日弁連「フレンドリー」広告の見え方

     企業やブランドの良いイメージを消費者のなかに形成しよう、「イメージ広告」といわれるものは、もちろんすぐに収益が上がるような性格のものではありません。しかも、それも繰り返し打たなければ、効果につながらない。だから、この広告には当然に発信する側の経済的な条件が求められ、結果、私たちは大企業のそれを見ることになっています。

     その典型的なイメージ広告に当たる、日弁連のCМ(「笑顔のオフショット」)がyou tubeにアップされ、話題となっています。といっても、今のところは、業界内だけのようではありますが。早速、「これを見て、本当にどれだけ相談者が来るのか」なんて、参加弁護士たちの熱演に対して、ちょっと意地悪な声もちらほらありますが、前記した通り、イメージ広告であることを忘れてはいけません。

     もちろん、このイメージ戦略の狙いは、日弁連・弁護士会が繰り返し唱えている、「市民に身近な弁護士」です。

     

      「たとえば、ご近所トラブルとか、家庭の中の悩みとか、
      あなたが迷ったその時に、適切な判断、正しい決断、
      それって結構難しい。そう!だからプロに相談。
      私たちあなたの応援団。We are supporters for you.
        暮らしを見守る応援団。We are supporters for life.
      あなたの不安を安心に。小さなことでもお気軽に。
      きっと力になれる!きっと明日は晴れるでしょう♪」

     弁護士が次々に登場して歌う、このなんとも言えないダサい感じ、イタイ感も、あくまで前記効果を狙って、わざとやっている、ととるべきでしょう。とにかく、弁護士の長年言われている「敷居が高い」というイメージを払しょくしたいという、熱意と必死さは伝わります。とりわけ、最後の下り――。

      「あなたの街の弁護士は、ホントはとってもフレンドリーなんです♪」

      「ホントは」というところが肝です。「知らないかもしれないけれど」というニュアンスになりますが、「敷居が高い」というのは、あくまで現実にそうだというのではなく、弁護士の作られたイメージであり、実際はそうではないんですよ、という訴えになります。良い悪いではなく、その強調が印象的です。

      ただ、あえていえば、弁護士と市民の間のアクセス障害という問題のなかで、「フレンドリー」「気軽さ」という発信によって、払しょくされるものは、どのくらいのウエイトを占めるのか、ということが気になります。もちろん、繰り返し書いているように、弁護士の数を増やせばいい、すべては丸く収まるというテーマでないことは、はっきりしています。しかし、問われるのは、市民側のアクセス躊躇の中身です。実は、そこに今、弁護士そのものに対する、大きな不安があるように見えるからです。

      「なんだかおカネの話ばかりなんだけど、現実問題、何を信じていいのか分からない」

     ある市民集会で出会った高齢の女性は、自分が接してきた弁護士について、こう嘆いていました。もともと弁護士費用の不透明感が、弁護士に接触しようとする市民にとっての抵抗感につながっていた事実がありますが、最近、ややそれが変化してきた。端的に言えば、「いくらか分からない」という情報不足による不透明感というよりも、「ぼられる」恐れを口にする傾向。つまりは、根本的な弁護士不信につながるものが増えてきたということです。

     皮肉なことに、弁護士の数が増えることで、期待された「敷居が低くなる」効果とは逆に、巷にあふれだした弁護士に対する不信感は増している印象を持ちます。報道される金銭絡みの弁護士不祥事は決定打ですが、弁護士が増えたことで経済的に、その苦しい台所事情が社会に伝わり、弁護士がこれまでよりカネ取り主義に走るとか、これまでよりもおカネのある人間の方を向く、といった不信感・不安感が、社会にじわじわと広がっている感があります。

      「弁護士だって商売なのだからおカネの話しをするのは当然ではないか」という声も聞こえてきそうです。それはそうかもしれません。ただ、この深く、広がる弁護士不信に対して、もはや「フレンドリー」「気軽さ」というイメージ戦略ではカバーしきれないところが、確実に広がってきているのではないかと思えるのです。

