「会派」という派閥の存在感

     一般にはあまり知られていないことですが、弁護士会の中にも「派閥」があります。弁護士の人でも、この世界に来て、初めて知った人がほとんどだと思います。ただ、最近は弁護士のブログでも、この存在がかなり紹介されてはいるので、以前よりは知る人も増えたかもしれません。

     弁護士会では、この「派閥」を「会派」と呼称しています。いわゆる「会派」は東京、大阪、愛知という大都市部の弁護士会に存在しています。地方会にも、いわばグループといえるようなものは存在しているようですが、一般的に弁護士会内で「会派」とされているのは、この大都市部の弁護士会のなかにあるものを指します。

     簡単に現状を説明しますと、東京弁護士会と第一東京弁護士会に各4会派、第二東京弁護士会に8会派、大阪弁護士会に7会派、愛知県弁護士会に5会派が存在しています。最大弁護士会である東京弁護士会内の最大会派・法友会には11会、二番目に大きい法曹親和会には3会の会派内の部会があり、かつ法友会には司法修習終了後15年未満、親和会には弁護士登録後15年未満の、いわば会派内若手グループである法友全期会、親和全期会が、それぞれ存在しています。

     数については、詳細を明らかにしていない会もありますが、東京弁護士会でみると、法友会が約2400人、親和会が約1500人と群を抜いて大きな勢力で、同弁護士会内の他の二つの会派の所属人員数を合せると、6400人いる同弁護士会会員の約7割が、形の上では、いずれかの会員であることになっています。

     会派はあくまで任意の団体で、弁護士会の組織ではありません。しかし、この数を見ただけでも、東京に地方の弁護士会数個分に相当するような人数を擁する巨大派閥が存在することになるだけに、その日弁連・弁護士会のなかでの影響力の大きさも想像できると思います。

     弁護士は、いまでもこの会派を「派閥」と表現することを嫌います。弁護士会で取材をしていても、ついこちらが「派閥」と口にすると、会派所属の弁護士からは、「会派ね」と念押しするように、こちらの言い方の訂正を求められることが度々ありました。

     「派閥」というと、政界の派閥が連想され、イメージがよくないという意識もあるようですが、派閥所属の弁護士からよく聞く言い分としては、会派は基本的には政策集団なのだから、というものがあります。

     確かに弁護士会内の「会派」は、政策提言をしているところもあります。ただ、一部に司法改革などをめぐって、他会派と明確にスタンスが違うところもありますが、政策の違いが会派のカラーを分けていたり、会派同士が政策で対立的な議論をすることはあまりありません。

     実は、会派の大きな存在意義となってきたものは、別にあります。人事の推薦母体、別の見方をすれば、選挙での集票マシンとしての役割です。そういう意味では、この部分では、会派がいわば一般のイメージ通りの、「派閥」であることを如実に示しているといっていいかもしれません。

     日弁連・弁護士会の役員選挙では、永田町顔負けの本格選挙が展開されていることは以前にも書きましたが(「選挙に燃える弁護士たち」)、会派の人的つながりでの票の流れが、その結果に大きく影響してきた現実があります。本来、会員の意思を直接反映させるべき弁護士会の選挙で、「会派」が集票マシンとして機能することが、その筋の意欲を持つ会員にとって価値ある存在であり続けてきた面も否定はできません。

     弁護士会内にも、この「会派」という派閥についての批判的論調は長く存在してきました。会派のない大都市以外の弁護士会会員が冷やかな視線を向けてきたのは当然ですが、会派を擁する大弁護士会に根強く存在してきた批判も、まさに会派の人事母体的性格にかかわるものでした。

     会派側の弁護士からは、よく会派の存在意義について、「大弁護士会では、会派がなければ、意見集約が困難になる」という言い方も聞かれます。政策についてのコンセンサス形成というニュアンスで言われることが多いのですが、現実的には、この威力・効果は、選挙で、より目に見える形で結果を出してきたように思います。「政策団体」ということが、強調される度に、その役割が、人事での役割に比して、どれほどのものか測りかねる現実があります。

     弁護士会の選挙の取材をしていると、選挙運動での候補者陣営からの会員への電話勧誘で、相手側から「政策的にはおたくの先生にしたいが、申し訳ない」という苦しい回答をもらったという話をよく聞きます。弁護士会の人選のあり方としても、「会派」が影響力を持つ形の選挙がふさわしいのか、理論的職能集団である弁護士らしいものなのかについては、やはり意見が分かれるところです。

     弁護士会の派閥については、若手を中心に「会派離れ」ともいえる現象はあるようです。会派の所属は、もともと新人が所属した「親弁」の所属会派に入る形が一般的でしたが、事務所をやめる傾向が多いこと、親弁との人的なつながりの希薄化に加え、最近の経済的な余裕のなさも手伝って、「派閥の活動どころではない」という現実や、そもそも人事を含め弁護士会から関心が離れてきている傾向もあるようです。

     そのため、各会派とも、若手の獲得・参加促進が課題になっています。親睦的な「会派」の効用として、人的なつながりが、個々の業務での相談相手になったり、協力関係をつくれるといったことも以前から指摘されていますが、OJTができない「ソクドク」(即独立)時代の若手弁護士に、この「会派」の効用が生かせることをアピールできないかとする向きもあるようです。

     いずれにしても、増員政策によって弁護士会内で大きな勢力になってきている「若手」の動向が、弁護士会派閥の今後に大きく影響することは間違いありません。

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    法曹親和会の仲間意識が裁判をも歪めてるかも

    2014年2月28日から3月1日に法曹親和会が企画した、東京第2弁護士会から福岡地裁判事になった吉田祈代判事を訪ねる旅!
    http://web-shinwa.com/zenki/z-yotei/Yoshidasensei-20140228.pdf

    一見先輩を訪ねるうるわしい旅だが、この仲間意識が2弁のお友達弁護士との癒着判決を行ってきたととられてもしかたがない劣悪な判決をうみだしているように感じました。
    元編集長でないと出てこない弁護士会「二弁フロンティア」の「会派を語る」についての問題提起により、問題ある現状と癒着の構造の一端がみえてきました。ありがとうございます。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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