「離婚」に対する弁護士の本音

     弁護士にとっての、事件創出ターゲットとして、度々引き合いに出されている離婚分野(「『訴訟社会』と同じ顔の未来」)ですが、実際の弁護士の受けとめ方としては、さまざまなものが聞こえてきます。

     どうも弁護士にとって悩ましいのは、かなり人生相談的なカウンリングに時間が割かれることのようです。弁護士もこうしたご時世ですから、経済的妙味に対する感性は、それこそ個人差はあるものの、敏感にならざるを得なくなっているのも現実です。人生相談的接客を割り切るという姿勢もありますが(「弁護士の『人生相談』」)、それもまた、自由競争の士業努力のなかで、採算性を念頭におけば、それを単純にサービスの一環にくくりきれないのも、弁護士という仕事の現実です。

     また、弁護士にとって離婚案件は逆恨みのリスクが高いとも言われます。2010年には、秋田と横浜で、離婚案件絡みで弁護士が殺害される事件も発生しています。

     以前、離婚案件に関する本音が書かれている弁護士ブログがありました。意外と一般に伝わっていないと感じるのは、離婚訴訟の結論は「見えている」という話です。「妻の立場で言うと、離婚自体がOKなら、未成年の子の親権は妻、養育費は3~5万、慰謝料は300~500万」。結果「はっきり言って、離婚事件は、どんな弁護士がついても大差ない」というのが、あくまで結果から見た、この弁護士の見解でした。

     そして、弁護士としての本音を、次のように述べていました。

      「離婚なんて、結論が見えているのに、依頼者が納得しないがために余分な手間がかかり、また相手方から変な恨みを買ってしまうリスクのある事件だ。料金の大部分は、グチ聞き代と危険手当。こんなにやり甲斐のない事件もない」
      「家事事件全般に言えることだが、弁護士にとって、とにかく調停はかったるい。私も、調停段階での受任は躊躇する。法律相談を受けた際は、調停段階は自分で対応するよう助言する。やりたくないのも本音だが、同時に、調停制度は弁護士無しで進めることを想定しており、大半の調停で現に弁護士が就いていないのも事実である」
      「どうしてもと言われれば受けるが、弁護士費用はそれなりに上乗せする。調停は、1回あたり2時間くらいの枠であり、付き合っていると、本当に、時間を浪費していると感じる。せめて本でも読んでいたいのだが、横に依頼者がいるから、そうはいかない。調停は、調停委員が見限るまで継続されるので、下手すると5、6回も開かれてしまう。このため、独自に、早期に見通しをつけるのが重要だと思っている。やるだけ無駄なら、1、2回で不調となるように持って行かなければならない」

      「離婚専門」を掲げる弁護士は、実はこの辺をビジネスと割り切ってやっているのではないかという推測とともに、一方で、離婚問題をライフワークとしている弁護士は、「法律家の枠を超越している」との評価も下しています。ただ、結果としての落としどころは、前記した形で変わらないから依頼者の過剰期待は禁物だ、と。

     こう見てくると、弁護士に向かって「離婚にいこう」と言っているような、冒頭の事件分野開拓の呼びかけが、実はどんな弁護士の意識と本音に向けられているのかが分かります。「逆恨み」のリスクと、「法律家の枠を超越した」サービスに目をつぶれば、まだまだいけますよ、と。ただ、時間の浪費が死活問題につながる弁護士にあっては、相応の割り切ったサービスも予想されるという話です。

     前記ブログ氏も言っていますが、それでも精神的に弱い人や、不安な状態にいる人が、弁護士にそれこそ「人生相談」も期待しつつ、高い費用を払ってすがるメリットがないとはいえません。ただ、依頼者市民としては、少なくとも実は結論がみえていることと、前記弁護士の本音を知ったうえで、それでも弁護士を頼んだ方が得なのかを、弁護士側の皮算用がくっついた勧誘に、惑わされずに判断する必要があります。


    ただいま、「今、必要とされる弁護士」「地方の弁護士の経済的ニーズ」についてもご意見募集中!
    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。http://www.shihouwatch.com/

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信中!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    No title

