「法曹有資格者」への変化

     これまであまり目にした印象がない「法曹有資格者」という言葉が、やたらに登場しています。法曹養成制度検討会議の「中間的取りまとめ(案)」も法曹の養成に関するフォーラムの「論点整理(取りまとめ)」も、冒頭の章は、この言葉から始まります。意味は、説明を要するほどでもなく、司法試験を受かった人間ということになりますが、この言葉が使われることになっていること自体に、ある種の意味を読み取っている方は、この世界に少なくないと思います。

      「法曹」から「法曹有資格者」へ。司法制度改革審議会が掲げた「質・量ともに豊かな法曹の養成」ではなく、視点がいつのまにか「有資格者」に移行しているということです。つまり「法曹」の手前の「有資格者」を含めて、活動領域を考える形へのシフト。そして、これは実質的には、「弁護士外」という意味を念頭に置いていることは明らかです。前記フォーラムの論点整理は、あえてこの言葉について、「司法試験合格者を指し,必ずしも弁護士資格を取得している者に限定されない」というご丁寧な注釈も付けています。

     弁護士登録をしない資格者の存在を含めて、その領域をとらえ直す現実性、官公庁や企業などで採用される彼らの可能性を射程にいれることは、そのニーズの存在とともに、逆に弁護士登録者に限ることの非現実性、あるいは限界を浮き彫りにしているように見えます。言ってみれば、弁護士登録が不要な「法曹有資格者」の存在を前提にする形に、「改革」の射程が変わってきたということにとれるのです。

     このことを分析しているブログがあります(「さんけんブログ」)。同ブログ氏も、この言葉が使われている理由について、「弁護士登録をしない有資格者をどんどん生み出し、法律に関係する職務を担わせていこうという意味」と、「その活動領域がこれまでの法曹の活動領域と異なるというだけではなく、『法曹有資格者』の性格が既存の『法曹』とかなり違ったものになるから」ということを挙げています。

     さらに、これはブログ氏が指摘する通り、二つのことを懸念させます。一つは、弁護士職務基本規程など独立性に関して弁護士を拘束するルールから外れる彼らが、「企業内弁護士」に代わって、企業利益獲得推進にどっぷりと浸かることになる恐れ。もう一つは、彼らへの実質的な弁護士業務「解放」が、当然に弁護士登録不要の傾向を加速させ、ひいては弁護士強制加入制度・自治を崩壊させる恐れです。

     ただ、本当の恐れを言い換えれば、実は、こうしたことが問題にならずに推移していくことかもしれません。社会のニーズにこたえる「法曹有資格者」の活用というテーマの前に、前記「独立」を担保するための弁護士登録という意味がどれだけ重視されるのか、あるいは、それは企業のコンプライアンスといった問題にすげ替えられていくもしません。いうまでもなく、法科大学院を中核とする法曹養成を維持する立場からすれば、弁護士資格にこだわらない、修了者の行き先の多様性が広がる発想は歓迎です。さらに弁護士会の強制加入や自治にしても、いまや弁護士会員自身が、それに規制としての負担感を感じ、不要論に傾斜してもおかしくない状況です。少なくとも、企業内弁護士の「独立性」維持のために、なんとしても弁護士自治を維持すべき、ということに、もはやなるのかどうかは疑問といわざるを得ません。

      「法曹有資格者」という言葉は、実はある人たちには都合がよく、また、ある人たちには、もはや避けられないものとして、受けとめられている、あるいは受けとめられていくように思えます。前記ブログ氏は、日弁連が会員向けFAXニュースでこの言葉を「しれっと」使っていることに対して、「この言葉の横行を許すこと自体、弁護士会自治の崩壊につながるものであり、自爆行為」と喝破されていますが、それもすべて分かってやっているのではないか、とも思えてしまうのです。


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    No title

    >一つは、弁護士職務基本規程など独立性に関して弁護士を拘束するルールから外れる彼らが、「企業内弁護士」に代わって、企業利益獲得推進にどっぷりと浸かることになる恐れ。

    これは弁護士登録していても同じでしょうね。
    ちょっと前の記事のコメントにもあったように、インハウスは雇われの身である以上、雇用主のために「黒を白」と強弁することは避けられないのでしょう。
    そもそも、一般的な弁護士とインハウスを同列に見ること自体が適切でないように思えます。
    ただ、最近ではそもそも弁護士だからといって法令順守などと唱えていいのかなとも思える状況ですが。

    >もう一つは、彼らへの実質的な弁護士業務「解放」が、当然に弁護士登録不要の傾向を加速させ、ひいては弁護士強制加入制度・自治を崩壊させる恐れです。

    これもインハウスを語る際によく言われる事項ですね。
    官公庁や自治体でインハウスとして勤める場合は、弁護士登録を残しておく必要性もありませんし。弁護士登録不要という考え方は十分にありえるところです。

    インハウスを肯定する以上、法曹資格者だろうが、弁護士だろうが、同じ問題は生じるように思えます。

    No title

    法科大学院からのエクスターンは一切受け付けない

    基本的に、勤務弁護士は採用しない。
    また仮に採用するとしても、司法試験類似の採用試験を実施し、佐藤幸治の学説で答案を書く受験者、井上正仁の学説で答案を書く受験者を問答無用で落とす。

    さあ、今からみんなで実践しましょう。
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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