弁護士会内「断絶」ムードを伝えるツイート 

     今の弁護士会内のムードを象徴するような、二つの「つぶやき」がネット上に流れました。

      「弁護士間の競争がゆるくて食うに困らない仕事があって、弁護士会の会務で自分が信念もってやりたいことをやって(無償で)、で現在の地位がある人が、競争が激化して弁護士やめようかと思っている弁護士が多数いる時期に、自分の感覚で弁護士かくあるべし、という話をするのは反感を買うだけだろう」(8月18日、坂本正幸弁護士のツイート)

     弁護士会の世代的な断絶ムードといえるものです。弁護士の経済的な環境の異変。かつての弁護士が、安定した環境で基盤を作り、無償の弁護士会活動に取り組んできた、その頭で語られる「あるべき論」に、異変のただなかで、基盤をつくるどころか、存続すら危うい弁護士たちの、よそよそしい感情が生まれている、ということです。

     これは、以前も書きましたように、この異変を生み出した「改革」への姿勢に対する疑念にもなっています。こうした状態になることを、どれだけわが身のこととして考えて、無謀な激増政策に舵を切ったのか。そして、現在もまた、同様に、未来に対して、危機感を持っているのか。先輩たちの当事者意識への懐疑ともいうべきものです(「先輩を『無責任』と見る批判」)

     もちろん、先輩弁護士のなかには、真剣に現在の若手の状況と、この状況によって人材が来なくなる法曹界の未来を心配している人たちも沢山います。後輩たちに弁護士のあるべき姿を伝えたい、彼らの言葉が、すべてこうした感情のなかで処理され、耳を貸さないことになるのであれば、なんとも悲しい現実です。

     もう一つの「つぶやき」。

      「弁護士は金儲けするなというのは人の不安につけ込んで不当な報酬を受け取ってはいけないという限りにおいて正しいけど、金銭に頓着してはいけないとか採算度外視でも取り組むべき正義があるという意味になると宗教であって全員が遵守する必要はないね」(8月18日、「でぽん28号」氏のツイート)

      「でぽん28号」氏は、自身が弁護士であるとは表明されていませんが、他のツイートを読む限り、そう推察できる方です。ここで登場する「金儲けをするな」という論調は、弁護士増員政策に反対ないし慎重な弁護士の姿勢を、競争回避の「保身」と決めつける弁護士会外の方と、精神論としてこうとれることを言っている弁護士会内の方の言を指しているように思います。

     厳密に言えば、前段の「人の不安につけ込んで不当な報酬を受け取ってはいけない」というのは、「でぽん28号」氏も言う通り、当たり前の話ですが、弁護士会外の弁護士批判の論調には、多分にこの不当性が織り込まれます。要は、弁護士という人間は、ともすればそういうこともやりかねない、だからこそ、厳しく対応しなければならない、というニュアンスです。後段は、もともと弁護士の仕事の在り方をいう精神論のひとつで、「宗教」という言葉も出でくるように、例の「成仏理論」(「弁護士『成仏理論』が描き出す未来」)や中坊公平氏の「弁護士報酬お布施」論を思い起こさせます。

     後段の論を、前記坂本弁護士のツイートが指摘している断絶に重ね合わせれば、現在、安全な「地位」にある先輩弁護士が、「改革」の失敗がもたらしている現実を前に、それを推進した責任を脇において、この事態を精神論で乗り越えよ、といっている図、ということにもなるように思います。

     先輩の弁護士のあるべき論は、後輩の耳に届かず、当事者意識を書いた、いわば他人事のような精神論に全く付き合う必要はなし――。この弁護士会内の断絶ムードは、「改革」がもたらした結果です。心ある先輩には同情できますが、二つのツイートが示す、後輩の目線・結論には、そうなってやむなしの現実があります。

