「不祥事」に対する弁護士会「責任」の伝わり方

     弁護士の不祥事に対する日弁連・弁護士会の姿勢には、誤解される余地があるように思えます。以前、企業の役員が自社の欠陥商品に対して行うような、弁護士会の謝罪会見が一般にどうとられるのかについては書きましたが(「弁護士会謝罪会見の印象」)、要は、彼らがどういう「責任」を負い、謝罪したり、対策を掲げたりしている(せざるを得ない)のか、という点です。

     増員による弁護士の質の低下がいわれていますが、弁護士会が負っているのは、基本的には、そうした人間を弁護士にした責任ではなく、弁護士として放置した責任ということができます。資格ということを考えれば、司法試験も法曹養成も、協力関係はともかく、弁護士会が完全に主導しているわけではなく、資格者の登録を受け付けただけ、ということもできます。責任を負う部分は、基本的には、その後。弁護士としてふさわしくない人間を弁護士として活動させているということに対して、自主懲戒権を持つ弁護士自治の立場から、責任を負っている形になります。

     つまりは、事後的なものだということです。それに対してできることは、大きく分ければ、二つしかありません。一つは、懲戒による、いわば排除と抑止。いわば、「やらかした」人間を弁護士として活動させないこと、もしくは懲罰によって二度とさせないようにすること。そして、もう一つは、「やらかさない」「やらかしたくてもできない」環境を作ること、です。

     問題は、これらをどこまで実効たらしめたならば、弁護士会として「責任」を果たしてことになるのかが、よく分からない、というよりも、そもそも分からないものではないのか、という点にあります。

     前者については、しばしば「身内のかばい合い」という言葉で、懲戒そのものの「甘さ」も指摘されるところですが、そもそもが事後的な措置である以上、現実的には被害の拡大防止にはなっても、発生はしてしまう。数が増えるほどに発生が予想される問題弁護士を、いわば片っ端から排除するしかありません。それが、果たして抑止として機能するのか、しているのか、それについては弁護士のなかにも首をかしげる人は少なくありません。ただ、弁護士自治がある以上、何らかの対策を講じることそのものが、「責任」として自覚されていることなのです。

     後者は、まさに今、成年後見人に選任された弁護士の預かり金横領対策で、日弁連が制定を準備している新規程などがそれに当たります。弁護士の口座とは別に依頼者の預かり金口座を開設して管理し、帳簿に記録することや、管理に疑いを持たれた弁護士の口座を弁護士会が調査できる権限を持つことを定めた規程案が、来月の定期総会に諮られる予定です。違反者を懲戒対象とするという意味では、前者の抑止力とも関係してきます。

     こうした形で会員を縛る制度は、一定の効果があるかもしれません。しかし、人間として当たり前過ぎる職業倫理が掲げられるのと同様、こうした制度が作られるほどに、一面、弁護士がいかに自主的に抑制できない人間たちなのか、ということが社会に伝わることになり、さらに弁護士の信用は低下するとの見方もできます。もっとも、弁護士の現実に対する注意を呼びかけるという別の効果もあるかもしれません。

     一方で、根本的な倫理研修や今、失われている若手のOJT確保策も、この後者の環境整備に当たるとみることもできますが、これについても前者同様、弁護士会が「責任」として負いきれるほど、効果が追いつくのか、これらもやはり「何らか」をやらざるを得ない弁護士会の立場に由来するのではないか、という見方もできてしまいます。

     こうしてみてくると、弁護士不祥事に対して、弁護士会が謝罪するような立場だと受けとめられれば、当然に大衆が考える全面的な「責任」の負い方とは違う、いわば弁護士会の努力姿勢、「できるだけ」という注釈が付くような「責任」の負い方の現実があるように見えます。前記エントリーで触れましたが、2010年の元和歌山弁護士会会長逮捕に関する記者会見で、不正の経緯について記者から問い詰められた当時の会長が、そうした説明義務への期待に対して、独立した弁護士という仕事にあって弁護士会の介入に限界があることをはっきりと述べました。それこそ、謝罪する立場としての「責任」を考えれば、およそ理解されないものかもしれませんが、これがむしろ現実だと思います。

     ただし、一つ付け加えておかなければなないことがあります。弁護士会の「責任」は、基本的に資格を与えられた以降のものと書きましたが、「改革」ということについていえば、話は違ってきます。現在の法科大学院を中核とする法曹養成や、依然、増員基調の政策を根本的に支持し、継続しようとするのであれば、もちろん、その結果としての、資格付与の適不適と、その未来に対して、弁護士会は「責任」を負ったということになります。

     今、起きている不祥事に対しての弁護士会の姿勢表明が、その「責任」をどのような形で社会に伝えることになっているのかということと同時に、「改革」に対する姿勢表明が、将来に向ってどういう「責任」を負うことを伝えているのか、弁護士会関係者は、そのことを考える必要があるように思えます。


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    小林さんへ2

    やはり、人格の問題が一番じゃないかな。
    ちゃんとした人格の依頼者が正当な請求をするならば、相手が弁護士だったほうが回収可能性高いわ職場は明確だわ懲戒処分もあるわで、むしろやりやすいと思う。
    ましてや何年も前から弁護士が依頼者選べない時代にとっくになってるし。

    笑ったのは、
    >相手方は同僚弁護士が多数名をつらねて弁護するわけです
    との箇所。
    弁護士名が多数ある、で? 
    小林さんが弁護士名がたくさんあると恐怖感じるなら、自分もたくさん弁護士を雇うか、何十人もいる事務所に依頼すればいいだけ。
    いや俺はそんなことに意味ないと思うけど、小林さんには重要みたいだからね。

    これは、「弁護士と契約した相手方だけは赤の他人から賠償取れる」の理由にはならないよ。これで理由を説明したと思ってるあたりからして、、

    No title

    >弁護士の監督?