    離婚の場合はトラブルに巻き込まれたのではなくて、
    その相手を自分自身で選んで、わざわざ付き合ってわざわざ結婚して、とどめに子供まで作ってるわけですからねえ。
    それでいて本人は、「自分こそが被害者」という意識の固まりだったりする(もちろんそんな人が全員ではないけど)。
    弁護士が悪い裁判所が悪い法律が悪いとわめく前に、誰がその事態を招いたのか省みてみては。

    No title

    >離婚に関する司法対応もいい加減です。

    離婚って、ほんと、法的には妥当な(というか極めて真っ当な)解決なのに、本人にとって納得できないと、法律がおかしい、裁判官がおかしい、弁護士がおかしいってわめきたてるんdすよね。

    まあ、上記は離婚に限らないけれども、当事者がヒステリックになりやすいからか離婚に多いですね。

    弁護士なんていい加減なやつら

    離婚に関する司法対応もいい加減です。
    日本は調停制度があり、すばらしいだの先日弁護士の集まりで日弁連の副会長だの、家庭裁判所裁判官だの調査官だの言っていた。
    うそです。まともに家事法も考えられない談合状態です。法曹界は旧態依然で人々の暮らしや生き方を先行して変えていこうなんて輩はほとんど皆無です。商売道中心の人がほとんど。弁護士資格など形式で国家的生活保障制度のようなもの。国家の選定業務であり、法律もグレーであり、クライアントのおかれた状態を良くしたりできるわけがありません。 司法関係者もかなりバカで世間知らずでエリート意識だけ高い人が多いのが現実。弁護士法第1条を心情に活動している人なんて1%もいません。絶対に言えます。 亡国の主は、官僚とダメ議員と実は法曹界だと思います。

    No title

    個人が弁護士に依頼なんて一生に何回あるかってところでしょう。競争原理なんてろくに働きませんよ。
    ま、そんな世の中が良いって国民が言っているのならもうそれでいいのでは。
    それにいい加減な弁護士に食い物にされる人がたくさん出ようとも、当の本人はどうせ食い物にされていることすら気が付かないでしょうしね。

    ただ、一所懸命やっているフリをする弁護士は激増していくでしょうね。テレビでバンバン広告している某事務所のように。

    →そうかも知れませんね。ただ結局はそういう業者は信用を落とすだけです。競争原理の働く仕組みにおいてはなお一層信用が大事です。市場からいい加減な仕事をやっていると評価されたら生き残れるような業界ではなくなってきたのでしょう?

    何が正しいかは歴史が判断する事です。生き残る業界は市場が判断する事です。他人がいい加減な仕事をしてもほっておけばいいのでは?
    他人のやり方などどうでもよく、大事な事は自分が正しいと思った仕事のやり方をすればいいのではないですか?
    部外者が他人様の仕事にあれこれいうのもなんですが。

    No title

    >今後はこういった分野にしても一生懸命やってくれる弁護士さんが増えてくるのではないかと思います。

    法テラス使わず高い報酬で受任できるなら、一所懸命やる弁護士は、別に弁護士数を激増させずともいくらでもいますよ。

    需要もないのに弁護士を激増させているのだから、不採算部門を一所懸命やる弁護士はむしろ激減していくでしょう。
    法テラス使った離婚調停なんて、相手方から数百万以上の慰謝料や財産分与が取れそうにないならとてもやってられないくらいの微々たる着手金しか出ませんからね。

    ただ、一所懸命やっているフリをする弁護士は激増していくでしょうね。テレビでバンバン広告している某事務所のように。

    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    No title

    弁護士が増えるとマチ弁という仕事が成り立たなくなるのの典型例ですよね。マチ弁がやっている仕事は、専門性が低いものも結構あり、離婚なんかはその典型で、2,3回経験すれば、だれでもできてしまうわけです。だから特殊専門分野のない弁護士がそこに集中するのでしょう。

    個々の弁護士は、専門性が高く他の弁護士が参入しづらい分野で、ある程度需要がある分野を開拓しなければならないのだと思います。
    それができた一部の弁護士が現在収入を上げています。

    No title

     離婚事件について弁護士が代理人についてもつかなくても結果に変わりはないというのは、必要な主張、証拠を適当な時期に適当な形でちゃんと提出できた場合にはあてはまると思いますが、手続について素人であるご本人がこれを行うのは実際には難しいと思います。
     調停は、比較的、裁判所が丁寧に対応してくれることが多いですが、それでも、裁判所という特殊な場で緊張しまくっているご本人は、主張したいこと及び主張すべきことをきちんと主張できなかったり、必要な証拠を提出できなかったりすることが多いのではないでしょうか。

