弁護士会会派の失われつつある「前提」

     弁護士会内の会話で、東京の弁護士会のムードに話が及べば、これまで必ずといって登場したのは、巨大派閥(会派)の存在感でした。地方の弁護士会にも、派閥らしきものが存在するところはありますが、東京のムードとはかなり違います。それは、一口に言えば、政治的と表現したくなるような影響力の強さ、派閥の求心力あるいは会員の忠誠度といったことになるかもしれません。

     地方会の弁護士も、いろいろな形で聞き及んでいるわけですが、多くの人はそのムードをよく認識していない感があります。日弁連会長選挙などを通して、その得体の知れない影響力の大きさに驚く会員の声を、ずっと耳にすることになっています。

     これまでも書いてきたように、東京の会派は、人事の推薦母体、選挙の集票マシンとして大きな影響力を持ってきたことは書きましたが(「『会派』という派閥の存在感」 「弁護士会に根を張り続ける『会派』」)、実は、それだけではありません。

     もちろん、弁護士会活動ということでいえば、人事がすべてものをいい、組織や予算にまでその影響が及んでいるという見方もできるわけですが、それと同時に、個人の弁護士業務の利につながってきたという話があります。事件や顧問先の紹介といった直接的なものから、さらには裁判所の調停委員、弁護士会の法律相談といった間接的なものまで、実利があるのだ、というのです。

     そもそも派閥は、人間関係そのものですから、その産物が前記のようなものであっても何の不思議もないわけですが、これが個々の会員を派閥につなぐ要素になっていたことは注目できます。弁護士登録の推薦人になってもらうところからご縁ができ、会派人のボス弁の事務所で働きながら、会議、研究会の設定からゴルフコンペの受付まで、会派にかかわる仕事に汗をかき、人間関係を太く、強固にしていく――。そんな会員の姿を沢山見てきました。

     そして、その会派のなかで、領袖に認められ、存在感を示した人物が、いつのまにか、なるほどという弁護士会のポジションがついている。「次は彼、その次は彼、そのまた次は彼」と語られる話が、本当に現実化していくような世界が確かにありました。

     特別な人事に色気がある人間だけではなく、一般の弁護士会活動、さらに前記したような事情から、個々の弁護士業務に至るまで、弁護士会の派閥社会に入ることが、東京の弁護士の、当然の、正統な姿のようなムードができ上がっていたのです。先輩は、当然、新人のことを思って、派閥に入るとことを勧めましたし、派閥外の会員を異端視する人も沢山いました。

     ただ、状況は大きく変わり、この派閥社会を支えてきた前提は、「改革」がもたらした弁護士の激増によって、大きく崩れてきているように思えます。人事的メリットは、当然、それ自体、弁護士会の帰属意識とつながっていました。将来的な弁護士会の野心どころか、委員会活動からも離反が進んでいる会員の意識からすれば、そこに全く妙味はない。さらに、これまでそれ自体に興味はなくとも、実利の妙味でつながってきた部分も、現在の弁護士が置かれた経済的な状況からすると、いわば、さすがの派閥メリットもおいつかない。その部分も、やはりこれまでの弁護士の一定限度安定した弁護士の経済環境のうえに、謳歌できたものだったという話です。

     日弁連会長選挙に関連した、選挙のあり方としての会員間の派閥批判の高まりもありますが、一方で、会派サイドからは以前から言われていた不祥事防止への相互監視機能や、OJT喪失の若手支援といった互助機能を強調する、会派存続への再評価を促すような声も聞かれます。ただ、逆にそれは、前記会派が存在してきた大きな前提が崩れだしたことの裏返しのようにも見えます。

      「改革」路線堅持を掲げ、「足元」が目に入っているのか疑わしい大会派の政策要綱のことを書きましたが(「弁護士会大派閥の目線の先」)、弁護士会内の彼ら自身がどんな形で生き残る弁護士会を想定しているのか、そのことも気にかかるところです。


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    No title

    東京は推薦人なくても入れますからね。
    この推薦人制度が原因で弁護士過疎地域に弁護士法人が支店を出すことが難しく、結局、いくら弁護士を増やしても地方の弁護士不足は解消されないという、馬鹿馬鹿しい事態が起きています。

    公正取引委員会や、政府の規制改革会議もこういうところに着目してほしいものです。

    No title

    58期以降で、会派に入りたいなどという人はきっとどMなのでしょう。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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