達成できていない「前提」への姿勢

     新司法試験の受験回数制限について、さまざまな立場からの意見が出された法曹養成検討会議第6回会議の議事録が公開されています。その委員によってバラバラな意見は、ブログ「黒猫のつぶやき」が、簡潔に紹介されている通りです。

     全体を読んで、感じたことを大まかに羅列してしまうと、和田吉弘委員が真っ先に挙げている修了生「7、8割」の司法試験合格を達成できていない制度の現実が、この制限の前提をもはや満たしていないという見方(「『受験回数制限』をめぐる評価の仕方」)について、法科大学院関係者は少なくとも制限撤廃の根拠としては向き合うつもりがないこと。一方で、制限の現状維持、もしくは修正論の側に、この前提が満たされれば、回数制限そのものは枝葉という考え方があり、そちらをなんとかすればいい、という考え方があること。受験生のプレッシャーへの配慮の是非、転進干渉の「余計なお世話」という評価をめぐっては、認識が割れていること。制限維持派側が、根拠として旧司法試験時代の「過度の受験競争」状態を挙げ、それに戻すな論を掲げていること――などが、ざっと挙げられます。

     しかし、まとまりがない議論百出のような、このやりとりで、流れはどうも法科大学院関係者を中心に、結果として、受からせていない司法試験をなんとかしろ、という話になっている印象です。つまり、合格「7、8割」合格を実現できていないことは、制限撤廃の根拠にはならないけれども、合格さえ確保できれば問題はないはずで、そのために手をつけなければならないのは司法試験だという方向です。

     それは、試験対策としての受験教育をしない建て前を維持しつつ、普通に勉強していればレベルとして7、8割の合格者を教育の成果として出せるということが、現司法試験からすると、現法科大学院では無理、あるいは自信がないことの現れですが、そのことの妥当性ではなく、司法試験の問題に収斂させていこうという意思が働いているようにみえます。委員のなかからは、「受験回数制限をしなくて済むような、『法科大学院と司法試験との間の有機的な関連性』」(清原慶子委員)といった表現も出てきますが、「重すぎる試験」(井上正仁委員)という発言からしても、法科大各院関係者が、主にどちらに手をつけるべき話にしたいのかは明らかです。

     こうしたなかで、国分正一委員の次の発言が、非常に印象的です。

      「かつての司法試験は、受験生に全て責任が負わされていたわけです。法科大学院制度を始めるということは、国が責任を持つということであったはずなのが、それ以前の制度の余韻が残っていたかして、自由競争という言葉で学生の努力に全て任せる、そんなところがあった。したがって、法科大学院側も教育に甘さがあって、改革に本腰を入れないできた。しかも、三振という言葉までが生まれ、死屍累々といった状況になっているのだと考えています」
      「他方、底辺校と称される大学が、奨励したとまではいかないものの、そうした大学まで手を挙げてしまって、今度は抜き差しならなくなっていると読めます。そこで、ここは国がはっきりと姿勢を示す、すなわち、姿勢を国民に対してアピールする必要がある、そのための検討会議なのだと思います」

     同委員は、この認識から、例えば、将来は司法試験の合格率を医学部同様9割方にすると宣言することを挙げています。「7、8割合格」の二の舞の危険も、また、その宣言のしわ寄せが、前記したような思惑の中で、司法試験に現実的にどういう影響を与えるのかは気になります。

     しかし、受験回数制限にしても、受験条件化にしても、前提が達成できていない以上、辞めるという潔さは完全に期待できない関係者の方々には、国分委員の言を少し噛みしめて頂きたいと思えるのです。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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