弁護士「紹介業」という領域

     企業経営者やビジネスマンとの話の中で出る、弁護士にかかわるビジネスアイデアには、弁護士法に抵触する恐れがある、いわば同法を当然のように飛び越えるものが登場することが、これまでもしばしばありました。その典型は、いうまでもなく、同法27条の周旋・名義貸し禁止と、72条の非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止にかかわるもので、そのなかでも最も多いのは、結果として、弁護士に依頼者・市民を紹介して一定の報酬を得ることになる、いわやる「紹介業」に当たるものという印象があります。彼らからすれば、ビジネスチャンスとしてイメージしやすく、弁護士法からすれば、陥りやすいところということになります。

     以前にも書きましたが、これまでもこういう場面になるとも、一応、クギを刺すような立場にもなるわけですが(「横浜弁護士会『顧問弁護士紹介制』白紙撤回の現実」)、その度に弁護士法の禁止規定、というよりも、弁護士についてこういうビジネスがアウトであるということが、いかに一般に周知されていないのかを感じます。と同時に、もう一つ感じるのは、こうしたことを禁止すること、あるいは弁護士という存在がそうした形で「使えない」ことが、ビジネスの発想からすれば、いかにイメージしにくいことなのかということです。

     日弁連や弁護士会が、こうしたことを禁止している事実やその問題性を、発信してこなかったわけでは、もちろんありません。しかし、日弁連のホームページでの説明(隣接士業・非弁活動・非弁提携対策)もそうですが、それらはやや紋切り型である印象があります。例えば、弁護士ではない「事件屋」が介入すると、法律秩序が乱され、国民の権利や利益が損なわれるとか、弁護士が金銭をはさんで従属的な関係で事件を紹介されるような形になると、結局、弁護士の独立を犯して、ひいては国民が犠牲になる、といったものです。

     この発想の根底にあるのは、厳格な資格要件と職務に関する諸規定に服すことになっている弁護士こそ、国民にとって「信頼」に足る存在であるというものといえます。この仕事の対象になる権利・利益の重要度からすれば、それらにかかわる仕事は、あくまで弁護士の主導的監視下に置かれるべきであり、弁護士以外の者の関与そのものが原則危険であるという見方といってもいいと思います。

     何が非弁行為に当たるのかについての、弁護士会の基本的な判断要素も、金銭の流れをどれだけ弁護士が把握しているか、弁護士による方針決定か、方針決定の結果に不当性がないか、とされていますが(東京弁護士会機関誌「リブラ」2006年5月号、「特集 弁護士に対する苦情と非弁提携」)、要は弁護士の関与度です。 ただ、こうした説明は、おそらく弁護士が考える以上に、一般には伝わりにくいものがあるように感じます。要は、いかなる工夫をもってしても、常にダメといわなければならないことなのか、ということが理解されにくいということです。

     弁護士と依頼者・市民を一定の報酬の下に結び付ける行為が、すべて「事件屋」介入と烙印をおされてしまうような、法律秩序を乱すものになるのか、介入者が、すべて社会正義を踏まえない、節度なき存在とも思えない。弁護士という存在が本当に資格要件や規定が担保された「信頼」すべき存在であるならば、彼ら主導でこうしたビジネスが成立する余地があってもいいし、ましてそんな彼らがしっかりしてさえいれば、従属的であったり、道を踏み外すことはないではないか。それとも、これはむしろ、弁護士が悪の誘惑に負けてしまわないための、禁止規定なのか――と。

     これは、さらに現在、弁護士が「改革」によって置かれている状況、経済的な困窮やビジネス化の傾向を加味して考えると、もっと訳が分からなくなる、というべきです。いうまでもないことかもしれませんが、弁護士の業務拡大につながるような弁護士紹介業や、非弁護士が一定限度代行する業務を、それこそあくまで弁護士会の監督下で認める(業者の認可制度など)が、なぜ考えられないのか、ということです。

     それは、正直、私にも分からないところです。前記弁護士法の規定をめぐっては、確かに前記したようなリスクや隣接士業との関係(もっとも、これも弁護士側の主張としては利用者のリスク論)はいわれてきましたが、それらが前記したような弁護士会監督下での工夫の余地を、すべて排除するほどのものなのかどうか、ということです。しかも、これほど弁護士会が弁護士業務の拡大を叫んでいる時に、という前置きもつけたくもなります。むしろ、別の何かがそうした検討を阻んでいるならば、それは一体何なのかという気持ちにもなります。