     ただ、この社会に弁護士に「採算度外視」でも取り組んでもらいたい「正義」が果たしてないのかどうか。「宗教」かどうかはともかく、そうした取り組みをしてきた弁護士が、この社会にはかつて沢山いたのではなかったのか――。このことを考えると、新しくこの世界にきた弁護士たちの目が、どういう理由であるにせよ、そうした弁護士像から離れ、あるいは離れざるを得なくなっているということに、これが本当に「市民のため」になるのかということともに、改めて「改革」の罪深さを思ってしまうのです。


    ただいま、「今、必要とされる弁護士」「弁護士の競争による『淘汰』」についてもご意見募集中!
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    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





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    菅本さんの例に出しているような先輩弁護士を、優越感でそう言っているのだ、とする判断には違和感を持ちます。
    彼女が説明しているように、その先輩は人格的にも優れた人のようですし、また実際にそうした言葉をかけてくれる先輩は、無視を決めこむ人たちとは明らかに違っていますから。
    その先輩は、自分がやって来たやり方と現在の状況を比較して、善意でそうした励まし方をしたのではないかと思います。ただ、その認識を超える勢いで、新人の環境は悪化しているということでしょう。大多数の先輩方には、悲しいかな、想像力が追いついていない、というのが正しいように思います。

    確かに、このような言葉を直接かけられると、若手はまだ何とか頑張ろう、できる限りで会務も協力しよう、という気持ちになります。けれども、それはあくまで目の見える範囲だけでしょう。

    目の前の先輩、単位会が決めたことではなく、何の議論も、理論もないまま、いきなり日弁の正副会議で決めたから協力しろ、みたいな要請には若手でなくてもいい気持ちはしません。
    ましてや、長期的な展望(戦略)も説明をできないまま、何のために、優先順位の低いことを、これだけの費用をかけてやるのか、全く説明できないなら、こんなこと辞めて、もっと会費を下げるか、もっと重要度の高いことに使ってくれ、とは若手は強く感じると思います。ADRの前略なき拡大路線や、刑罰の哲学論争になる死刑廃止のシンポ等の運動、裁判官の再任検討委員会のアンケート、などはどこまで費用と人材を投入する価値があるのか、わかりません。
    ようはそうした厭戦気分が、若手にどんどん広まりつつあるということの想像力をつけてくれ、もう昔とは若手の状況は昔とは違うんだ、ということになると思います。

    あと、既得権云々で管財の挙げられてますが、これは裁判所か関与する以上、仕方ない部分後あると思います。複雑な案件、大型案件でしたら裁判所はやはり経験を積んだベテランに任せたいと当然思うでしょうし、それをペーペーの若手にも平等に配点しろ、という主張は難しいのではないでしょうか。

    No title

    >「人権も正義も大事だが、弁護士自身も豊かにならないと。法律相談の方を優先してもらって構わないよ!」
    「以前よりましになったじゃないか!」と言われればそうかもしれません。でも、こんな当たり前のことに感激しろと言われても無理です。恵まれた環境を当然のものとして「人権・正義」を語っていた先輩達を慕うようになれと言われても困ります。

    その先輩は慕って欲しくて、そのような発言をしている訳ではありません。
    「おまえらは大変だな、オレは逃げ切りだから関係ねえぜ、へっへーん」と言っているに過ぎません。

    優越感に浸りたいだけです。

    ところで、こういう奴らは、弁護士会の中枢に居て、裁判所から弁護士会経由で回ってくる美味しい仕事については、自分達が優先的にせしめています。

    前から思っているのですが、同じ会費を払っている以上、名簿順に会員全員に等しく配分されなければならないのではないでしょうか?

