「点」を否定する無理

     旧司法試験組、法科大学院組、そして予備試験組。私たちが出会うことになる、この3種類の法曹の能力や質を、その種類の違いによって区別し、そこにはっきりとした優劣をつけることはできません。旧試組でも、法科大学院を経ても、それこそ優秀な人もいれば、そうでない人もいる。どちらが粒ぞろいだなどということも、一概にいえません。少なくとも、いまのところは。

     点からプロセスといっても、この社会がプロセスの効用を実感できるまでにはなっていません。もちろん、旧試組の法曹に、問題かある法曹がいたとしても、それが点による選抜のせいだと、国民が思っていたわけではなく、言い出したのはプロセスを導入しようと思った有識者の方々です。新プロセスが、必ずやそうした効用をもたらしてくれると、国民が信じているというわけでもないと思います。旧試験組の現役法曹が、その点の選抜(そもそも点であったかは別にして)によって、つまりは新プロセスを経ていないことによって、おしなべせて「欠陥品」であるような意識(「法科大学院導入を支えた『欠陥』批判」)が、多くの国民にあるとも思えません。

     しかし、あくまでこのプロセスを強制し、それを続けようとする側は、そういうわけにはいかないはずです。このプロセスを経なければ、あるべき法曹としては、アウト。少なくとも経た者と経ない者には、歴然たる差があることを、社会に示していく立場であっていいはずですし、社会の側に、なるほどプロセスを経た法曹は違うと認識させなければならないはずです。ある意味、その認識が形成できないうちは、何度となく、本当にこのプロセスを強制して、多くの志望者の受験機会を奪ってまで導入する必要があるのかが問われることもまた、当然というべきです。

     そう考えると、そもそも「予備試験」という存在はわけが分からなくなります。経済的な理由でプロセスを経ることができない人への機会保障の意義はもちろん分かります。ただ、プロセスを絶対的に「あるべき法曹」のためとして強制する側からすれば、どういうことになるのでしょうか。プロセスを経たものと同等の能力を「点」で測れるという意味もよく分かりませんが、場合によっては「点」でも「欠陥品」にはならないということなのか、あくまで少数の例外として目をつぶるという立場なのか。

     もし、前者ならば、予備校批判を含めた旧試否定、プロセス強制の根拠にぐらつきが出るように感じます。旧試組を全否定しているわけではないし、中には「欠陥品」でない人もいるのだから、これはこれでよし、ということでしょうか。

     それでは、今、その予備試験組の質や能力に、むしろ社会が注目していることをどう考えるべきなのでしょうか(「坂野弁護士ブログ」)。点でも、「欠陥品」にはならず、むしろ「プロセス」を正式に経た人材よりも、社会が歓迎するのならば、この強制は何の意味があるのでしょうか。それとも、これ自体が「プロセス」定着化のプロセスで、そのうち社会は、法科大学院組しか見向きもしなくなるということを信じていればいいのでしょうか。

     繰り返しになりますが、多くの国民は、今でも「点」が問題だと思っていません。だから、この現象のそのものにも、何の疑問もわかないはずです。むしろ、疑問を抱くとすれば、「欠陥品」を生み出すはずの「点」の選抜を経た現役法曹自らが、実務家教員として法科大学院で後進を指導していることと、この「プロセス」強制を何としても維持しようとしていることの方だと思います。



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    「点」ではなく「線」による教育がよいというなら、「点」より「線」が優れているということが前提で、その「線」とは「法科大学院での教育」に間違いありません。
    つまり、ロー関係者(既得権益者)は、「法科大学院での教育」に自信をお持ちなんですね。しかし、では「法科大学院での教育」の中核を担う「学者教員」という人種はどんな方なのでしょうか。

    裁判所に行ったことはない。
    代理人になったこともない。
    証拠を探し求めて呻吟した経験はない。
    もちろん司法試験には合格していない(そもそもチャレンジしなかった)。
    極道・マチ金・精神障害者・クレーマーらを相手の丁々発止の交渉など怖くて論外。もちろん脅されたことも、すごまれたこともない。
    夜中に依頼人からの緊急電話を受けることはない。
    民事再生・M&A・株主総会指導・交通事故・相続紛争・近隣紛争・境界事件・離婚・債権回収・医療過誤・破産・任意整理・刑事事件・少年事件・行政不服申立・労災・地位保全の仮処分・契約書作成・インサイダー等の事件を一切扱ったことはない。
    目の前の相談者・依頼人にお金を請求したことはない。
    自分の責任でイソ弁や従業員を雇ったことはない。
    確定申告したこともない。
    賞与の資金繰りに金融機関を訪問して連帯保証人を立てるよう求められたこともない。
    特定分野以外は、さっぱりわからん。

    その反面、何をしていても毎月大学から定額の給料を受け取ることができる。
    毎日好きな分野の論文を読んで思索を深めた。
    法科大学院ができてはじめて「教授」の称号を手に入れた。
    たまには地元新聞に寄稿したり、シンポジウムに呼ばれたりする。
    教え子たちからは、「先生」「先生」と慕われている。

    これで、自分たちが行う「教育」には、客観的な試験による選抜よりも値打があると強弁するのですから、その図太い神経には開いた口がふさがりません。

    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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