     もっとも、前記したようなリスクを踏まえたうえで、直ちにこうした検討を始めるべきだ、ということには、正直躊躇があります。考えてみれば、これもまた、弁護士と弁護士会が、今、現実的に「信頼」できる状態か、「資格」や「規定」が質を保証しているのかどうかにかかっているからです。もし、当初の趣旨や建て前はともかく、本当は、等身大の弁護士の姿も踏まえたうえで、こうしたところに手を出さない方が利用者にとって、安全という趣旨であるのならば、または、もはや現実がそうなっているというのであるならば、いかに冒頭の人たちをがっかりさせることになっても、やはり今後もクギを刺さざるを得ないように思えるのです。


     「司法ウオッチ」では、現在、以下のようなテーマで、ご意見を募集しています。よろしくお願い致します。
     【法テラス】弁護士、司法書士からみた、法テラスの現状の問題点について、ご意見をお寄せ下さい。
     【弁護士業】いわゆる「ブラック事務所(法律事務所)」の実態ついて情報を求めます。
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    ジャンル : 就職・お仕事





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    No title

    みなさん、コメントありがとうございます。

    syunさん
    >何か、この日記はいろいろなものをぐちゃぐちゃにして、書いていると思う。別に無償の紹介は何ら問題はないし,特定の士業に対して仕事を集中させて振ることで,協同関係を結んでいる事務所もあると思う。

    それは基本的に承知しております。無償の紹介や士業間の協働に関しては、ここでもあえて言及していません。

    他の方も含めてですが、「紹介業」という表現を使ってしまったので、どうもsyunさんもおっしゃられているような、厳密な意味での「専門的な紹介業」ということをイメージされてしまったように思いますが、ここで問いかけたかったのは、むしろ、結果として「紹介」に当たるとして、アウトにされてしまう部分についてのことでした。例えば、広告料や広告掲載を含む「会費」でありながら、紹介成就に当たり、成果報酬として、一件当たり、いくらかを加算して徴収するといった、「紹介への対価」とされかねない領域です。「紹介業」を開業しよう、というのではなく、こうした形でひっかかってしまいかねないアイディアが一般に多いと常々感じているので、どこまでが工夫の余地なくアウトとすべき話なのか、という問題提起でした。

    弁護士・会もできないような、厳格なマッチングを、まして民間ができるわけない、という趣旨のご主張は、理解していますし、否定するつもりもありません。

    結局、マーケティングの問題。

     私は、司法制度改革にあたり、今後はキックバックなどの弁護士紹介も認めるようにするべきだと考えています。

     なぜならば、弁護士業界は中坊氏の論拠のない改革で焦土化してしまっているからこそ,税理士業、行政書士業では当たり前のキックバックなどは認めた方が、顧客の開拓がやりやすいと思うからです。

     弁護士と一緒に事業をおやりたいときに,営業会社の役員につきときは弁護士会の審査が必要など規制が多すぎると思います。

     私は、なぜ弁護士会や日弁連みたいな強制加入団体が紹介制度をやる必要があるのか、その前提を疑うべきだと思います。いってみれば、法律相談の無償化など,弁護士会が個々の法律事務所の経営努力をどんどんつぶしていって,最終的に全員不幸になるというような焦土化の危険が高いように思います。

     たしかに、事件屋などは存在しますが,別に他士業からの紹介にキックバックを返すのは税理士の感覚からすると当たり前といわれています。別に他士業からの紹介に定額のキックバックを与えても良いのではないかと思います。

     非弁連携といっても、今は法律事務所の中に税理士、司法書士、社労士がいる事務所があり、むしろその方が重宝されているという実態もあります。少なくとも非弁という括りは大きすぎるのであって,別に他士業と連携するのは認めても良いと思います。