    何故,そんな誰もしたくない仕事を他人(弁護士)にやってもらおうとするのでしょうか?
    本人が自分でやればいいですよ。
    自分の権利なのだし,自分があえてやりたいのだから。
    どうしても他人にやってもらいたいなら,資本主義の経済原理が妥当するだけの話ですよ。
    頼まれた仕事の難易度とそれに見合うだけの報酬とのバランスです。

    そもそも,世の中にかわいそうな人なんてゴマンといますから。

    >損害賠償すべき事案と判定したら弁護士会が建替える

    国に払ってもらえば?
    そのような弁護士を司法試験にて合格判定したのは国なのだから。
    ただ,国が払うって,結局,それって税金なんだけどね。

    弁護士会が建替えるって,弁護士会費から取るという発想かしら?
    でも,その会費は,結局,とどのつまり,依頼者から出ているんだけどね。
    故に,そんな建替えは,依頼者が本来払わなくてもいい余計なものを支払うことになるだけの話なのだけれど,理解してもらえるだろうか?(ちょっと難しいかな?)



    弁護士の監督?

    名無しでコメントされている方が、弁護士会が弁護士を監督していることをご存じないかもしれませんので、弁護士法を抜粋掲載しておきます。

    第五章弁護士会
    (目的及び法人格)
    第三十一条弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。

    理由云々いわれている点ですが、訴訟のような法律事務は原則として弁護士しか扱えない中で、弁護士から被害を受けた依頼者が法的救済を受けにくいということについては現に多数事例が存在します。

    「弁護士と闘う」のサイトでもみればよいと思いますが、ヤクザがらみの債権回収の案件は受けても?、同じ単位弁護士会の弁護士相手の訴訟案件は受けにくいのか、せいぜいが裏方での書類作成等にとどまったりします。弁護士をみつけられず、本人訴訟を起こしても、相手方は同僚弁護士が多数名をつらねて弁護するわけです。(日本では弁護士会だけは監督官庁が存在しないため、行政に是正を求めることもできません。)

    従って、弁護士を雇って民事訴訟で救済をはかればよい他業界の事案と異なり、弁護士会において、刑事事件のように弁護士をつけられない被告人には弁護士をつける、損害賠償すべき事案と判定したら弁護士会が建替えるといった十分な救済制度を設けなければ、被害者は救われません。

    ちなみに、依頼者の人間性等に問題がある場合もなくはないと思いますが、それで切り捨ててよい問題ではありません。それをいえば、刑事被告人のほうがよほど問題のある人が多いはずです。人間性ばかりをあげつらう論法は論者の人間性を疑わせるのでやめたほうがよいと思います。

    小林さんへ

    >弁護士自治は有害無益であると国民にみなされてしまう日も近い

    国民はそもそも、「べんごしじち」なぞ知りません。ましてやそれが有害かどうかの判定までする日などは来ないか、来たとしてもかなり遠い日でしょう。
    もし国民がこの書き込みを見たら、小林さんてちょっと変わった人だねと思うでしょう。

    >懲戒請求や司法救済を求めようにも、他の弁護士が引き受けてくれない

    いや普通に引き受けてると思いますが。
    ましてや現在は目先のはした金のために、人間的にアレな依頼者の要望にも従う弁護士なんていくらでもいますよ。
    それでも引き受けてもらえない理由は、事件の性質ではなく、あまりに依頼希望者の人間性が変わってるからでは。

    >迅速な被害者救済のため、監督責任を有する弁護士会が被害者に建替え払いをすべきです

    弁護士会に監督責任がある? そうなの? 知らなかった。
    しかし、なぜこの世の無数の契約の中で、弁護士と契約した者だけが、赤の他人である他の弁護士達から賠償金巻き上げる権利を有すべきなのでしょうか?
    ここの理由が肝心だと思いますが、小林さんはなぜか理由を付してない。

    小林さんがどういう立場か分かりませんが、もし弁護士さんなら、とっととご自身の私財で「迅速な被害者救済」してあげればいいのでは。

    もし弁護士でないのであれば、公平性を重視して、依頼者側でも依頼者から損失被った弁護士に賠償責任を負担してあげる団体を創られては。
    そうすれば小林さんが弁護士から有益無害とみなしてもらえる日も近いでしょう。

    責任の取り方

     弁護士による横領等の被害を受け、被害者が弁護士会への懲戒請求や司法救済を求めようにも、他の弁護士が引き受けてくれないという、法の支配を社会の隅々までいきわたらせるという改革の理念に全く反する我が国の現状。

     こうした刑事被告人・被疑者以下の人権状況を救済するために、若手弁護士の活動領域拡大の一環として、刑事事件の被疑者の当番弁護士制度並みに、弁護士からの被害者に係る当番弁護士制度を弁護士会は設ければよいと思います。

     被害者が要した訴訟費用や損害賠償金については、加害弁護士(元弁護士?)に責任があるから弁護士会は何もしないというのではなく、迅速な被害者救済のため、監督責任を有する弁護士会が被害者に建替え払いをすべきです。イギリスでは第三者機関が弁護士からの徴収で同様のことを既に行っています。

     懲戒や訴訟は事後的だから効果が限定的? すぐに懲戒を行わず、更なる被害を招いている現在の懲戒制度の在り方を改めて初めてそういえるのではないでしょうか。まずやれることを自らやらないと、非行弁護士が東京地検特捜部に「懲戒」されることが常態化し、弁護士自治はむしろ社会に有害無益であると国民にみなされてしまう日も近いでしょう。

     
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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