「朝日」がくさす本当の理由

     日本を代表する大新聞である「朝日」の司法関連の論調に、多くの弁護士があきれかえっているという現実を、多くの市民はまだ知りません。話せば、必ずと言っていいほど、驚かれます。「朝日」が絶対に伝えない、そして、もし、ネットという空間がなかったならば、誰も知ることはない現実です。

     2月13日の朝日新聞夕刊、「窓」欄の渡辺雅昭論説委員の「憲法の使い方」という記事も、多くの弁護士をあきれ返らせました(「弁護士のため息」 「shinic-tの日記」 「福岡の家電弁護士 なにわ電気商会」 「タダスケの日記」 「Schulze BLOG」 「ろーやーずくらぶ」)。

     給費制廃止違憲訴訟を取り上げ、「人々の共感」の有無を違憲訴訟提起批判につなげているととれる点、こうした多数派の論理に立つならば、「朝日」がよって立つ「改革」路線の、彼らの読み方としての司法による少数者救済拡大や、そのための弁護士増員必要論とも矛盾しているようにとれる点。給料支給の防衛大学校生との比較において不当とする主張に対し、「自衛官として危険をかえりみず事に当たることを求められる」防衛大生と、司法修習生は同列か、といった武官上位思想ともとれる言い方を繰り出している点――。

     結局は、この訴訟提起という話が「そんなに気にくわなかったのか」(「弁護士のため息」)というとらえ方も、「くさして」いる(「ろーやーずくらぶ」)という表現につながっても当然です。これを一連の「朝日」の司法改革関連報道でのスタンスとどうしてもみてしまうのは、偏った「改革」偏重論調と、まさに「くさす」という表現を使いたくなるような、「悪意」ともとれる批判論を、「朝日」が「反改革」と位置付けた対象に向けている点で、共通しているようにとれるからにほかなりません。

     記事は「釈迦に説法」と断って、「憲法という刀は扱いがむずかしい。振り回すと重みでよろけ、自分の足を斬りつける」などといった、これまた嫌みのようなことを言っています。やたらに憲法を振り回して、訴訟を起こせば、逆の司法判断を引き出すやぶへび訴訟になるという意味でしょうか。違憲訴訟が一筋縄でいかないことは事実(「弁護士川口創のブログ」)ですが、この文脈では、その趣旨がそうした忠告にあるとはとれません。「人々の共感」が得られない憲法訴訟は、やる価値ないぞ、という方に、読者の拍手を期待してのことととれます。

     ただ、ここで取り上げておきたいのは、実は「朝日」がこうした「悪意」ととれる表現を繰り出す、挑発的ともいえる強い偏りをもった論調を繰り返すことが、司法改革の失敗という現実を大衆に知らしめない、つまり隠す効果があるということです。

      「朝日」がこの「改革」に描いているはずの絵と、現実についても、実は前記「shinic-tの日記」氏が、次のように的確に指摘しています。

      「思うに、朝日新聞が司法改革に積極的なのは、弁護士増える→弱者救済の機会増大→人権保護→成熟国家という流れを想定してのことであろう。しかし、貸与制や司法改革に関して、現在見えつつある流れを大ざっぱにみると、弁護士の経済的弱体化→弁護士の地位低下→弱者救済への目が及ばなくなる&権力監視の力が弱まる→経済的強者&権力が安泰、また金持ちしかなれない制度→弁護士の全体的能力が低下→弱者救済能力の低下→経済的強者&権力が安泰、さらに弁護士乱立→個々の能力を判断できない依頼者の負担→弁護士の社会的評判低下→弁護士の地位低下→権力が安泰、というものである。すなわち、司法改革が朝日新聞の(表面的)スタンスに結果的に反する流れが見えつつあるのである」

     ここに「朝日」がひた隠す現実があります。そして、そのことに大衆の目を向けさせないために、失敗が明らかな弁護士増員政策にしても、法科大学院制度にしても、それを維持する方向に反すると「朝日」が裁定した動きに対しては、それを唱える弁護士たちの「心得違い」を強調するという手法を一貫してとっているのではないか、ということです。「甘やかすな」という大衆の弁護士批判を極力喚起して、「そうだそうだ」の拍手を期待する。そのためには、専門家が見たらば、あきれかえる論調も、何のそのというのが、日本を代表する大新聞の現実の姿ではないでしょうか。

     そのことも多くの市民は知りません。ただ、大マスコミがこういうことをやってのける存在であることは、多くの人が気付き出しています。もし、そこを甘く考えているのであれば、「自分の足を斬りつける」ことになるのは、大マスコミの方になります。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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