「ハイエナ弁護士」という未来

     弁護士という存在に、「ハイエナ」という言葉が被せられるのを、いまやよく目にします。かつて日本でそれが使われるのは、訴訟社会アメリカの弁護士たちの話と相場は決まっていましたが、特に「過払いバブル」以降、ネットやメディアで、この表現が日本の弁護士たちに被せられることが増えたような印象があります。

     弁護士の増員による経済環境の激変、「生き残り」をかけた競争の激化、そしてその中での倫理の低下。淘汰が良質化をもたらす、という「改革」を肯定する楽観論とはうらはらに、その負の影響への懸念は、確実に広がりつつあり、それはかつて悪い見本のように語られていたアメリカの姿に近づきつつある恐れのようにもみることができます。「ハイエナ」という言葉の台頭は、そのことを象徴しているように思えるのです(「『ビジネス』にも『ハイエナ』にも見える弁護士像」 「弁護士が『うさん臭い』社会」)

     利に群がる、利を漁る、さらに他人の利のおこぼれをむさぼるような存在や行為に被せられる、ネガティブなこの表現が、弁護士に使われる時、それは非常にグロテスクな効果を発揮します。多くの場合、正義を掲げている弁護士が、自らの利益のために「金に群がる姿」に用いられるわけですが、あえてもう一つ付け加えれば、それが同時に「不幸に群がる姿」でもあるところに、その効果の理由があるように思います。

     最近の弁護士ブログで、この言葉が使われている興味深いエントリーを目にしました。題して「ハイエナ弁護士入門」(岩月浩二弁護士「街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋」)。

     詳しくはお読み頂ければと思いますが、このなかで岩月弁護士は、品川正治・元日本火災会長が目の当たりにした1960年代の弁護士社会・訴訟社会アメリカの弁護士、さらにその数が増えている現在の同国の一大産業化している弁護士の姿とともに、自分の利益を依頼者の利益に優先させ、依頼者の信頼が著しく低いその現実を紹介し、それが弁護士増員の目指す社会だ、と喝破しています。

     そのうえで、彼は日本の弁護士に関して、次のような未来を予言しています。

      「過剰弁護士はいつでもハイエナ化するし、TPPという後ろ盾を得ることになれば、米国の法律産業界が子飼いの日本法弁護士に、旨い汁を吸わせなければならないから、必ずクラスアクションの整備を求めてくるに違いない」
      「アメリカの弁護士(彼らも外国投資家になりうる)にとっては、閉鎖的な日本の裁判は、期待利益を阻害するものに他ならないから、クラスアクションが存在しないことを理由として、国際裁判所へ日本政府を提訴することが可能である」
      「過剰な弁護士にとっては、アメリカの後ろ盾を得て、大企業を狙い打ちにできるクラスアクション制度は、またとない慈雨ともなろうというものである」

     日本の弁護士過剰とTPP、そしてアメリカの弁護士が、日本の弁護士の「ハイエナ」化を加速する、もしくは「ハイエナ弁護士」の生息する場を与えるような話です。そのことに財界は気付いているのか、と。

     ただ、このエントリーがもう一つ訴えかけているのは、日本の弁護士に対してであるように読めます。「入門」というタイトルは、冒頭、前記品川氏が見聞したといたアメリカの実例をもとに、「ハイエナ」弁護士としての「正しい対応」を問い掛けた、ある種の皮肉ではありますが、要は、ここまでエグイことをやれるのか、あるいは、ともすれば日本の同業者がこうなるのを弁護士としてどう思うのかということを、問い掛けているようにもとれます。つまり、弁護士増員がもたらす「ハイエナ」化と、その先に待っているのがどういう社会であるのかを、財界も弁護士・会も本当に分かっているのか、ということをこのブログ氏はいわんとしているようにも読めるのです。

     もちろん、多くの国民も、まだそれは分かっていないはずです。食えなくなれば、「ハイエナ」化するというようなことを弁護士が言うと、それをすかさず「脅し」という人がいます。ただ、逆にいくら「それは認められない」「筋違いだ」といったところで、それによってそれが止まるわけではありません。たとえそういう弁護士が、わが国にいたとしても、この社会を根本から変えてしまほどに跋扈しないために、あるいは、そのための弁護士の良心がこの国に残るために、今、何を求めるべきなのか。それを考えなくてはなりません。


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    確かにこの日本経済を駄目にしたのはやつらハイエナ弁護士である。彼らは、利権に群がり弱者救済という詭弁を使い、その弱者から自己の為に暴利を貪り放題で、何もそのあとには生まない。雇用も消費も生まず私利私欲に走り、日本経済を駄目にした!消費者金融業界を私利私欲の為に潰した。そして、弱者から暴利を貪り、何も生まず日本経済は荒廃した。彼らの詭弁に騙されず冷静な目で、先を見据えないと未来はないと思う。

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    クラスアクションの意味が分かっていない方が多いと思うので、念のため
    http://americanlegalsysteminfo.blogspot.com/2012/12/2_18.html
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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