    もっとも、弁護士業務としての収支を考えると厳しいことは事実です。

    なんで私に噛み付くのか意味がわからないです。
    別に弁護士の事を憎んでませんよ。単に記事を読んだ感想を述べただけで弁護士を非難しているつもりは全くないです。

    これは結果変わらんしめんどくさいから手抜きしてますよ〜という内容のブログですよね。依頼者はお金を払う以上仮に結果が同じでも誠実にやってくれる方を選ぶのは当然です。手抜きをするのも一生懸命やるのも弁護士の自由。別に一生懸命やる事を強制なんてしてません。競争原理が働く状態なら好きにしていいと思います。
    もちろん違法行為や倫理、常識に反する行為については論外ですけど。

    No title

    明らかに手続に対して費用が過大になることを説明するのも誠実な弁護士の務めだと思います。
    こうした分野というのは一体なんですか?弁護士の報酬規程の離婚の費用がいくらかご存じですか?
    夫婦関係が破綻しているのであれば、代理人の有無にかかわらず離婚という結果は変わらないでしょう。本題の記事が示すとおりです。
    養育費なんて、どんなに抵抗したころで、当事者の収入の対比表のクロスしたところで決まりますよ。代理人による巧拙の差など全くと言って良いほどありません。
    親権者は、子どもが小さいうちはよほどのことがないかぎり、母親に、一定の年齢になれば家裁調査官が両親のいないところで、本人の希望を聞くでしょう。まあ、パパとママどっちを選ぶ?なんて心にキズを残す以外の何物でもないと思いますが。
    この分野で一生懸命な弁護士って何を想定して言ってます?自分の生活を犠牲にするか、対価に見合うサービスと称する弁護士のいずれかのことですか。記事にもあるとおり、調停は1回2時間かかります。この2時間の拘束に対しまともに事務所を構えて、事務員を雇い法律事務所を経営する弁護士であれば、地方都市で3万円、東京大阪では5万円の売上にならないと、「赤字」でしょう。もちろん調停のための打ち合わせなんぞしようものなら、拘束時間がさらに増えます。
    自営業者の「売上」と「所得」の違いも理解できずにただ、弁護士憎しみたいな発想での意見はもう聞き飽きました。
    経営感覚のない弁護士ならいざ知らず、「これ以上下げられない価格」以下での価格競争を強いられるなら、確実にサービスの質に反映するでしょう。

    無論、自分のアパートを事務所登録して、事務員なし、打ち合わせは全て裁判所か弁護士会か飲食店というのであれば、打ち合わせも含めての2時間で1万5000円でもなんとかなるのかもしれませんが。
    今後そういう弁護士が増えてきて、喜んで調停の代理人も引き受けてくれるから良いということですか?
    よかったですね。司法改革万々歳ですね。
    でも、代理人が就こうと就くまいと、結果は変わらないんです。
    無茶な請求は代理人が就いても退けられます。無茶な請求を退けるために代理人に依頼するならある程度のメリットはあると思います。
    そのメリットが代理人のコストに見合うかどうかで判断するのがサービスを選択する消費者としての判断でしょう。

    この記事はだいぶ普段の論調と違いますね。
    弁護士さんのこういった態度は依頼者は実は見抜いている事は多いんですよね。人の心の機微を見抜く、見抜かれないは頭の良さや法律知識は関係ない分野ですから。
    当人達にとっては人生かかってますしね。
    今後はこういった分野にしても一生懸命やってくれる弁護士さんが増えてくるのではないかと思います。

    No title

    法律相談では、自分で調停申立を行うように助言しています。
    一応弁護士に依頼した場合の費用も告げますが、あまりメリットがあるように思えません。
    どちらかというとテレビのワイドショーに幻想を抱いた申立人の法外で膨大な慰謝料請求がなされた場合の相手方の依頼なら受任したいと思いますけどね。
    今後そういうふざけた金額を焚きつけてこれまた法外な着手金を取ろうとする弁護士が出てくるのでしょうから、普通の弁護士の仕事は、離婚の分野で増えるのかもしれません。
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR