「弁護士逮捕」が突き付けている現実

     国有地の架空取引で約2億円をだまし取った詐欺容疑で、弁護士が逮捕された(YOMIURI ONLINE )同じ日、同じ警視庁に、兄刺殺の容疑で元弁護士が逮捕(msn 産経ニュース)された、というニュースが流れました。あくまで容疑であり、片や「元」がついているとはいっても、こうした事態を通して、社会が「弁護士」という存在に対して、どういう目線を向け、また、どういうイメージをより形作るのかは、もはや説明するまでもないと思います。

     両者は全く種類の違う案件であり、これを並べて論じることは適切ではない、という見方もあるかもしれませんが、むしろ問題のとらえ方としては逆です。こうしたいろいろな場面、違う状況で、「弁護士」の「正義」への根本的な信用を揺るがす案件が発生しているととらえることこそが、適切である、といわなければなりません。

      「実在の弁護士名を騙った詐欺にご注意ください!!」。こうしたタイトルで、第二東京弁護士会がホームページ上で、実在の弁護士の名前を騙った不正請求への注意を呼び掛けています。今年に入って増えているという実在の弁護士名で、過去の大規模詐欺事件の被害者に電話をかけ、被害金の取り戻しが可能であるかのように信じ込ませたうえ、手続費用等の名目で金銭を詐取しようとしたり、未公開株投資の損害金を取り戻すという名目で架空の手続き費用を騙し取ろう行為。第二東弁は「これらは弁護士名を詐称した悪質な詐欺行為」だとして、市民に対しては、まず日弁連ホームページでの確認、さらにそこに弁護士名や登録番号が乗っていても、本人とは限らないのだから、事務所に直接電話して確かめるように求めています。

     ただ、あえて皮肉な言い方をすれば、市民はたどりついたのが正真正銘の「弁護士」だとして、それで「安心できるのか」という問いかけができてしまわないでしょうか。現実に第二東弁のいうような犯罪が発生し、それに対して、弁護士会として求める対策としては、もちろん前記したようなものになるのだろうけれど、もはや弁護士ならば安心という時代ではない、むしろ、前記呼び掛けが、一生懸命求める本当の「弁護士」であることの確認が、どんどん無意味化していくような現実が進行しているようにも思えてしまうのです。

     実際、弁護士に接してきて、実は一般の多くの弁護士は、こうした事態について、語るべき言葉を持っていないととらえていることを感じます。意識の根底に、弁護士が特別の職業倫理を求められていい仕事であることは認識しながらも、どの世界も「はねっかえり」はいるという意識。自分は違うという意識とともに、そこはどうにも出来ないという無力感。一方で、無理な「改革」による経済困窮が引き金になっているという事実を実感しながらも、それが引き金になってしまうレベルの、弁護士という肩書の人間が持ち合わせた倫理観、合法精神の現実。

     しかも、今回の案件を見ても、それはこの世界にたまたま間違って混在してしまったように片付けられようもない、経験あるベテランであり、かつ日弁連常務理事などといった会ポスト経験者といった注釈までつくとあれば、もはや市民からすれば、経験も権威も頼りにならない、内在していた問題が「弁護士」という存在の中に息を潜めていたようにみても当然です。その意味で、確かに弁護士としては語りようがないかもしれません。

     弁護士会という存在は、もはやそういうことは分かっていてやっているととることができます。語りようがない状況下の弁護士会の姿は、それでもなんとかできること、少しでもやれることはやらなければならない姿勢として見ることはもちろんできますが、前記皮肉を言いたくなるような、本当の現実は分かっていながら、まるでとても対策として追いつかないことをやっているように、社会が受けとめて何も不思議ではないのです。

     改めて言うのもおかしな話ですが、前記報道に、弁護士会関係者は、「弁護士は遂にここまできた」という思いを強くするべきです。そして、あえて、そういう弁護士会の置かれた立場のなかで、もっとやらなければいけないことを挙げるとすれば、せめて過去の「改革」の全面的な反省に立って、これ以上、事態が悪くならないために、被害を拡大しないために、何を今やるべきかを、過去の姿勢や理念に縛られずに、優先的に考えること。そういう姿勢以外、本当に社会に伝わるものはないように思えます。


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    > 若手の方が経済的に厳しいはずなのに、ベテランばかりが不祥事を起こすのはなぜなんでしょうね

    私の知り合いの警察官による至言。

    「オレ、悪いことができるほど偉くないから。」

    No title

    不祥事起こせるほど信用もされていないから。

    若手の方が経済的に厳しいはずなのに、ベテランばかりが不祥事を起こすのはなぜなんでしょうね
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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