弁護士「オーラ」と「改革」の関係

     今でも時々、古い弁護士のことを知る人と話していると、当時の弁護士が醸し出していた雰囲気のことが話題になり、多くの場合、「今、それが失われている」という文脈のなかで語られることになります。いわば、弁護士の「オーラ」です。以前にも、大衆・市民の信頼につながるような気高さが、弁護士のオーラとして、あるいは法曹の「オーラ」として存在していた時代が確かにあったことを取り上げ、そこでは「孤高」とも表現できそうな、「独立」した存在ということとの関係について書きました(「消えゆく『法曹のオーラ』」)。

     ただ、弁護士との話を含めて、前記文脈のなかで登場する、その「オーラ」の解釈は、大まかにいくつかに分類することもできるように思います。一つは、「聖職」イメージ的なものとの関係をいうもの。人権の担い手、民主主義の守り手、あるいは「護民官」的存在という弁護士もいますが、そうした存在感を弁護士が発し、それを社会が受けとめていたようにいうものです。

     しかし、これについては弁護士の中からも、「とっくにない」という言葉が出てきそうです。もちろん今でも、そうした意識のなかで活動している人もいますが、多くの弁護士の自覚としても既に「聖職者モデル」よりも、法的サービスの提供者としての「ビジネスモデル」に目が向いていますし、大衆の目にも「とっくに」後者の存在として映っていることは、弁護士自身が自覚していることです。さらに、もともと前者は一種の建て前という人もいますし、一方で、あくまで弁護士はこの両者を兼ね備えなければいけない、という人もいます。

     もう一つの見方として聞かれるのは、「オーラ」は、そもそもが弁護士という仕事の希少性にあったのではないか、というものです。つまり、社会のなかで、特殊で数が少ない仕事。貴重品という存在は、ある意味、エリートという自覚とそうした目線で作られていたようにも見えなくありません。

     もし、そうだとすれば、少なくとも司法改革のベクトルは、これを破壊する方向だったというべきです。数を増やし、「どこでも弁護士」の社会を作ろうという「改革」は、弁護士の希少性は社会にとってのマイナスととらえるところからスタートしたといってもいいものだからです。「改革」を推進する弁護士側も、本音はともかく、表向きの自覚としては、「貴重品」から「日常品」になるんだというものでした。一方で、エリートであるという大衆の目線も、「改革」の大量生産によって大分変わってきている印象は、確かにあります。

     もっとシンプルな意見もあります。この「オーラ」は、専門家としての「頼りがい」のようなものという意見です。法的問題に直面した市民が、助けてもらうことができる、特殊訓練を受けた資格者。消防士や救助隊の頼もしさと同じということになります。弁護士の自覚のなかにも、こうしたものは当然あったと思いますし、この「改革」のなかでも、「頼れる存在」ということは目標のように散々言われてきた印象があります。

     ただ、もしこれが消えゆく「オーラ」につながっているとすれば、それはやはり「質」という問題にかかわっているということになります。弁護士が能力面においても、倫理面においても、「質」が低下すれば、もはや大衆にとって、その不信感とともに、弁護士は頼れる存在ではなくなります。今の「改革」がもたらした激増政策の影響。弁護士の修養期間を奪い、経済的窮状となりふりかまわぬ競争をもたらそうとしている「改革」が、この「質」という面においてマイナスでしかないのか、それともやがてプラスに転化するのか。まさに「改革」の評価として、意見が分かれているところです。

     弁護士の「オーラ」が、こうしたことで語り尽くせるのかどうかは分かりません。一番目や二番目の見方に立てば、あるいは「そんなものはなくなればいい」で片付けられてしまうかもしれません。ただ、こうしてみると、「改革」の帰趨によっては、どうもそれが、消えゆく「オーラ」の決定打になるようには思います。この兆候が、果たしていいことなのか、悪いことなのかも、「改革」の評価とつなげて考えてみることができそうです。


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    弁護士のオーラ

    考えてみましたが、専門家としての頼りがいというのが、一番大きな要因のような気がします。依頼者から見ての話しなので、弁護士の側からはわかりませんが、こういうオーラは身につけたいものだと思います。ただ、現行制度では、それが求められているようには思えないですね。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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