威張る弁護士

     弁護士が威張っている、という話は、これまでも散々耳にしてきたことです。もちろん、そんな方ばかりではありませんが、確かにそういわれてもしようがないな、という方も沢山いました。

     なぜ、そんな感じになってしまうのか。一般的によくいわれてきたのは、「バッチ商売」ということです。若い時、難関の司法試験をパスし、先生とよばれる仕事をずっとやってくると、少々自分の立ち位置について、勘違いをして、バッチをつけた胸をそらしてしまうのだと。そういう面も否定はできません。

     しかし、かつての弁護士の中には、少々大衆には理解されにくい、別の意識もあったように思います。今から、20年以上前ですが、「弁護士を雇う」という表現を使った人に、ある大物の弁護士が烈火のように怒ったのを見たことがあります。

     「弁護士を雇うとは何事ですか」

     はー?と思われる方もいるでしょう。当時でも、市民の間では、「弁護士を雇う」という言い方は普通に使われていました。当時も弁護士がみんな、この言葉に目くじらを立てたかどうかは分かりませんが、およそ現在の弁護士で怒る人はいないでしょう。

     こんなことを聞いたら、そりゃ「威張ってるなー」と思われても当然です。ただ、このこと一つにしても、弁護士独特の意識が背景にありました。それは、強烈な独立意識です。弁護士は依頼者との関係において自由・独立の立場を保持しなければならないとされています。雇い主に対して、従属するような関係ではなく、独立した法律家としてものをいう立場であることが、彼らのプライドでもあったわけです。雇い主ではなく、あくまで依頼者である、というこだわりはそこにつながっています。

     これは、実は弁護士が思っている以上に、市民には分かりにくい点だと思います。「だって、みんな少しでも自分の利になるように、強い弁護士を雇って戦っているじゃないか」「彼らの弁護士は最大限彼らの意を受けた用心棒ではないのか」「お金を出すのだから、こちらがお客じゃないか」などなど。

     弁護士が自由・独立した法律家でなく、ただ雇い主に従属し、いうべきことをいわなければ、確実に社会はおかしくなりますし、依頼者に従属せずに独立して法的アドバイスができることは、結局は依頼者の利益にもなるはずです。なぜならば、彼らはある意味、法律という「武器」を持っているからです。だから、大物弁護士の当時の発言も、言葉の揚げ足取りととれば、どうかとも思いますが、いわんとすることは分かる話だったのです。

     だけども、弁護士もかなり変わってきたと思います。正直かつてよりも、威張る方が減ったようには感じます。弁護士の中には親しみやすさを目指し、敷居を低くしようと努力されてきた方もいます。また、弁護士の競争が激しくなるにつれて、サービス業としての自覚に目覚めてきたという点を評価する見方もあります。むろん、「こちらがお客じゃないか」という市民にとっては、当たり前のサービス精神ととらえられるかもしれません。

     ただ、物事はやはり一面的には語れません。競争が激しくなり、サービス業と割り切った傾向が強まるほど、「自由・独立」もまた、脅かされる傾向にあるといってもいいかもしれません。とりわけ、最近の弁護士増による経済的な余裕のなさは、弁護士の拝金主義傾向を強めているという指摘もあります。それはまたそれで、市民の利益にはなりません。

     威張るという態度自体は、基本的に依頼者との意思疎通を阻害する危険があるので、決してほめられることではありません。先日も、知人がこれから面会に行く弁護士から電話で「今度来るときには○○円くらいを持ってこなければ、私に失礼だろう」と言われ、その知人から「弁護士さんはみんなこんな言い方をされるのですか」と尋ねられて、びっくりしました。どんな世界にも常識では考えられない人がいるものですが、一人の非常識で全体のイメージが悪くなることだってあります。

     決して威張らず、かつ、正しい法律家としてのプライドをもってもらうことが、弁護士には求められています。

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    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





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    ありがとうございました

     しろんぱさん、コメントありがとうございます。
     当然、そういうご意見もあるかと思います。法曹界の中でも、「質」について、評価は真っ二つです。新人の質については、もう少し新法曹養成の結果を経過的にみるべきとの意見もありますが、現職の裁判官が弁護士の質の低下を率直に公開して物議をかもしたこともありました。
     ただ、ご指摘の意見について、二点だけ。公的保健制度というご指摘がありましたが、まさにそういうものがなく、今後も期待できない弁護士の世界での増員であるからこその問題であること。もうひとつは、必ずしも質の低下は懲戒事案にだけ現れるわけではないことです。ベテランに懲戒事案が目立つのは、その通りですが、経済的困窮がベテラン層にないかというと、必ずしもそうではないようです。増員のしわ寄せは、弁護士全体に及んでいます。
     今後とも、よろしくお願い申し上げます。

    よくなったと思います。

     はじめまして。
     あくまで僕個人の感想では、弁護士の質は上がっています。いばる人が少なくなったということもそうですが、きちんと法律や判例を調べてまっとうな手法で当事者のために主張している弁護士が増えました。
     経済的な余裕がないと弁護士の質が落ちるというのは、たとえば「国民皆保険前の医師は貧乏な人にはただで診療していた」というのを懐かしむのと同じで、単なるノスタルジアです。問題点はありますが、公的健康保険の制度によって医療が受けられるようになった人が大多数だったのは間違いないでしょう。
     それに、懲戒の対象となる弁護士が圧倒的にベテラン層に多いことからも、経済的な余裕と弁護士の関連性を否定するのに十分だと思います。もしそうなら、若手弁護士だけが懲戒事案の対象になるでしょうから。
      今でも裁判所の窓口では、「弁護士に相談したけど引き受けてもらえなかった」という人がいっぱいきます。その中には、勝訴すればそれなりの回収が認める事案もあるのに。いつも気の毒な気持ちになります。
     
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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