     むしろ,最近はヒヨコ買いもあるものの,コンサルタントが高額のフィーを請求して弁護士事務所をコンサルティングするという例が増えているように思います。

     何か、この日記はいろいろなものをぐちゃぐちゃにして、書いていると思う。別に無償の紹介は何ら問題はないし,特定の士業に対して仕事を集中させて振ることで,協同関係を結んでいる事務所もあると思う。今後は,医療機関のように弱者救済とつながっている機関と結びつきを強めるべきだと思うが,こうした機関は「揉め事」に巻き込まれるのをいやがるから紹介料は合理的だ,と思ってしまいます。

     コミッションによる紹介料の支払いが認められないため、弁護士は「定額の広告費」という扱いをされ、成果の出ないホームページ業者に騙されているのではないか,と思います。

     それから専門的な弁護士紹介業というのは非現実的ですね。そもそも弁護士業務はテラーメイドなわけですから,弁護士によって処理の仕方も違うし,絶対こう!なんてことは紹介する側からはいえないでしょう。私の前の事務所は大型の経費共同事務所だったので,配点の際にコーディネート弁護士を置くべきだ,という議論がありましたが,そもそもコーディネート弁護士が事件を受任すれば足りるのではないかということで終わった記憶があります。付け加えると,実は,法律相談というのは初回の振り分けが一番難しいのです。そこを無料化されているので,弁護士の紹介業といっても,とりあえず無料相談などにいけば無料なのだから,有償の紹介業というのは成り立たないでしょう。ちなみに私の前の事務所は弁護士会の縮図だと思うから書きますが,もしコーディネート弁護士がいたとしても,現実にはコーディネート弁護士もすべての弁護士の実績、勝敗などを把握しているわけではないし,結局は好き嫌い、売上表から今月の売上げの低い者に振っていくなど,あまり顧客本位でもなければ,弁護士会マターの紹介業も,あまり合理的な結果をもたらさないということを指摘しておきたいと思います。

    No title

    今どき,まともな会社は,皆,既に,まともな弁護士の知り合いがおり,または,しかるべき伝手があります。それは,長年培われてきた無形財産みたいなものです。

    そのような知り合い・伝手がないいわゆる一見さんは,まともな弁護士を紹介してもらえる制度があればいいなと思っているのかもしれませんが,そんなもの実現不可能です。タイムマシンがほしいなレベルの話です。

    そもそも,弁護士ですら他の弁護士がきちんと能力が有り,高いレベルの仕事をしてくれるのか分かりません(メディアに露出が多く「有名」といわれている弁護士が能力があるわけではないことは皆知っています。昔は専門性があったかもしれない弁護士でも,イソ弁に事件をまる投げし続けていれば,急速に劣化します。)。

    結局,弁護士紹介業なんて,弁護士につなぐことはできても,客が望むレベルの弁護士を用意できるわけではないです(現在の弁護士マッチングサイトの域を超えることはないでしょう。)。
    しょせん,他人の褌で相撲を取ることが前提の商売なので,適当に紹介を受け,素人は食い物にされるだけでしょう。

    将来,新たに発生する消費者問題が,弁護士紹介業だなんて,笑えません(将来,弁護士紹介業者が倒産して,その破産管財人をする時代が来るのかもしれませんね。そこに登録されている弁護士は利害関係があるので出来ないでしょうが。)。

    No title

    社労士や行政書士などの業界では,いわゆる「ヒヨコ食い」と言って,資格は取ったけど独立開業できない人を対象に,セミナーに参加すれば顧客を紹介してくれるなどと偽って暴利を貪っている悪徳業者がいるようですが,弁護士法72条があると弁護士に対する「ヒヨコ食い」ができないので,弁護士法を改正して弁護士紹介業を認めろというのですか。
    依頼者ではなく紹介される弁護士のほうからお金を取るシステムでは,どう考えても依頼者のためになる「紹介」が行われるとは思えませんし,そんな「提案」に耳を貸す必要があるとも思えません。
    なお,一部誤解があるようですが,現行法の下でも弁護士が弁護士を紹介することは禁じられておらず,実際にも行われています。

    No title

    てめえの非弁を正当化するために他人を誹謗中傷するゲスな人間のコメントは気分の悪いものです。

    No title

    ストロベリー出身の猫ちゃんは非弁のあがりで糊口をしのいでいませんでしたか?そのあともね

    弁護士会が相談場所で取った事件に対してピンハネするのは、弁護士法違反にならないのでしょうか?

    弁護士による弁護士紹介業を認めればよくないですか?

