多数意見が伝えられない意味

     どう結論に反映されるか以前に、その扱い方で、あちらこちらから怒りと落胆の声が聞かれた法曹養成制度検討会議「中間的取りまとめ」に対するハブリック・コメント。事務局提出資料として同会議に配布され、ネット上で公開された「意見の概要」は、端的にいえば、どのような意見がどのくらい集まったか、つまりは、どういう問題意識でより強く捉えられているかが分からない、意見の濃淡が分からない形の発表だったからです。

     いち早く、この問題を取り上げた6月6日付け札幌弁護士会会長の声明は、「意見の概要」が、寄せられた意見の総数(3119通)と、「中間的とりまとめ」の各項目ごとの「この項目に関する意見数」「意見の例」「理由の例」を並列的に列挙するだけで、どのような意見がどの程度の数寄せられたのかが、全く明らかにされていないとし、①「法曹養成課程における経済的支援」では、2421通(意見全体の約78%)もの意見が寄せられているにもかかわらず、「司法修習生に対する経済的支援策については、修習資金の給費制(一部給費制を含む)の実現を求める意見があった一方、貸与制はやむを得ないが、修習専念義務の緩和を求めるものなどが見られた」と要約されるにとどまっている②「意見の例」においても、「給費制復活」「貸与制維持」「貸与制を維持するのであれば修習専念義務を緩和」を並列的に列挙し、それぞれの「理由の例」を幾つか挙げるのみである――点を挙げたうえで、「恣意的な公開方法である」と断じました。

     これが、当局の単なる対応ミスでなく、明らかに方向性を持った「結論」に向けられたものであるということです。前記落胆と怒りの声も、「儀式」ともいえる形ばかりの意見聴取の現実と、結論への「反映」の意思なき実体を読みとったものといえます。

     現実的には、この結果が全面的に公開されると考えて、意見を寄せた人は少なくないはずです。そもそも、このパブコメの「意見公募要領」では、ご丁寧に意見の「原則公表」と、その際の「氏名又は法人名についても併せて公表」することの了承まで求めていたのですから、当然といえば当然です。

     検討会議での、孤軍奮闘ぶりに期待と称賛の声が集まった委員の和田吉弘弁護士が、予定では残すところ6月26日の1回だけとなった同会議の、第15回(同月19日)に提出した「今後に向けての意見」の中で、この問題を取り上げています。

     氏名の公開もあるかのようにイメージさせて「原則公表させていただき……」としていた以上、その後、例外的に全面公開しないことにしたというのであれば、その理由を公にするのが信義則上も当然。組織的な運動によって意見が偏っていると考えて、それをそのまま表示するのは妥当でないというような考慮もあったのかもしれないが、組織的な運動をする自由はどのような意見の側にも存在するのであるから、公平を欠くとはいえないし、否定的に考え方があるとしても、偏りかどうかは評価する側が考慮に入れればいい。パブコメの数が予想以上に多数に上り当面対応できる事務量を超えたということもあるかもしれないが、そのことは国民の関心がとくに高かったとしてむしろ喜ぶべきで、できる限り人手を確保して公開する作業をすべきだ――。

     まさしく当然過ぎるご意見だと思います。当然であればあるほど、今回の対応が意図を持っていることをうかがわせるというべきです。ただ、和田弁護士は、さらにこの対応にこそ、読みとるべき意味があることを指摘しています。

      「この場を借りて、『中間的取りまとめ』の内容に批判的なパブリックコメントを提出された方々に申し上げたいのは、本検討会議が上記の『意見の概要』のような形でのまとめにせざるを得なかったこと自体が一定の意味を持つ、ということである」
      「心ある政治家や、次の検討体制における心あるメンバーは、今回のパブリックコメントの意味を正しく理解するであろうし、また、おそらく、事務局の方々ないし法務省幹部の方々も、『中間的取りまとめ』の内容に対してこれほど多数の批判的な意見が寄せられたことに改めて衝撃を受けているように私には思われる」
      「私は、本検討会議では残念ながら力及ばず、最終的な取りまとめの内容にはほとんど寄与することができないことになりそうであるが、他方で、法曹志願者の激減等という厳しい現実を前にして、抜本的な改革のための歯車は確実に動き始めたようにも感じている」

     先日、和田弁護士にお目にかかり、直接お話しを聞く機会を得て、改めて、この会議に臨んできた自身の役割に対する、同弁護士の強い自覚と使命感に感銘を覚えましたが、そうした彼であればこそ示された勇気ある意見にとれます。法科大学院修了の司法試験受験資格要件化撤廃も、法科大学院制度廃止も、給費制復活も、司法試験受験回数制限撤廃も、多数の意見を得ながら、それが最終取りまとめに反映されない状況が見えてきているなかで、彼はまた、この議論に大きな意味のある一言を残したというべきです。


    ただいま、「法曹養成制度検討会議の『中間的取りまとめ』」についてもご意見募集中!
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    No title

    自称「市民運動家」弁護士など無視したら良いのです。
    過払いバブルに稼いだ金で死ぬまで安泰なのかもしれませんが、この先彼らが何を吼えようと一切無視してやります。

    No title

    一連の司法制度改革で,一番割を食っているというか壊滅的な打撃を受けたのは,BtoCで食ってきた「市民運動家」たちだと思うのですが,どうなんでしょうか?
    武士は食わねど高楊枝を決め込んでいるのかもしれませんが・・・,前途は真っ暗でしょう。
    本音を語らずして,何か打開策でもあるのでしょうか?

    No title

    宇都宮弁護士の一派は「市民運動」しかできないのですから、自らの存在意義を示すためには死ぬまで運動は辞めないでしょう。
    ただ、法曹養成会議がパブリックコメントを公表しないのは、法律家を口にする資格がないほど、自分達が独善的で、不都合な意見は握りつぶせると勘違いしているからで、宇都宮弁護士らの自己満足的な運動に矛先を向けるのは違うと思います。
    法曹養成会議がクソなのであって、そのこと自体は直視されなければならない現実です。

    怒りと落胆

    実際のところ、「組織的な運動によって意見が偏っていて、それをそのまま表示するのは妥当でない」んでしょう。(経済的支援の意見ばかりって一体・・・)

    会議の公開がされなかったのも、結局ビギナーズが青シャツ着て押し寄せ、圧力かけるだけだからでしょう。

    KYすぎて気づいてないでしょうけど、結局彼らがそういう状態に追い込んでるに等しい。おかげで普通の人が会議の傍聴もできず、パブコメを通じてたくさんの人が法曹養成についてつづった文章をみなが表明し、みる機会まで失ってしまった。

    いい加減、宇都宮一派だか自由法曹団だかによる「市民運動」はやめてほしい。

    No title

    法曹養成会議の座長以下擁護派がどれだけ下らない存在かを明らかにしていただいたということで、多数意見を無視して、私腹を肥やすことに一生懸命であるということを何よりも雄弁に語る事実であったということです。
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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