異なり、各地に散らばっているために、経済的に見れば非効率で、個々人への恩恵はあまり感じられない」
「新制度で弁護士になった人にとっては、何故これほど高い会費を支払わなければならないのかという疑問に対する回答を何一つ見つけられない。新制度で弁護士になった弁護士が増えれば増えるほど、この不満は堆積し、そのうち爆発するのだろう。ただ、爆発する時期が分からないだけである」
ブログ氏は、返す刀で新制度下誕生した弁護士について、こう書いています。冒頭に書いた高い会費がもたらしている会員の意識傾向と弁護士自治の危機的状況の根底にある現実というべきです。
長く存在した制度の「変革」に当たって、「消す」メリットや「壊す」メリットが強調されるのは、ある意味、当然のことです。しかし、それのメリットを本当に測るには、なぜ、その制度が長く存在したのかと、「改革」が同時に何を消し、破壊するのかを十分に踏まえる必要があるはずです。「改革」が、果たしてそれをどこまで踏まえたのか。そのことを問いたくなります。
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【法テラス】弁護士、司法書士からみた、法テラスの現状の問題点について、ご意見をお寄せ下さい。
【弁護士業】いわゆる「ブラック事務所(法律事務所)」の実態ついて情報を求めます。
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