弁護士の「評判」の扱われ方

     一時代前のことを考えると、「評判」ということに敏感になっている弁護士は増えてきていると思います。それは、必ずしも悪いことではありません。

     いまでもそういう方もいらっしゃるとは思いますが、それこそかつての弁護士は、どこか「弁護士たるもの、評判など気にせずとも、自分のやるべきことをやっていればよろしい、おのずと評価は決まるのだから」という風があったと思います。

     ところが、依頼する市民からすれば、いうまでもなく昔から弁護士の「評判」は、非常に気になるところです。今日、インターネット上では、いろいろな業種について、「口コミ」という「評判」伝達手段が発達していますし、ネットでの質問サイトでも弁護士の「評判」に関するものがあふれています。

     最近の弁護士が、かつてよりも「評判」を気にするようになっているのは、競争が激しくなっているのとともに、こうした環境の変化も影響しているのかもしれません。

     ネット上でも自分の案件に絡んで、弁護士の「得意な分野」から「評判」を探る市民の声は沢山ありますが、どちらかと言えば、回答者もこの手のプラス評価については直接特定の弁護士名を挙げたりせず、公的な相談ができる場所を教えるケースが多いようです。むしろ、マイナス評価については、真偽はともかく、糾弾調の実名公開もあれば、サイトで懲戒事案を実名入りで紹介しているものもあります。

     ただ、そもそも弁護士の「評判」、特にマイナス評価のものについては、気をつけて対応しなければいけない面はあります。やはり、鵜呑みにはできないものもある、ということです。

     「口コミ」自体、ライバル業者のなりすましが存在する世界ですが、およそ「弁護士」に関しては要注意です。それは、繰り返し書いているように、弁護士は恨みをかう仕事だからです。恨みを抱いている人がいう評判には、マイナス面に傾斜した誇張、事実の歪曲がいくらでも入り込みます。それが、弁護士が正当にやるべきことを尽くした結果であっても、当事者が負けたり、損をすれば、とたんに逆恨みの対象となります。また、そこには弁護士という仕事に対する誤解もあります。

     しかし、現実問題として、ネット時代であるからこそ、「評判」は弁護士個人の業務にものすごく大きな影響を与えます。真偽如何にかかわらず、流れてしまった情報は、仮にそれを発見し、何らかの形で中止させたとしても、とりかえしがつかず、それ以上の名誉回復、もしくは正しい事実を伝えることは、個人の力では容易なことではないからです。

     また、懲戒に対して、弁護士がかなり神経をとがらせているという話もあります。もちろん、不祥事の抑止という効果を期待しているのならば、こうした傾向は結構なことになりますが、悪意によるといえるような不祥事ではなく、ミスや言い掛かりに近いものを懲戒請求され、結果として、懲戒されてしまうのではないか、という危惧が弁護士側にあります。取り方によっては、弁護士自身が、弁護士会の懲戒制度の公正さについて、100%信頼していないともとれなくありません。

     懲戒については回を改めますが、戒告、業務停止、退会命令、除名といった相応の処罰が待っていますが、それは機関誌「自由と正義」で公告として実名で公開されます。

     一般からすれば、懲戒の中身いかんにかかわらず、当然「そんな前科のある弁護士は依頼しない」という結論を出してもおかしくなく、弁護士にとっては大きな打撃です。しかも、実際の処分書の内容が、公告では省略されていて、事案について細かく伝えきれていないという懲戒対象になった弁護士からの指摘もあります。懲戒になった案件での、対象弁護士側の酌むべき事情が、ちゃんと市民に伝わらなくなっている、というのです。

     もっとも、弁護士の懲戒制度自体、内からは「公正な判断ではない」という批判、外からは「身内のかばい合いで甘い」「機能していない」と、両方向から悪い「評判」を聞きますが、これもまた恨みをかっている結果である可能性は加味しなければなりません。

     むしろ弁護士が今、気にしなければならなくなっているのは、弁護士全体の社会的評価の方ではないでしょうか。悪い弁護士がいても自分は関係ない、自分は真面目に日々の業務をこなすだけだ、というのは、志としては、間違いではありませんが、明らかに「アウト」の弁護士が増えることは、全体の弁護士を貶めることになり、それは個人の志いかんにかかわらず、少なからず影響を及ぼすことになります。

     その意味での悪い状況は、実は戦後最悪といってもいいくらいではないかと思います。

     言い方を変えれば、それは玉石混交がいかに弁護士という資格業にマイナスか、ということです。昔から質の悪い弁護士が存在しなかったわけではありませんが、「弁護士」という肩書でバッチをつけている以上、基本的には一定の「質」、能力が期待できるという保証は大衆には間違いなく、ありがたいことでした。と同時に、弁護士にとっても、それはありがたいことであったはずなのです。

     弁護士会の中で言われている、「質」の担保以前に、「数」が「身近」な存在にさせる、「質」は淘汰の結果、いずれ保たもたれるという考えが、玉石混交状態の淘汰のプロセスで、弁護士全体の「評判」を下落させ、「身近」どころか「弁護士離れ」「弁護士不信」を加速化させることにつながるというのは、ある意味、皮肉な話です。

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR