「会派」活用論から見える現実

     弁護士会内、とりわけ地方会の会員からは、選挙の時に見せつけられる、その絶大な「集票マシン」機能の方に眉をしかめられる、東京の弁護士会内会派(派閥)。一方で、そうした批判的な目線をよく分かっていればこそととれる、「政策集団」、「互助団体」といった「だけじゃない」といわんばかりの、存在意義を強調する言い方が、その会派方面からは聞かれてきました。そして、今回の「改革」の失敗がもたらしている負の影響がはっきりするにつれ、不祥事防止への相互監視機能や、OJT喪失の若手支援という切り口で、その存在価値再評価につながるような活用論が、登場してきています(「弁護士会会派の失われつつある『前提』」)。

     これは、会内でも当然評価が分かれるところだと思います。「会内民主主義」の形骸化にかかわる、前記選挙での会派の「存在感」という現実を、そうした彼らがいう存在意義で肯定しきれるのか、という点、また、「改革」の破綻的状況のなかで、その活用論こそが、会派側の若手獲得策にならないかという点。ただ、一方で、現実に会派が存在しているのであれば、それが有効に活用され、若手の救済につながればいいのではないか、という点――。

     最近、この会派「活用論」の立場から、早川忠孝弁護士がブロクで発信されています(「弁護士漂流時代に弁護士会の会派が果たすべき役割」)。

      「司法試験改革の成果と言うか、あるいは挫折と言うか、立場によって評価が大きく分かれるが、弁護士激増時代を迎えて若い弁護士が漂流し始めている。営業センスがある人や運に恵まれた人にとってはこういう時代も一つのチャンスに見えるだろうが、牧歌的な時代に育ったベテラン弁護士にとっては今は粗製乱造の、如何にも危なっかしい時代に映る。3ヶ月や半年ぐらいで所属事務所を離れざるを得ない弁護士やはじめから自分一人で弁護士の仕事に就かざるを得ない若い弁護士は、多分不安で仕方がないはずである」
      「弁護士がとにかく弁護士らしい仕事を出来るようになるのには、まず10年はかかると思っておいた方がいい。ある程度の契約書の作成が出来るようになるのも10年だということも教わったことがある。1年目や2年目では、若い弁護士一人だけでは法律相談はさせられない、というのは本当だろう。司法修習が2年間の時代でもそうだったのだから、司法修習の期間が半分の1年になっている現在ではもっと時間がかかると見ておいた方がいい」

     早川弁護士の、この若手が置かれている窮状への認識は、正しいものだと思います。同弁護士は、だから今こそ、会派なんだとしています。「漂流しかねない」こうした若手弁護士を弁護士会につなぎとめるとめるためには、「所属事務所の先輩弁護士との絆を大事にするか、弁護士会の会派に所属し、様々な活動に参加して、出来るだけいい弁護士の仲間を作ることがいい」と。そのなかで、日常業務にかかわる、さまざまな相談にこたえるご縁ができてくる、そのメリットを述べておられます。

     これでいいではないか、ととらえる方もいらっしゃるのかもしません。ただ、この記事を見て、一番感じたことは、これが、あるいは会派「活用論」の一つとして、成り立つ考えだとしても、弁護士「漂流時代」の対策として、成り立ち得るのか、ということ、端的にいえば、早川弁護士も指摘している現実に対して、どこまで背負いきれる話なのかということへの疑問です。人的なつながりこそが、解決策だという見方が基本だとすれば、大弁護士会の弁護士はすべからく会派に属し、かつ、地方会においても、一定限度の会員数になり、それこそ相互監視ができない規模(ある弁護士は200人限界説をもらしていましたが)になれば、当然、それに代わる会派もしくは会派的存在が必要になることになります。

     そして、いうまでもなく、私たち弁護士会外の人間からみて、一番問題にしなければいないのは、なぜ、そこまでしなければいけないのか、という方です。早川弁護士の話のなかにもあるように、この期に及んでも、「改革」の「成果」の方を強調される方は、弁護士会のなかに沢山いらっしゃるのですが、いみじくも同弁護士も触れているように、この状態を喜んでいるのは、自らの「営業センス」や「運に恵まれ」ていることを自認し、これをおカネ儲けの「チャンス」ととらえる弁護士たちです。彼らが喜ぶ環境のなかで、私たちには一体、何がもたらされているというのでしょうか。自身も、同業者も、「不安な」弁護士が社会に放出されている現状を、なぜ、私たちは前提として受け入れければならないのでしょうか。

     これは、相当な社会とっての、現実的なメリットを提示してもらわなければ、依頼者・市民には割の合わない話です。本来「不安で仕方がない」状況におかれているのは、若手弁護士であると同時に、私たち市民だからです。それでも、という「成果」が伝わらないことには、残念ながら、この環境も「活用論」も、「チャンス」ととらえている弁護士と会派のためにいわれていることに聞こえてしまいます。


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     新人や若手の弁護士が仕事をやっていくには,先輩弁護士とのパイプを作ることは当然必要ですが,そのパイプを作る手段としては,会派(派閥)よりむしろ委員会活動の方が重要視されているのではないかと思います。
     弁護士がどこかの派閥に属しようと思えば,その会派にも会費を支払わなければなりません。所属事務所で派閥の会費を支払ってくれる恵まれたところに就職できた人ならともかく,それ以外の人にとっては会費の負担は重いです。また,派閥に属していると,お金にもならないしやりたくもないボランティア的な派閥活動をたくさんこなさなければなりません。
     これに対し,委員会活動なら会費も取られませんし,自分の興味がある分野の活動だけ参加すればいいし,弁護士会の公益活動参加義務も果たせますから,一石三鳥です。弁護士会の委員会活動のうち,弁護士業務にあまり関係ないもところは廃れていますが,業務に関係あるところは今でもわりと盛況です。
     昔の委員会は,派閥に呼びかけて人を集めるのが主要な人材供給方法でしたが,今は派閥を経由せず,新人説明会などで直接に希望者を集める方法が主流になりつつあるような気がします。
     弁護士会の派閥は,弁護士の激増により参加する人が減って,今は派閥自体の生き残りに必死なのです。派閥の効用を説く弁護士の行動原理は,法科大学院の効用を説く法科大学院教員のそれと同じようなものであり,もはやそれ自体に目くじらを立てるような問題では無いように思います。早川弁護士も,別に東弁会員の多くが派閥に参加すれば現在の深刻な問題が解決するなどと本気で考えているわけでは(おそらく)ないでしょう。

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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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