    もちろん、既得権益にしがみつくでしょうから、例えば、破産管財の場合などは、管財人候補者の名簿につき、一部の弁護士でたらい回しにしない、それに抵抗するなら、申立の時点で、債権者に配当してしまって、同時廃止で申立を行い、管財人の仕事自体をなくすぞ、というやり方があっても良いのかな、と思います。
    債権者に債権額に応じて按分配当してしまえば、否認権の行使もムリです。

    No title

    結局、日弁連のやっていることを要約すると
    ・弁護士の収益源を減らすこと(ADRの拡大などその典型)
    ・実働は若手に任せるものの、派閥のような組織があるところは知りませんが、通常は、その若手は借金まみれであることが多く、それに見合った経済的リターンを与えることはもはや不可能であること
    ・にもかかわらず、「公益」の名の下に、莫大な人的財的リソースを費消していること
    ・その結果、弁護士になるため・弁護士であり続けるためのコストを増やし続けること

    とにかく「公益」という言葉、最近では見ていて虫唾が走ります。
    中身を精査する必要があるでしょうね。

    確信犯的

    >「お金を出せない人からはお金を取らずに仕事をすれば、結局のところまわりまわって世間様が食べさせてくれる」~、そういうことを安易に言う弁護士がいなくなればいいなぁと

    大昔はともかく、いまそういうことを言ってる人は「安易に」ではなく、「確信犯的にわざと」言ってるのだと思いますよ。
    いわゆる成仏理論と同じです。司法改革の不当さを、精神論でごまかすために言ってるのでしょう。
    名目では「需要がいっぱいある」としながら、実際には弁護士の多くを貧困に追いやっている。その現実をごまかすための卑劣な発言では。

    No title

    少なくとも、人権活動とやらに邁進して、お金を出せない人からはお金を取らずに仕事をすれば、結局のところまわりまわって世間様が食べさせてくれる、というようなのは通用しないし、そんなのを信じてこれから弁護士を続けていく人たちは自分の家族を苦しめるか依頼者を苦しめることになるので、そういうことを安易に言う弁護士がいなくなればいいなぁと思います。

    No title

    これまでの先輩弁護士はこんな感じだったというのでしょうか?
    「人権と正義をまず考えないとダメだ。なに? 法律相談の時間と重なるから委員会に出席できないだって。それでも弁護士か!」
    それが、こんな風に言う弁護士も出てきたということですか?
    「人権も正義も大事だが、弁護士自身も豊かにならないと。法律相談の方を優先してもらって構わないよ!」
    「以前よりましになったじゃないか!」と言われればそうかもしれません。でも、こんな当たり前のことに感激しろと言われても無理です。恵まれた環境を当然のものとして「人権・正義」を語っていた先輩達を慕うようになれと言われても困ります。

    現状認識

    >後輩にかける言葉はこのようなもの(「お金を稼ぐことを考えなさい」)であるはずです。

    私も菅本さんの話は現状認識がかなりずれてると考えます。意図は十分理解できますけれど。
    いまは若手はもちろん中堅弁護士達も、生活するため・食費を得るために、必死にお金を稼ぐことを考えています。
    それでもなかなか上手くいかず、貧困にあえいでいるわけで。

    菅本さんが若手弁護士に対する善意で書き込みしてることはわかりますので、どうかもう少しだけ、彼らがいまどんな状況にあるかを想像して頂きたいと思います。

    No title

    もちろん,お金を稼ぐことを考えるというのは,会務を含めた無償の仕事,儲からない仕事を無理にやることはない,(「稼ぐことを考えて」採算のとれる事件に時間を割きなさい)また,報酬はきちんと取りなさいという意味なのですが。
    その前のコメントでは,若手弁護士が会務に励まされることへの不満などが書いてあったのですが,流れが変わってしまったようです。

    No title

    弁護士研修ノートとかいう本が成仏のためのありがたい教えを説いているようです。
    この本を読めば極楽浄土に行けるそうです。
    所詮「人権」派弁護士の発想なんてそんなもんです。
    自分が幸せでないと他人も幸せに出来ませんよ。
    弁護士の幸せは極楽浄土の中にこそあるのです。
    他人にとって必要な存在であれば、あなたの窮地を他人が見捨てるはずはありません。
    さあ、今日から托鉢をもって街頭に立ちましょう。

    No title

    お金儲けというのは、考えれば出来るものなんでしょうか? 稼ぎたい、でもどうすればお金を稼げるのか分からないから、みんな困っているのでは?
    お金を稼げないで困っている若手が、「お金を稼ぐことを考えなさい」というアドバイスを先輩からもらうと、感激のあまり、世代間の断絶が解消しますかね?

