「国民の納得」の当然の前提

     弁護士を特別扱いするな、という論調が、この「改革」では飛び交ってきました。増員政策においては、「競争」と「淘汰」が、給費制廃止においては、養成費用の自弁ということが、本来的に弁護士に突き付けられるべきものだった、それをしてこなかった「特別」を直ちにやめるべきなのだ、ということです。

     そして、この論調を強力に補強するものとして付け加えられてきたのが、「国民の納得」です。つまり、この「特別」を、国民は許さないはずなのだ、と。前者には、弁護士を一サービス業としてとらえ、どの仕事にも求められていることを求めるということにおいて、そして、後者については、税金の投入ということにおいて、「特別」を許さないことへの国民の理解が当然の大前提として掲げられてきた観があります。

     しかし、本当にそうなのか。そのことを、このブログでは、これまでも度々書いてきました(「『国民の理解』が登場する場面」)。国民が「納得しない」という前提に立てるのかどうか、そうした忖度が正しいのかどうかということへの疑問ですが、その大きなポイントは、その判断の前提になる現実は、果たして国民に伝わっているのかというところにありました。それは、当然に、「あるものを失ってまでやる価値があるのか」という問いかけにもなります。

     法曹養成制度検討会議での、その孤軍奮闘ぶりに注目と期待が集まっている委員の和田吉弘弁護士(「無視を続ける『改革』推進姿勢」)が、また極めて的確かつ重要な指摘を展開した同12回会議提出の意見書(4月9日付け)が公開されています。

     このなかでも、前記した給費制廃止問題に絡む「特別」への「国民の納得」について、取り上げられています。給費制をやめて貸与制にすることを支持する見解としていわれる、弁護士志望者は「企業での社内研修と同じで、税金から給料を支払うのは国民の納得が得られない」という主張。これに対して、和田弁護士が、次のように述べています。

      「司法修習生は、裁判官志望、検察官志望、弁護士志望であっても、将来どうなるか分からないのである。司法修習終了時に法曹三者に分かれるというだけではなく、司法修習終了後も、法曹の別の世界に移ることが十分ありうるのである。また、法曹三者のどれになるとしても、司法を担う以上質の高い法曹養成を行うために法曹三者全体のことを学ぶ必要があるとして、法曹三者に分かれる前に統一的な職業訓練が行われているのである」
      「したがって、国民の多くが国民にとっての法曹養成の重要性を知れば、司法に人材が集まらなくなるような貸与制を前提とする司法修習のほうこそ、望まないはずであると思われる。納税者の納得という点からは、むしろ、前述のように、法科大学院が、法曹養成機関であるにもかかわらず、その多くの教員が司法試験に合格しておらず受験指導もできないというのが実態で、国民の多くがその実態を知らされることなく、そこに多額の税金が補助金として交付されていることこそ、問題とされるべきであろう」

     改めていうのもおかしなくらい、当然といえば、当然の話です。法曹三者統一養成には歴とした意味があること、法曹志望敬遠を生む事態を生んでまで貸与制に移行する価値があるのかということ。司法試験に合格していない多くの教員によって、受験指導もできず、法曹養成の中核でありながら法曹を生み出せない法科大学院に税金が投入されている現実に比してどうなのか、ということ。要は「国民の納得」というけれども、こうした現実が伝えられたうえでのことなのか、という話です。

     いうまでもなく、大きな責任は大マスコミにあります。さらに、弁護士は、この「国民」という言葉に弱いのか、弁護士界の中でも「納得されない」ということを半ば諦めの境地で受けとめ、覚悟につなげようとしている方々もいます。しかし、これもいうまでもなく、その姿勢そのものが、結局、国民のためにはならないということは考えられなければなりません。

     個人的に話す機会があった大新聞の関係者は、やはりこの「改革」に関して、この「納得されない」ということを連発していました。「それは、あなた方の書き方、姿勢ひとつではないか」と言いましたが、答えはありませんでした。「納得されない」という忖度の前に、まず、伝えられるべきことが伝えられなければなりません。そうしたアンフェアな状況が、この「改革」に限らず、この国をおかしくしていることに、国民はとっくに気付いているはずですから。


    ただいま、「『給費制』廃止問題」「弁護士の競争による『淘汰』」についてもご意見募集中!
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    No title

    日本国民は特別扱いを嫌います。
    太平洋戦争中,高度な特殊技能知識を持った人はその能力を生かした部署に配置すれば少しでも戦争を有利にできたでしょうが,一兵卒として他の兵士と同じように前線に立たせてました。
    日本社会で特別扱いは許されません。

    No title

    下のコメントの人が一番世間知らずだと思いますが。
    社会経験のある人がキャリアを棒に振ってまで、何の将来性もない弁護士になろうと考える訳がありません。
    社会経験がなければ弁護士になれない?
    面白すぎておへそで肉が焼けます。
    大賛成です。
    受験者が100人以下になって適正人口に向けて動きが加速します。

    一番足りてないのは、社会常識。弁護士法4条の削除により、弁護士になれるのは、社会経験があるものに限ってしまえばよい。司法試験は、合格水準に足りていれば、人数関係なく合格でよくなる。

    法曹って自意識過剰ですよね。給付制も法科大学院も、国民の大半は知らないし無関心ですよ。よっぽど牛丼値下げのほうが関心あります。

    No title

    そんなことは、法科大学院マンセーの人間も全員知っているので、結局聞こえないフリをしているだけ。
    課題はもはや、どうやって法科大学院をつぶすか、その具体的な行動の段階。

    No title

    今回の記事の内容こそが、この問題の本丸なのだと考えます。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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