弁護士が「うさん臭い」社会

     法律事務所がテレビCМに登場しているのを見ても、いまや驚く人もいないと思います。一般化というほど、弁護士たちが我も我もと、この広告手段に関心を持って乗り出しているわけではもちろんなく、頭打ち感もないわけではありませんが、この間、確実に「弁護士もCМを打つ」という認識は広がりました。

      「過払いバブル」という状況とともに広がった、一部法律事務所によるCМの活用は、広告解禁後も、広告・宣伝という手段自体に消極的な業界ムードのなかで、ある種の挑戦でもありました。彼らの側からは、「過払い」問題に取り組む弁護士がいる、あるいはこうした問題に弁護士が活用できるということの社会的な周知に、最も貢献したのは、このテレビCМだとする声も聞こえてきます。

     この発想自体は、弁護士会が業務支援としてやろうとしている広報と同じで、救済手段としての弁護士の仕事を広く知らしめるというものであり、弁護士業務の多様性や、社会に周知されることでの業務拡大可能性という文脈にもつながります。

      「過払い」についていえば、確かにそういう意味で、社会的な周知が、多数の弁護士活用につながったという事実があるかもしれません。ただ、一方で、この法律事務所CМが、冒頭の認識とともに社会にどういうイメージで伝わり、理解されているのかということについていえば、それは別問題といわなければなりません。

      「なぜ法律事務所のテレビCMは、うさん臭いのか」というタイトルで、以前、この問題を取り上げているブログがありました(「Business Media誠」)。まさに、この「うさん臭い」というイメージ。この法律事務所のCМの話になると、必ずといってもいいくらい出でくるこの言葉のイメージは、この手段のもう一つの「効果」として、前記認識とともに広がっている感があります。

     このイメージの根底にあるのは、拝金的なイメージ、とりわけ、前記ブログが指摘するような、「正義」を掲げる弁護士が弱者をターゲットに積極的に金を取り、商売につなげようとしていることに対するネガティブイメージです。

     しかし、これに対しては、弁護士側にも言い分があります。弁護士も事業者。そして、一サービス業として、競争を求めているではないか、弱者から金を取ることに「食い者」的な表現は当てはめられない、と。増員を伴った「改革」が推進するそうした方向のなかで、弁護士の中からは、ビジネスと割り切れれば、今度は他と同じようにやっているだけで、弁護士は前記のように悪く言われる、あるいは「不幸産業」の宿命ではないか、という声もあるのです。

     これは、裏返した見方もできるかもしれません。日本の社会には、前記ブログにも登場するような、「正義」「人権」「非営利」あるいは「公的存在」という弁護士のイメージが、まだ強固にあって、さらっと前記したようなサービス業化のイメージができない、特別扱いする意識も、それだけ強く存在していた、ということです。つまりは、不正はともかく、それ以前に、大衆そのものが、割り切っていない部分もあるということです。

     以前から、弁護士とかかわった経験のある市民からは、弁護士の拝金者義を批判する声もありましたが、テレビCМは、ぐっとそのイメージの裾野を広げ、大衆の意識をむしろ「割り切る」方向に向けさせる「効果」を伴っていたというべきです。だとするならば、前記ブログが警告する、その先の世界、「確実な市場が見えない中での、法曹人口の急増は『事件漁り』をする弁護士」の増加や、彼らが導く「訴訟の内需拡大」が果たして何をもたらすのかまで、大衆にフェアに伝えられていなければなりません。前記弁護士の特別扱いをやめるメリットをそこに見出すのか、特別扱いにふさわしい弁護士がいなくなるデメリットの方が大きいのか、そこが問われる必要があります。

      「過払い金返還 密約で減額 消費者金融と法律事務所 債務者知らぬ間に」。3月24日付け朝日新聞朝刊社会面には、こんな見出しが躍っています。業者が実は請求を代行する法律事務所と手を結んでいる。「朝日」が入手した業者の内部資料に基づいた記事で、現段階で事実かどうかは、はっきりしないところもありますが、一つだけはっきりしているとは、こうしたニュースを、前記テレビCМが生み出しているネガティブイメージと、大衆は区別することなく、理解する可能性があるということです。

     弁護士たちの意識変化の先の職業倫理の低下、あるいはこういう形で道を踏み外す輩が登場する未来。逆に、「そんなことはない」とメリットだけを強調して、現実から目を逸らさせるようなことはあってはならいはずです。道を踏み外す弁護士に退場してらうのは当然だとしても、前記選択の前提として、防止できない現実的なデメリットを大衆は知っておかなければなりません。

     以前、アメリカの法律事務所CМを見て、その「うさん臭さ」に驚き、それをやらない日本の弁護士を褒めていた知り合いのビジネスマンの話を書きましたが(「『身近な司法』と『身近になってほしくない司法』」)、時代は変わりつつあります。「アンビュラス・チェイサー」というイメージからは遠かったはずの、日本の弁護士が、徐々にそれに近づいていることを感じとっている同業者たちも沢山います。大衆が弁護士の「うさん臭さ」に驚くのではなく、当たり前になる社会と、今の日本は、どのくらいの距離が離れているのでしょうか。


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    No title

    対象の業者も荷担した弁護士・司法書士も明らかにしないため、業界全体に対するネガティブキャンペーンの効果が生じることになります。
    これを放置するほど、日弁連は腰抜けなのでしょうか?
    調査し事実解明し、厳罰を科すことが求められています。
    犯罪ですから、当然資格は無くなります。

    No title

    > 日本の社会には、前記ブログにも登場するような、「正義」「人権」「非営利」
    > あるいは「公的存在」という弁護士のイメージが、まだ強固にあって、さらっと
    > 前記したようなサービス業化のイメージができない、特別扱いする意識も、
    > それだけ強く存在していた、ということです。つまりは、不正はともかく、
    > それ以前に、大衆そのものが、割り切っていない部分もあるということです。

    これって、弁護士自身がそういう喧伝をしたから、そういう印象があるだけでしょ。
    自分たちが作ったイメージに縛られて、ニッチもサッチもいかない、ってだけ。
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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