    若手弁護士に本当にかけるべき言葉

    私はすでに有名になってしまったように,一時期かなり困窮していたのですが,あるとき先輩弁護士から

    菅本さん,弁護士は自分が幸せでないと,人を助けることはできませんよ。
    だから自分が豊かでないといけないんです。
    菅本さんも豊かにならなきゃいけないんです。だからお金を稼ぐことを考えなさい。

    という趣旨のことを言われました。
    その先輩弁護士は,お金儲けだけ考えていたら絶対にできないようなことをずっとやってこられた方で,お金儲けに走るような人ではありません。

    本当に,今の若手弁護士の状況を理解して,これから先も弁護士自治を守ろうと考え,弁護士会内断絶を憂うなら,後輩にかける言葉はこのようなものであるはずです。

    ADR委員会も

    若手を事前調査(書記官的役割)に無償で協力させて、仲裁の先生にも手当はわずかが支払われるだけ。それも、もともと裁判に向かない訴額が低い事案が対象だから、結局は会からの補助が資金のあて。

    結局やればやるほど赤字にしかならないのに、その案件を増やせ、って言ってる日弁は業務対策をどう考えているのでしょうかね。赤字分野が増えても業務拡大にはならないし、他士業対策上やるとしても積極的に展開して、若手を借り出すのは意味がわからん。

    毎年やってる地方でのその意見交換って、そのあたりちゃんと考えているのかな。
    今年は松山で開催したというが、次は九州、沖縄でやるというが、開催にかかる費用も
    それに駆り出される若手に説明がつくんですかね。聞いたことありませんが。

    No title

    もう溝は二度と埋まることはないでしょうね。
    それにしても、死刑制度を考えるPTってバカじゃねえの?
    勝手に考えてろよ。会費使うな。

    ツイートの対象

    大御所ではありません。
    まだ40代の弁護士です。
    大御所批判につながると趣旨が違ってしまう。
    一番言いたいことは自分の正義を他者に求めることに対する違和感です。

    管理人のみ閲覧できます

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    No title

    うちの単位会にも「若手が」実働を担当して、シンポジウムだ集会だ、とかほざいている間抜けが居ます。

    私はもはや若手とは呼ばれないので、会務にも出来るだけ出ないようにしています。
    若手じゃないから会務なんてしなくても良いんです。

    逃げ切りのクソジジイが偉そうにふんぞりかえって、弁護士というのは社会正義のために行動するもんだ、などとほざいたら「てめえがやれ」と言い返すようにしています。
    もちろん、言葉遣いだけは丁寧にしますが。

    No title

    採算度外視の業務なり、活動をvoluntaryに行うのは構わないでしょうし、それに対する恩典を用いて、そのincentiveを誘発することは良いと思います。
    しかし、採算度外視である以上、成仏理論であるまいし、voluntaryに留まるべきであって、その業務なり活動なりを、システムにbuilt-inすることが、自然の摂理に反する行為であって、様々な矛盾を噴出させているように思います。

    無理なことを無理に押し付けるシステムは、いずれ破綻する。
    これまで成り立ってきたのは、他の日本のシステムと同様、要するに継続した経済成長が経済的矛盾を覆い隠していただだけであって、ゼロ成長ないしマイナス成長下の経済においては、高度成長下の利益分配から、負の分配、コストの分配の現実を見た仕組みに改めなければ、今の瞬間の矛盾を押し殺したとしても、何れはそのゆがみが何倍にもなって崩壊するでしょう。

    昔は良かった、の郷愁も良いですが、永続性のあるシステムにする必要があることを、もっと真剣に論じるべきであろうかと。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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