弁護士に関する苦情(4)「見通しが立たない」

     弁護士に頼んだのはいいが、「はっきり先の見通しを示してくれない」といった話を聞くことがあります。

     現段階で当事者から聞いた情報だけでは、いかに弁護士といえども、事案処理の方向性を示せないという場合も考えられます。とりわけ、当事者の関心は勝てるか勝てないかに行きがちですが、正直弁護士として「何とも言えない」場合もあれば、ここで慎重な意見を述べておかなければ、のちのち依頼者の期待を裏切るといった判断が働いている場合もあります。

     ただ、仮にそうだとして、前記のような不満が出るということは、その事情そのものを弁護士がちゃんと伝えきれていないことになります。弁護士のコミュニケーション能力の問題が指摘されていますが、以前にも書いたように、弁護士と市民のやりとりの話をいろいろ聞いてみると、言葉の使い方ひとつで伝わるものも伝わらず、関係もアウトというものが結構みられます。

     やはり、この場合、「なぜ見通しが立たないのか」を弁護士側が丁寧に伝えなければなりません。

     問題は、弁護士の怠慢もしくは能力で、「見通しが立たない」という場合です。

     怠慢というのは、要するに見通しがある程度立つはずなのにもかかわらず、やるべきことをやらないために「立たない」ということです。

     事件の見通しというのは、ある意味、情報の集積に基づくものです。同種の事案、判例を出来るだけ細かく調べ、比較することで、方向性が見えてくるものです。その調査、勉強を怠れば、当然、立つ見通しも立ちません。

     また、金銭的にどのくらいのお金がかかるかも、依頼者の関心が高いところですが、これも基本的には、見積もりは立つはずのものです。近年、弁護士報酬については、ホームページや広告などでも、弁護士側が積極的に分かりやすく提示することを心がける方向になってきているだけに、この点について良心的に対応しないのは、怠慢以前の弁護士の心得違いといわれてもしようがありません。

     能力ということになると、もはやどうにもなりません。経験ということもありますが、弁護士としての法的な判断を合せた、状況判断ができない、ということになります。

     あえて見通しについて慎重な言い方になる弁護士の場合を前記しましたが、それが能力的な自信のなさからくるのであれば、それはそれで依頼者としては困ります。

     実はこの弁護士としての、状況判断を含め、事件の全体像をつかみ、時に仮説も立て、見通しを提示することは、やはり訓練によるものだという人もいます。こういう能力は実際に行うほどに上達し、避けていればいつまでたっても身につかないといいます。

     「即独」(ソクドク。法律事務所の就職難から新人ですぐに独立する弁護士)が登場している増員時代の新弁護士たちは、本来OJTで鍛えられるべき、こうした能力について大丈夫なのかという不安もあります。

     いずれにしても話を聞く限り、理由はともあれ、どうも全体的に見通しを示さない弁護士は少なくないようです。ある意味、その分、依頼者の不安は解消されず、やがて弁護士への不満となっていってしまうということになります。

     さて、この状況に依頼者・市民は、一体何ができるのでしょうか。この「見通しが立たない」状況が、果たしてやむを得ないものなのか、それとも弁護士の怠慢・能力に由来するものなのか、市民にその判断は、容易にはできません。

     唯一できることは、やはり「セカンド・オピニオン」、つまり、他の弁護士に相談することです。以前にも書きましたが、医師にあるような、セカンド・オピニオンは、弁護士にも適用されるべきです(「弁護士のセカンド・オピニオン」)。

     弁護士が、本来ならば、当然やるべきこと、やれるべきことをやれていないのかどうかは、やはり同業者にぶつけて、意見を聞くのが、今のところ、唯一有効な手段のように思います。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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