    No title

    黒猫さん、ご回答ありがとうございます。

    一般からお金をとるモデルではなく、よく聞かれるのは弁護士からとるシステムだとは思います。また、いかなる場合も、業者が適切な弁護士の能力や適性を完全に保証して紹介するということを念頭に置いているものではない、と思います(たとえば、弁護士が登録する有料の会員サイトで、そこを通じて依頼が成就した場合に、一件につきいくらかを弁護士が支払うとかの類)。仮に、法的問題以外のものが持ち込まれることを排除する、ということであれば、一定の報酬を払い、審査弁護士にその点の判断を頼む、ということくらいだと思います。

    現在、弁護士会でもできないことまでを、民間ができる、とは、確かに思いません。ただ、結局は、個別案件に直接弁護士が接して、対応できるかどうか(対応してもいいかどうか)という、これも個々の弁護士によって違う結論が判明するのであれば(そういう現状ならば)、そこまでの橋渡しを、弁護士側負担で作られる制度が、完ぺきな選別制度あるいは能力保証制度でなければ許されない、といえるのかについては、疑問も残るのです。

    No title

    ご指名で質問があったのでお答えします。
    まず,弁護士による事前審査を義務付け金銭の授受は後回しにすればよいのではないかという件ですが,そうなると仲介業にも弁護士の関与が不可欠となり,いわば一つの事件について事前審査をする弁護士と実際に事件処理を行う弁護士の最低二人が必要になるわけです。
    イギリスのように,依頼者はソリスタを通じてでなければバリスタに事件を依頼できないといった法制度を採用するならともかく,従来通り依頼者が直接弁護士に事件処理を依頼することも可能であることを前提にすると,どうして事前審査をする弁護士が自分で事件処理をしてはいけないのか,という疑問が当然のように浮かびます。
    依頼者にとっても,自ら弁護士に依頼するのではなく,要するに二倍の費用を払って仲介業を通すメリットがどこにあるのか不明であり,少なくともその点をクリアできなければ,有償の弁護士紹介業が正業として成立するとは思えません。自分で弁護士を探せないという人も,法テラスに相談すれば無料で契約弁護士を紹介してくれるのに,なぜ民間業者にお金を払って弁護士を紹介してもらう必要があるのでしょうか。
    なお,現実に存在する事件屋の類は,実質的には弁護士の名義を借りて自ら違法・不当な事件処理をし依頼者を食い物にしているだけで,形式的な弁護士法違反以外はまっとうな仕事をしている事件屋など聞いたことがありません。事件屋がいるから弁護士紹介業も成り立つという考え方は,あまりに現実を知らないのだろうと思います。
    また,日弁連で専門認定制度の導入が進まないのは私も残念だと思いますが,逆に言えば,案件により弁護士の能力や適性を保証して紹介することは,日弁連でさえ現状では無理であり,現場の弁護士でも,同じ事務所の同僚ならともかく,他の事務所の弁護士の能力や適性を保証して紹介するなど現実にはできません。せいぜい,「自分の知り合いであの人なら信頼できると思うから」と言って紹介するのがせいぜいであり,紹介にお金を取ることも基本的になく,結果に責任を取ることもできません。
    紹介業を有償とするからには,少なくとも相当の根拠をもって能力や適性のある弁護士を自ら選別する必要があり,現存する弁護士マッチングサイトのようにいい加減なものでは許されません。当の弁護士にもできない仕事を,民間業者ならできると考える根拠は,私にはどうにも理解できないところがあります。

    現実的に紹介業は存在している

    非弁提携は20世紀の時代からありました。
    昔は民事の弁護士には事件屋がくっついていることが多かった。
    過払い返還請求以前から、明神グループ・コスモグループなどの組織的な非弁屋は存在しました。そして食えない弁護士は自ら非弁屋に接近していったのです。

    今では広告代理店が「相談会」を開き客集めをしていますが、これは完全に非弁的な業態です、なぜなら広告代理店が弁護士事務所を経営しているような状態だからです。
    そのほか探偵・NPO・任意団体など枚挙にいとまがありません。
    しかし民商が自由法曹団系の弁護士に相談者をあっせんしたり、創価学会が会員の弁護士に相談者をあっせんしたりするのも、非弁提携と言えば非弁提携です。
    クレサラ系の弁護士の顧客の多くが配下の任意団体やNPOから紹介されている事実もあります。
    弁護士マッチングサイトなど、客観性などまるでない自己宣伝の場でしかありません。
    既に現行の弁護士法は時代遅れということです。弁護士の質を確保するためにも倫理を確保するためにも無力です。弁護士法を抜本改正の上で、害のある非弁提携を徹底的に取り締まれるような法律にすべきなのです。
    いつも思いますが、ストロベリーにいた先生も非弁の果実を味わっていたわけでしょう?ボスほどではないでしょうが、それで非弁を否定できるんですかね?

