「分裂」の裏にある本音とムード

     法科大学院をめぐり、弁護士会内の世論が分裂している話が聞こえてきます。ある会の弁護士は、「真っ二つ」と表現し、「改革」関連では、増員や給費制といったテーマよりも割れているという認識を示していました(対立する会のムードとしては、猪野亨弁護士のブログが連続して伝えています)。

     ただ、実際には、これも地域によって、会内ムードのバラツキがあります。それは、その弁護士会がある県内の法科大学院の実情が反映していて、端的にいえば、統廃合が切実な問題として迫られている法科大学院を抱えている県と、そうでもない、取りあえず、やれているとされる法科大学院を抱えている県では、会員間の熱が違うということがあるようです。

     その中で、共通しているのは、支援の委員会メンバーを中心にした強力な「擁護派」とされる方々の存在です。受験資格化の存廃などを中心に、彼らと積極的に反対する会員がぶつかっているという図式があります。ただ、分裂の中身としては、別の事情も聞こえてきます。

      「できちゃっているものは、やめられない。何を言っても仕方がない」

     ある地方会員の会員は、大量の無関心層の存在も認めながら、旧司法試験体制に戻すべき、あるいは同体制の方が良かったという本音を漏らす一般会員はおそらく熱心な擁護派よりも圧倒的に多く、彼らは心情的には反対派だが、自分を含め、前記のような諦めの意識があることとを漏らしていました。そして、熱心に声を強めた擁護論を掲げる側に、「言いにくい」という意識もつながっている、と。これも、会員の、それこそ本音として存在していることのようです。

     もちろん、「言いにくい」ということでいえば、法科大学院出身の若手が、それこそ本音はともかく、その「出自」と恩恵という意識、さらには出身元との人間関係を理由に、本音は語らず、この議論から距離を置く傾向はいわれています。

     つまりは、分裂とされる法科大学院をめぐる弁護士会内世論は、この言葉がイメージさせるような賛否拮抗といったようなものとは、やや違う。言い方を換えれば、弁護士の本音や、もっといってしまえば、本当に多くの弁護士が考えるあるべき論とは、違う現実を反映している状況がある、ということになります。

    そして、これは、法科大学院問題に限らず、「改革」論議全体に共通した弁護士会内世論事情であり、その「改革」路線をむしろ支えてきたものということができるように思えるのです。

     なぜ、法科大学院の問題で、弁護士同士が対立するのか。もちろん、これは、一般の市民には、おそらく全く理解できていないことだろうと思いますが、当の弁護士のなかにも説明できない人が沢山います。「利権」「改革」路線への固執、失敗に対する認識度、時期尚早論の正否。いくつかの切り口が、この分裂のなかで指摘されますが、いわば、やめるかやめないかの二者択一が迫られる、中間案、妥協案を想定できない、この議論にあって、分裂を解消する決定打とはならない現実があります。

     その現実はそのままに、前記弁護士会のムードのなかで、方針が決まり、それだけを大衆が目にすることになる。もし、そういうことになっていくのだとするならば、大衆としては、その弁護士会の結論を、どこまで専門的職能集団の本当に出した結論と評価していいのか、そのことの答えが出せなくなります。

     もっとも、弁護士会の結論如何にかかわらず、法科大学院の運命が決し、それが擁護派のシナリオと大きく違った場合は、今度は弁護士会の見識が問われるだけということにもなりますが。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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