「反映しない」会員意思

     会内民主主義を標榜し、しかも会員から高い会費を徴収している強制加入している団体なのに、その運営に多数の会員意思が反映している実感を会員が持てない――。日弁連・弁護士会について、ずっといわれている、正確にいえば、司法改革「路線」遂行のなかで、顕著になってきた多くの弁護士会員の感覚です。

     ある人は、「執行部と一般会員の乖離」と表現し、ある人は「民主主義の形骸化」と表現する、その現実への疑問は、どうしても強制加入団体執行部の役割とは何なのかというテーマにたどりつきます。つまりは、会員多数の意見・意思を公平に吸い上げて会務に反映させることにあるのか、それとも執行部自体が一つの意思を貫徹するために、上から会員を「適切に」導くためにあるのか、ということです。

     だから、もし、今の日弁連・弁護士会の現実について、「いや、これでいいのだ」という人が、この会員の疑問にまっとうに向き合うのであれば、あくまで会内民主主義が維持されている、つまりは前記会員の感覚は「錯覚」「誤解」とするか、それとも後者の手法の正当性をいうか、そのどちらかしかないと思うのです。

     九州弁護士連合会が実施した法曹人口・法曹養成制度に関するアンケート調査の結果に関する坂野智憲弁護士のブログのエントリーは、改めてそのことを考えさせられます。

     適正法曹人口「1000人」が46.19%、「700~800人」が14.19%)、「1500人」が14.03%、「3000人」0.54%。法科大学院廃止賛成50.41%、反対28.42%。法科大学院修了の司法試験受験資格化反対62.67%、賛成26.03%。司法試験受験回数制限「撤廃すべき」66.76%、「5年以内5回との日弁連提言を尊重すべき」19.15%。前期修習の復活賛成90.68%、反対3.01%。給費制復活賛成90.44%、反対3.42%――。

      「非常に興味深い結果であると同時に至極まともな考えが示されているように思う。多分日弁連が全会員を対象にアンケート調査を行っても同様の結果が出るだろう。問題は会員の意識はまともなのにどうしてそれが日弁連や九州弁連の政策にならないのかである」

     このはっきりした会員の意思は、一体、どういう扱いになっているのかという話です。ストレートに会員の意思を汲み上げれば、どう考えても先日の千葉県弁護士会決議や、昨年の愛知県弁護士会意見書の内容に、日弁連や多くの弁護士会の結論がなっていいと考えるのは、およそ無理がない話です( 「千葉県弁護士会『法曹養成制度』見直し決議が持つ意味」 「愛知県弁護士会の正論と英断」)。

     ただ、問題は、そもそも弁護士会主導層は、この会員の疑問にまっとうに向き合うつもりがない、少なくとも多くの会員にそう感じさせていることではないか、と思います。形式的には機関決定を経ているという事実をもってして、そうした表現こそしないものの、結論は「誤解」「錯覚」という扱いになっているということです。結果、会員がどのような感覚にたどりつくか。その一端を坂野弁護士も書いています。

      「日弁連は会員アンケートが大嫌いのようだが、おそらく自分たちの政策が一般会員の多くに支持されていないことを自覚しているのだろう。それでも彼らは考えを変えない。高邁な理想に燃える我々が大所高所から無知蒙昧の輩である一般会員を導いてやらなければならないとでも思っているのだろう」

     この会員意識が、さらに、どういうことにつながるのか。日弁連の主導層は、高をくくっているという意見があります。これが、日弁連・弁護士会の求心力を奪い、会員の不満が、弁護士自治や強制加入制度を内部から崩していくなどとは考えていない、ということです。もっとも、そのことは百も承知で、先のことは我がことではないという方々が、舵をとっているととらえている会員もいます。

      「たたかえば勝てる」という声も実はあります。日弁連会長選挙の、いわゆる「3分の1」要件(最多得票とともに、3分の1を越える弁護士会の最多票獲得を必要とする当選要件)の再投票時廃止の執行部提案( 「日弁連内対立構図のなかの会長選挙規定改定」 「『ハードルを下げる』ご都合主義」)。これについて1月18日の日弁連理事会で、41単位会弁護士会の反対によって執行部側が撤回に追い込まれたという事実です(武本夕香子弁護士ブログ)。

      「若手弁護士の激増と生活難によって大弁護士会を牛耳ってきた派閥の求心力は失われている。ところが、この事態を権力やマスコミは『決められない日弁連と叱責・揶揄し』、弁護士自治の一層の破壊を目論んだ」(「翼賛日弁連に転機 会長選挙制度の改悪が頓挫」・「裁判員制度はいらない!全国情報」第40号)。日弁連執行部の今回の一敗を、こうした目論見に対する会員の意思反映による勝利としてみる見方です。

     しかし、執行部が多数会員の意思を直視しようとしない結果として、その敗北が待っていたとしても、その先にあるのが今回のような弁護士自治存続というベクトルとは限らないことも、理解しておかなければなりません。