    弁護士は法的相談のみ扱うのか

    弁護士って敷居が高い=仲介業の存在が必要となる

    一般市民の意見ですが・・・最初から法的解決を決めて相談するケースも多いと思いますが、最終的には相談者はトラブルを「解決」したいので、「法的解決」にこだわらずに弁護士に相談したいケースもあると思います。

    弁護士でなければ法的解決に適する問題かはわからないかもしれません。でも、その相談者にとっては、「解決」したのであれば、「法的」な解決であろうが、なかろうが、納得したくて弁護士に相談するのではないでしょうか。

    一般市民からすると弁護士という職業は、自分とは別の世界で仕事をしているような存在です。(少なくとも私は)

    もっと身近な存在になれば、仲介を頼らずに済む、と思います。
    病気かもしれない・・・と不安になって医者にかかる。
    病気じゃないとわかって安心する・・・そんな安心相談も弁護士相談に含めてよいのではないでしょうか。

    ただ、日本でよくある、「相談なんだから無料でしょ?」という考えではなく、それにはきちんと対価を払うべきです。

    記事を読んでいて、弁護士が自分で自分の業務範囲を狭め、活動の場を他の非弁行為者たちに残しているような気がしてきました。

    No title

    黒猫さんならびにみなさん、コメントありがとうございます。

    黒猫さんにひとつお伺いしたいことがあります。最初のコメントについてですが、

    >一般市民から相談内容を聴いて,それが弁護士による法的解決に適する問題なのか,それとも適さない問題なのかは,弁護士でなければ適切に判断するのは不可能ではないかと思います。

    この点については、その通りだと思います。ただ、

    >弁護士でない人が相談者の話を聴いて,弁護士に話を繋いで料金を取るというビジネスを認めることになりますが,そうなると仲介者の素人判断で法的解決になじまない事件が弁護士のもとに多数持ち込まれ,しかも弁護士に相談して法的解決になじまないと分かった時点では,既に相談者は仲介者にお金を払ってしまい取り戻せないといったトラブルが頻発することは避けられないでしょう。

    という点については、素朴な疑問を持ちます。紹介する弁護士、あるいは他の弁護士に、持ち込まれた案件の事前審査をしてもらったうえで(あるいはそれを義務付け)対応し、お金の授受は後回しにすればいいだけではないのてすか。要は、こうした点について、システムとしての工夫でクリアする余地は全くない話なのか、どうかが、よく分からないのです。

    それと、マッチングということについて、現在においても、案件による能力や適材を保証して紹介するようなシステムは存在しない(日弁連も認定制度みたいなことはやりたくない、というか責任をかぶるという意味ではできない。法テラスをどうみるかはありますが)現状からすると、前記したトラブル対策を別にすれば(なんらかの工夫ができるならば)、利用者の置かれている状況は、紹介業があっても、その点は、現状と同じようにもとれるのですが。

