「高圧的」弁護士イメージの現実

     弁護士には、「高圧的」というイメージが、昔からくっついているように思います。現実に上から目線で対応された、やたらに威張っているという、弁護士に接した市民の話は、枚挙にいとまがありません。エリート意識、ステータスがもたらす勘違いという、結び付け方も、一般的といっていいかもしれません(「威張る弁護士」)。

     いうまでもなく、どの世界も、そういう人間はいます。弁護士という人間の中に、特にそういうタイプが多いというデータは、持ち合わせていませんし、あるいは弁護士という仕事が、そういう存在を特に目立たせる性格をもっている可能性も否定できません。

     ただ、現実にそういう人間がいることは、少なくとも実は当の弁護士たちが、一番よく知っているのではないかと思います。これまで弁護士に取材者の立場で接してきて、正直、驚くほど「高圧的」な人間にも、度々、遭遇してきました。ただ、そういう弁護士は、実は業界内でも、それなりの評価がされていることも知っています。

     このキャラは、ご本人にとっても、全くいいところがありません。かつて弁護士会長就任に並々ならぬ意欲をお持ちだった東京のある弁護士。経験も豊富、派閥でも実力者とみられ、ポジション的には、十分に会長を射程圏内に入れていたこの人物が、たった一つ、ネックだったのは、その「高圧的」キャラでした。東京の弁護士会役員選挙のなりゆきは、派閥間調整が大きくものをいうわけですが、彼にいたっては、対立派閥の幹部が「彼が出てくるなら、こちらも候補を立てて、全力で潰す」と明言。結果、無理と判断した彼の派閥仲間が、彼の肩を叩いて、諦めさせるという残念な展開にあいなりました。派閥仲間も、彼のキャラが邪魔したことを知っていて、残念がっておりましたが、近い話は、そこそここの世界のあちこちであるようです。

     反対に、いわゆる大物なのに、ものすごく腰が低く、こちらが逆に恐縮するくらいの弁護士もいて、もちろん、そういう人も、業界内で一定の評価を得ているのも見てきました。いつも印象というものは、共有されているもので、感じることはみんな同じ、苦手だなあと思った人は、不思議なくらい同業者の間でも、苦手扱いをされているもので、「高圧的」でいいことなんて一つもない、というのが、常々感じてきた結論です。

     前記したような「高圧的」であるということが、目立つ仕事、とりわけ強く大衆に伝わる仕事である可能性は、やはり弁護士との関係性が、もともと依頼者にとっては、「対等ではない」ということを自覚している面と関係があるようにも思います。専門家として頼る存在、困っている側がすがっている存在。その人間の物言いには、逆に依頼者は敏感です。いわば、弱い立場の人間に、たたみかけるように上からいわれることは、時に屈辱感まで引き出す反感の素になります。

      「素人なんだから知らないで当たり前じゃないか」。こんな弁護士の対応に対する市民の不満をよく聞きます。私自身、個人的な要件で、弁護士外の士業に接していても、時々、こんな感じを持つことがあって、「これか」と思う時があります。士業の方ご本人は、おそらくそんなつもりはないのでしょうが、こちらが知らない、分からないことに対して、その発言の中に、かすかでも不満げな様子を読み取ってしまうと、こちらの立場からすれば、すぐさま「分からないから聞いているんだろ」というモードにつなげそうになってしまうのです。

     弁護士に対して、「こんなことを聞いてもいいんでしょうか」とか「なかなか聞けない」という、気おくれを口にする市民の声もよく聞いてきましたが、そういう意識にも、つながっているように感じます。

     ただ、以前、Yahoo知恵袋の「弁護士の高圧的な態度」というテーマの質問に対する回答で、高圧的に「見える」ケースについて、解説しているものがありました。基本的に「高圧的」に感じた弁護士のチェンジを選択肢として挙げながら、この態度が、実はエリート意識からではなく、その原因が限られた法律相談時間にある可能性を指摘しています。

     法律的に問題になる部分を要領よくつかみたい弁護士に対して、法律の素人であるがゆえに、感情論も含めて問題の核心から離れたことなどを延々と話す相談者。弁護士にとって必要な情報のみを聞き出そうとして話を遮る形が、相談者の不満となり、それが前記印象に結び付くと。もともと、こうした弁護士にとっては、仕方がない事情から、法律相談という場が、弁護士への市民の不満の素になる話は存在してきました( 「『法律相談』というニーズ」 「法律相談の不満要素」 「弁護士の『人生相談』」) 。

     回答者は、このケースを相談者の方で解決可能なものとして、事案概要など要領よく説明できる準備を相談者側に提案しています。相談に臨む市民への、一般的なアドバイスとしては、正しいと思います。

     ただ、いうまでもなく、いくら時間がなくても、「高圧的」にとられる態度が許されるとは思えません。そもそも相談において、素人である依頼者が、要領の悪い説明をしてくることもまた、織り込み済みで、弁護士はそこも十分踏まえて対応すべき、ということを、強調していた弁護士もいました。回答者もいっていますが、弁護士側の能力にかかわる部分もありますし、その結果が、相談者に対する「高圧的」ととられる態度になるのは頂けません。

     もちろん、昨今の「余裕がない」という状況が、結果的にいいわけになることはあってはならないし、それが理由とされるようなことがあれば、弁護士の「心得違い」イメージとともに、この「高圧的」というネガティブイメージも、より強固になっていくと思います。

     少なくとも、胸に手を当てて、あるいは自分もそうとられているのではないか、という不安が過った弁護士の方は、自他ともに「いいことなんて一つもない」という強い自覚から、自らのイメージにもう一度、向き合ってみることをお勧めします。


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    とても面白かったです。
    あまりお邪魔しないようにこれからも見続けます。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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