     また、「身近なトラブル」対応のイメージも、弁護士会側がこの「改革」を通じて、ずっと発信していることですが、そもそも市民側の、いうなれば「誤解」が解けることによって生まれるニーズがどれくらいあるのか、という点も、いまやはっきりしてきている感があります。弁護士が「フレンドリー」で「身近」であれば、おカネを投入してでもお願いしたいニーズ。それは果たして、この社会にどのくらいあるのかという問題です。しかも、その肝心のおカネの部分は、前記したような不信感の領域にどんどんのめり込んでいます。

     ところで、イメージ広告のひとつの特徴に、差別化の効果があります。つまり、機能やサービスの中身で差別化が図れない、いわば、ライバルとの間でどんぐりの背比べのような「商品」競争下で、イメージの差別化で勝負をつける効果です。いまや司法書士や行政書士といった、弁護士界がいう隣接士業が、「街の法律家」などと称して、「身近さ」「フレンドリー」な点を、むしろ弁護士に対抗して差別化のコンセプトとして掲げています。偏在問題でも強調されたところですが、この点では、決定的に弁護士が劣勢という指摘もあります。

     ライバル云々ではなく、弁護士自身のイメージ払しょくの問題として受けとめているのは分かりますが、逆に「資格」としては権能で差別化を図れることを強調してきたようなところがある弁護士による、ここまでの熱心な「身近さ」アピールは、なぜか勝負所と、勝負の仕方が違うような違和感も覚えてしまいます。


    ただいま、「弁護士の質」「今、必要とされる弁護士」」についてもご意見募集中!
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    No title

    日本中の弁護士が泣いた
    ヤマギシがCMの効果だとほくそえんだ。
    製作総指揮をあの薄呆が担当
    興行収入初日から赤字
    「キチとの遭遇」

    No title

    日弁連は、実質、官僚機構化していますから、費用対効果を考えることを期待するだけ無駄です。

    期待を持つと、それに応えられない日弁連の行動に腹が立つだけ。期待など持たない方がよいです。

    今の高コスト体質に反対する会員を集めて、総会で執行部案にノーを突きつける勢力をつくることにエネルギーを注ぐ時がきているのでしょう。

    腐敗

    >費用対効果という言葉も理解出来ないバカどもです

    理解できてないのではなく、費用対効果なんぞ、はなっから完全に無視してるのだと思います。
    一般の街弁や業界全体にプラスかどうかなんて、知ったこっちゃないと、
    とにかく自分のつながりのある相手(広告代理店?or マスコミ営業部?)に、会員から強制徴収した血税をばらきますよ、と。
    自分の金ではなく、他人の金を対外的にばらまくお仕事づくりをしますよ、と。

    日弁連執行部は「バカ」なのではありません。
    性格が腐ってるのです。

    No title

    発送が逆です。
    広告費用を投じるのであれば、採算性を考えなければなりません。
    費用に見合う収益が見込めるような客層・事件層をターゲットにしなければならないのです。
    それが日常のトラブル?
    バカじゃねえの?さすがに頭の中がお花畑だけのことはある。
    こんなやつらに企業法務を依頼しようという企業がいたら経営者失格です。
    費用対効果という言葉も理解出来ないバカどもです。

    No title

    大地主の用心棒しかする気がないくせに、小作人含めた万人の味方みたいなツラをする恥知らずどもには、吐き気しか催しません。

    何が事件性不要説だ。どんな幼稚な件だろうが、全部独占して絶対に弁護士以外には許さないというのなら、医師同様の依頼受任義務を認めろ。嫌だというのなら、客が誰を頼ってもいいように、事件性不要説などという恥知らずな思い上がりをさっさと捨てて、少なくとも法務省検察庁レベルの事件性必要説を認めろ。

    No title

    こんなふざけたものに多額の会費が使われているかと思うと、気分が悪くなります。
    関係者全員・ねば良いのに。
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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