    紹介業を推進すべきと言い切れるのかどうか、正直、今のところ分からないというのが、本当のところなのですが、こうした疑問にどうこたえるべきかも分からないのです。

    誤解があるようですが

    私は,一定の要件の下で認定司法書士に弁護士資格を認めることにはむしろ賛成しており,どのような要件で弁護士資格を認めるかという問題と,弁護士となる要件を満たさない人に仲介業を認めるかという問題は全く別の問題であると考えています。
    イギリスのソリスタ(事務弁護士と訳される)は,法廷業務以外の法律事務を自ら行うとともに,訴訟事件になったときはバリスタ(法廷弁護士と訳される)に事件を仲介する,一般市民はソリスタを仲介せずバリスタに直接事件を依頼することはできないという法制度を採用しており,ソリスタはある意味仲介業に近い役割を担っているということができます。
    しかし,わが国でイギリスと似たような制度の導入を考えた場合,ただでさえ法律需要が伸び悩み弁護士が供給過剰となっている中で,新たに弁護士への仲介を目的とした新しい資格を作っても需要は見込まれないだろうし,司法書士その他の隣接士業はそれぞれ独自の職域を確立しているため,それを壊して弁護士への紹介業のような形に再編するのはかなり無理があるのではないかと思います(弁護士より,むしろ隣接士業の人たちの強い反発が予想されます)。
    私が弁護士への紹介業を非現実的としたのは,以上のような理由からです。
    なお,日弁連が法律系士業の「抜本的再編」を拒否した歴史的事実は存在しません。司法審の議論では,弁護士の大増員を正当化するため隣接士業の存在はほとんど無視されており,それ以外でも法律士業の抜本的再編が政府で本格的な議論になったことはありません。そもそも再編案を示されたことがない以上,それを拒否する機会も当然ながらあり得ません。
    政府で法律士業の再編が本格的な議論にならないのは,司法書士は法務省,税理士は財務省(国税庁),弁理士は経済産業省(特許庁),社労士は厚生労働省,行政書士は総務省と所管官庁がバラバラであり,かつ弁護士以外の士業有資格者は試験合格者ではない公務員からの天下り組が多いという事情に起因するものであり,これを日弁連のせいにするのは筋違いだと思います。

    変わりたくないからこそ、変わらなければならない

    雑誌の人生相談コーナーにも、法律行為が絡む内容(例・配偶者の問題行動を列挙して離婚の是非を問う)がありますが、それらに弁護士会が「非弁だぁぁぁぁーーーー!」と言い掛かりをつけないのは何故なんでしょうね。そのうちつけますかね? 占い師も危ないかも知れない。

    「法律系資格の抜本的再編」それを20世紀のうちに日弁連が呑んでさえいれば、これほどの現状をもたらすこともなかったでしょうに、未だに全く反省せずに妄念を言い張る輩が業界中心の最上流でのさばっているのを見ると、もう手遅れかも知れません。

    弁護士紹介業は非現実的です。

    私見ですが,一般市民から相談内容を聴いて,それが弁護士による法的解決に適する問題なのか,それとも適さない問題なのかは,弁護士でなければ適切に判断するのは不可能ではないかと思います。
    相談者が法律問題だと思っていることでも,実際には法律問題ではなかったり,あるいは法律問題ではあっても裁判で勝てる見込みがない,裁判では勝てても債権を回収できる見込みがない,費用的に割に合わないといった事例はいくらでもあり,法律と裁判実務に精通した人でなければそのような判断ができないからです。
    そして,有料の弁護士紹介業を認めるということになると,たとえ法務省や弁護士会の監督下に置いたとしても,弁護士でない人が相談者の話を聴いて,弁護士に話を繋いで料金を取るというビジネスを認めることになりますが,そうなると仲介者の素人判断で法的解決になじまない事件が弁護士のもとに多数持ち込まれ,しかも弁護士に相談して法的解決になじまないと分かった時点では,既に相談者は仲介者にお金を払ってしまい取り戻せないといったトラブルが頻発することは避けられないでしょう。
    私事になりますが,私が弁護士になってから,私の両親や弟が第三者から法律問題めいたものを聞きつけ,それを私に持ち込んでくることが時々あります。両親も弟も法律の素人ですから,むしろ法的には無理だよという相談の方が多く,相談内容自体が正確に伝わってこないことも多いです。もしそれらと同じことが業として行われ,しかも既に相談者が仲介者にお金を払っているとなれば,仮に弁護士法の規制がなかったとしても大問題になると思います。
    このような事態を防ぐためには,仲介者も弁護士とすることを義務付けるか,あるいは仲介者についてイギリスのソリスタのような(法廷)弁護士とは別個の資格制度を設けるしかありませんが,いずれも紹介制度の趣旨ないし我が国の現状に照らし現実的な選択肢であるとは思えません。
    実際には,いまや「弁護士」であっても,相談内容が法的解決になじむものであるか適切に判断できないレベルの人が増えているものの,だからといって非弁護士による仲介業を認めろという議論には通常ならないでしょう。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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