扱いが難しい弁護士の「評判」

      「○○弁護士を知っていますか」。この仕事をしていると、いまだに弁護士を探している市民から、こうした質問を度々受けます。こう尋ねられても、既に、全国に3万人以上いる弁護士のなかで、私がたまたまその人物を知っている方が、もはや奇跡に近いような話ではありますが、とにかく少しでも情報を取りたい、評判を知りたいという市民の気持ちの表れです。

     この気持ちのなかには、市民側にある、弁護士会内の評判ということに対する、ある誤解を見ることもできます。そもそも弁護士間の評判とは、非常に限定的で、市民が考えるほどの広がりを持っていません。私が把握しているのは、それこそ取材を通してみてきた弁護士会内外の活動や、政策的な発言、さらにはそれらに関連した弁護士に対する評判がほとんどであり、依頼者が期待するような訴訟実務での手腕や依頼者への対応については、私自身が当事者でない以上、ほとんどは裏の取れない噂であり、しかもそれは限定的な範囲での話です。

     さらに、弁護士同士についても、依頼者が考えているほど、この点で、弁護士が他の弁護士のことを把握しているわけではありません。小さな弁護士会になればなるほど、もちろん会内の噂も広がりやすく、また、会員同士が実際に仕事でかかわり、目にする機会もあるとは思います。そうでなければ、弁護士にしても、同じ事務所にいたとか、仕事でなんらかのかかわりがあったとかという、言ってみればご縁がなければ、所詮は噂の範囲です。

     弁護士は、意外と同業者同士が、その依頼者対応を含めた、仕事の質に対して、評価し合うようなものがない世界であるということを、実は弁護士自身の口から聞くことがよくあります。そもそも弁護士の仕事そのものが、持ち込まれた事案をよく分からなければ、他の弁護士が簡単に評価できるものではないという、基本的な性格があります。同業者にしても、前記したような市民の評判を聞く質問に対して、たとえそれが知っている弁護士であり、なんらかの評判を耳にしていたとしても、それを市民に伝えることができないという意識もあるのです。

     ただ、最近、気付くことは、やはり、依頼者・市民は、こうした人伝で評判を求める傾向にまた傾き出しているようにとれる点です。ネットの普及によって、そこで書かれる、いわゆる「口コミ」。市民が簡単に評判をつかめるソースとして、弁護士についてもまた、そこに期待する向きがなかったわけではありません。ただ、昨今、その信用性に対する疑念は、急激に高まっています。匿名でなされるコメントの無責任さ、匿名市民を装った同業者によるプラスにもマイナスにも誘導される評価。つまりは、実名で、それなりにコメントする責任が発生するような人間の評価でなければ、あてにならないということがはっきりしてきた、いわば、ネット「口コミ」の化けの皮がはがれてきたということです。

     特に、弁護士の仕事については、前記したように本質的に、その対応の適不適の評価は、事案によって異なるわけで、「口コミ」の評価で依頼者が流れることの危険性はつとに弁護士の中でもいわれてきました。対応において、口のきき方や態度が悪い、とか、報告・連絡に対する姿勢といった点について、それが事実であり、評価に加える意味がある場合もあるとは思いますが、その信用性もさることながら、それが少なくとも依頼者が期待する、自らが望む解決に向けて、適切かつ妥当で、良心的な対応をしてくれる弁護士にたどりつくための有力な材料になるのかといわれれば、最終的に「あてにしない方がいい」と言わざるを得ないのが現実なのです。

     このことは、広告を派手に、また巧みに打ち、依頼者を誘因する弁護士の広告に対して、同業者のなかにある「懸念」とも、通底しているように見えます。「評判」の自己申告ともいえるような広告は、本当に依頼者を適切に導いているのか。依頼者が自己責任として、本当に負いきれるのか。それこそ、他の商業活動と同様な扱いであっても、全く問題がないのか。さらにいえば、常に責任回避への弁明も容易されるだろう弁護士にあって、どこまで市民は現実的にその責任を追及できるのか――。同業者の「懸念」を伴う広告に対する目線には、「できる者」に対する「できない者」の嫉妬では片づけられないものがあるのです。

     弁護士ブログのなかで、こんな指摘もされていました。

      「時々、相談者から、相手方に、テレビにも出てるようなすごい弁護士が付いているんですがとか、何十人、何百人も弁護士がいるような大きな事務所の弁護士が付いているんですが・・・とかなり切羽詰まった様子の話も聞きますが、率直に言って、それは、関係ない。テレビに出てようが、大きな事務所にいようが、できる人はできるし、できない人はできない」
      「また、一般の感覚として、権威のある弁護士がでてくると、特に若手の弁護士などは、遠慮するんじゃないかという印象があるという話も聞きますが、それもないと思います。私も、どんな大御所先生がでてきた時でも、恩師の事務所に所属する弁護士が出てきた時でも、それはそれ、これはこれで、容赦なしでした」(「弁護士吉成安友のブログ」) 

     依頼者・市民の感覚という視点から、弁護士について、基本的に伝えておかなければならないことがあるように思えます。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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