ゆっくりした「改革」路線撤退

     既に朝日新聞が報じていた方向での、法曹養成制度検討会議の座長私案がまとめられたことが報じられています(「朝日」「毎日」ともに3月27日付け朝刊、「弁護士のため息」 「Schulze BLOG」 「司法試験合格「3000人」撤廃報道の印象」)。司法試験合格者年3000人の目標は「現実性を欠く」として撤廃、新たな目標は未設定。法科大学院の統廃合・定員数削減は進める方向だが具体的数値は未設定。統廃合促進への補助金減と裁判官・検察官教員の派遣打ち切り。受験回数制限緩和、貸与制を前提とした措置、修習専念義務のあり方検討。――。

      前記「弁護士のためため息」が述べておられている通り、検討会議の顔ぶれを見たときの印象からすれば、ここまでの結論を出すことすら危ぶまれたのも事実ですし、そこには志望者減という法科大学院への大逆風があったとも思います。一方で、これは別の言い方をすることもできるように思います。つまり、法科大学院生き残り、逃げ切りのためのシナリオが取りあえず固めてきたということです。

     要するに、合格2000人を前提に、下位校を退場させ、合格率を確保する。既に入学者数が3000人を割るという状況が伝えられるなかで、2000人合格の維持で7割合格率確保も見えるとすれば、3000人の旗も、少なくとも上位校関係者にはこだわるべきものではなくなった、という見方ができます(「一聴了解」)。座長私案は、その法科大学院側の心づもりを反映しているようにとれます。まずは下位校退場促進。受験回数制限・修習専念義務見直しも、このシナリオの中では、問題なし。貸与制には手をつけないとしたのは、逆にここはこのシナリオのなかでも、彼らにとってこだわりどころであることをうかがわせます。

     しかし、肝心なことは、これが現実的かどうかということです。つまり、これで法科大学院が選択されるのか、志望者が返ってくるのか、ということです。合格率確保の「効果」に期待するシナリオですが、志望されない原因は、その先の状況にもあります。弁護士の現在の状況です。そこと法科大学院の時間的経済的負担を重ね合わせないで、選択されるシナリオが成り立つわけもありません。そう考えれば、要は現在の2000人合格の状況が、本来、直視されていなければならないはずです。今の状況は、3000人合格で起きていることではないという基本的な話です。

      2000人維持がもたらす状況で、果たして志望者が返って来るのか。弁護士のなかには悲観的な意見であふれていますし、そもそも2000人を維持できるのかも疑問視する声があります。もちろん、新たな数値目標を設置しないという方針に何を読み込むのかではありますが、弁護士の活躍する新分野が限定的であることや就職難の現実を踏まえていると伝えられているものの、現在の状況を本当にどこまで踏まえたと言えるのか、現段階では評価ができない、というべきです。「朝日」は今回も論評なしです。

     いずれ避けては通れないことを先送りしているにとれる今回の私案には、何やら、ゆっくりした現状認識、あるいはゆっくりした「改革」路線の撤退劇を見せられているような気持ちになります。


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    これだけ無惨な状態だけ残った弁護士業界に誰が好きこのんで入ってこようと思うのでしょうか。
    資格商法詐欺の法科大学院に対し、提訴しない弁護士もどうかと思いますが、大学なんて所詮学生を食い物にしているだけということが、今回の出来事でよく分かったのではないでしょうか。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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