弁護士に「騙される方が悪い」とされる未来

      「騙される方が悪い」。消費者事件が起こる度に、出されるこんな論調に、それは違うだろという反論が出されてきました。業者は罠を張り、事情を把握しない市民との、しかも一回性の関係のなかで起きた事件。結果からすれば何とでもいえるけど、中にはちゃんと信用させる体裁を整えているものだってある。消費者側の意識を高めて、危険を回避することを呼び掛ける重要性はあっても、基本的にその責任を消費者に回すのは、業者側の悪質性が増すほどに筋違い、あるいは酷だという反論です。

     近い将来、弁護士の不祥事による被害者にも、「騙される方も悪い」という言葉が浴びせられるのではないか――。弁護士による金銭絡みの不祥事で、依頼者の被害が相次いでいることを報じる記事(産経新聞2月3日付け朝刊「バッジが泣く…弁護士不祥事相次ぐ 過当競争影響」)を見ていて、そんなことが頭を過りました。

     もちろん、もし、それを言うのであれば、前記反論の方も、弁護士被害について有効のようには思います。事情を知らず、情報と知識に格差がある依頼者が、一回性の関係のなかで、弁護士の悪質性を見抜くハードルの高さ。もちろん、国家資格者であるプロへの信頼、依存心もあります。市民側が意識を高めるにしても、酷である現実はあります。

     ただ、前記記事が伝える現実には、不安なものがあります。記事は不祥事の続出を受け日弁連が1月、再発防止への理事会決議を採択し、近くまとめる防止策で問題弁護士の早期発展や預かり金口座を弁護士会がチェックできる態勢整備などを柱にすることを紹介し、そのうえで中西一裕・日弁連事務次長の次のようなコメントを掲載しています。

      「過去にも金銭の不祥事はあったが、最近は額や悪質性が増している。こうした事態が続けば弁護士全体の信用が失墜する」
      「(再発防止策の策定を)うみを出し切るチャンスにしたい。隠れた不祥事も掘り起こして処分していく」

     問題は中西事務次長がいう「うみを出し切る」という話です。弁護士が増え続けるほどに、うみは出続け、被害者も出続ける。これをよしとするのが、まさに「淘汰」の過程ということになりますが、それが良質を残すまでにどのくらい時間が必要なのか、はたまた果たしてそこにたどり着けるのか。日弁連側の努力は努力として必要ですが、それとは別の現実にどうしてもこだわりたくなります。
     
      「弥縫(びほう)策の域を出ず、チェックが厳しくなったところで根本の解決には至らない」という司法関係者の声をあえて最後に掲載している、この記事の記者も、実は同じ認識ではないかと思えます。そして、結論は「依頼者側には、弁護士の“資質”を見抜く目が求められそうだ」。自分の身は自分で守るしかない、と。だとすれば、この酷な要求の先に、被害者に待っているのが、冒頭の言葉であっても不思議ではないように思えてくるのです。もちろん、弁護士に関して「騙される方が悪い」ということが、もし常識として通用するような未来があるとすれば、その社会の弁護士がもはや市民にとって、どういう存在になっているかは想像できます。

     かつて、この「騙される方が悪い」という論調への前記反論を、よく弁護士の口から聞きました。この論法が、弁護士の被害に被せられる未来など、誰も想像しなかったはずですが、逆に今、弁護士自身が迫られている自覚がどういうものなのかは感じ取ってもらいたいと思います。


    ただいま、「弁護士の質」「弁護士の競争による『淘汰』」についてもご意見募集中!
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    弁護士もこの先そんな業界になるのでしょうが、少なくともロースクールは既に関係者の口から騙された入学者が悪いという言葉は聞こえてますね。
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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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