    ただいま、「弁護士自治と弁護士会の強制加入制度」「弁護士会の会費」についてもご意見募集中!
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    価値を毀損してでも世襲させたい稼業

    価値を毀損しても平気なのは、俺たちは最高のエリートだ、誰もが一番憧れるのが当然だ、何をやっても価値が揺らぐ筈がないと思い上がっているからでしょう。特に、国家権力や独占資本と日頃ベッタリ癒着してそれを恥じない輩は。他士業にあれほど権力と癒着する仕事がありますか?
    どんな職業であれ、私は自身の稼業に誇りと責任感を持っている人には敬意を表します。
    逆に、驕りはあっても誇りがない、職業倫理も何もない、強きを扶け弱きを挫く専門の連中や、そんな輩を追放するどころか業界を挙げて迎合してのさばらせるような職業など、それこそヤクザ以下で一切の存在意義がないと言うしかない。権力の驕りも恃みもないし、刑務所に行く覚悟があるぶん、ヤクザのほうがまだ潔いかも知れない。

    No title

    今はどうやって、法科大学院擁護派を追い詰めるか、ですね。
    自分達は逃げ切ると勘違いしているかもしれませんが、元々非常識な法曹人口増はまともな実力勝負では司法試験に合格できない奴らのどら息子を司法の世界に入れるため、ですから、そいつらに対し、これまでの憎悪を叩きつけたら良いのではないでしょうか。
    しかし、弁護士の価値を地に落としてまで、自分達の息子らに継がせたかった弁護士の世界って、意味あるんですかね?

    No title

    政治の世界の選挙と同じですな。アンケートで吠えても、実際の投票行動で示さない限り政策は反映しない。至極当然の結果。
    アンケートのような無責任は意見吐き出しの場ではなんとでも言えるが、リアルな投票行動ではsingle issueで決まらない。

    No title

    次の日弁連会長選挙には、是非とも、日弁連を解散するということを公約に掲げる立候補者を期待したいものです。

    No title

    少なくとも法科大学院については,構想当初から法曹外から懐疑的な意見も多かったのです。

    経済界等の意見(抜粋)
    「同構想は、法曹界や大学のギルド的利害から出てきたものであり、ユーザーの視点が欠落している」
    「法学部教育の在り方を見直さずに法科大学院を設置、さらに司法修習を残すことは、屋上屋を重ねるだけである」
    「資格取得までに要する年限の長期化により、経済的弱者や社会人が法曹となる途が塞がれてしまうのではないか」
    「法科大学院の教員としてふさわしい者がどれだけいるのか、疑問」
    「大学関係者・法曹関係者による第三者評価では、実効性が全く期待できない。制度設計や認定は消費者側の立場の者に委ねるべき」
    「法科大学院に公金を投入すべきではない。また、法科大学院は、一切の特権なく、自由に設立させるべきである」
    「法科大学院修了者に新司法試験の受験資格を限定するのは、公平性を欠き、現行司法試験制度の長所を失わせることになる」
    http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/dai50/50gijiroku.html

    懸念どおり失敗したので廃止は当たり前で,国民の意思に反するものではありません。会員を裏切り続ける日弁連は要らないのでこのままなら消えてもらいたいものです。「法科大学院の成果」なるイベントを催し,会費を会場代やパネリストへの謝金に使うなど,ふざけるのもいい加減にしてほしい。

    上の人たちは、中堅〜若手の苦労を実感してないと思います。自分達の若かりし時代の苦労とは質が違うのに、いつか何とかなると何処かで考えてるのでしょう。
    法科大学院には、実務家教員に加え、添削やらゼミやらで若手が大量に駆り出されています。給費性活動など関連その他も含め。ボランティアや、僅かばかりのお手当を大義名分に、上の人たちから協力が避けられない圧力を受けて作業させられているのです。
    そうしたいわばドーピングをしても結果は現状のような状態で、アンケートで本音を書いても反映されない。
    それでも、九州弁護士会連合会はアンケート内容を公表し、文面はともかく会員の異議が多数であることを公表しているのですから、まだましだと思います。あるいは文面に出せない圧力を、こうした形で本音として示している可能性もあります。
    問題は何にもせずに、ただ規定路線として現状に従っている単位会です。若手は、会務への不満とあいまって、公的活動へのやる気をどんどん失っています。上の人は、若手を兵隊として協力が何時迄も得られ続けると勘違いしているのではないですか。
    このままでは強制加入団体性は近く失われるでしょうね。

    笑った。頑張ってアンケート通りの政策を掲げさせてください。
    どれだけ日弁連に決定権があるのか?掲げた結果が対国家、対国民との関係でどのような結末をもたらすのか?
    そして日弁連はどのような末路をたどるのか。私の陳腐な想像力でも想像できますww
    皆さんの健闘を祈りますw
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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