法科大学院「適正配置」共同声明へ疑問

     地域で育てて、地域で活かす。そんな法曹輩出の形への期待感(「『地産地消』を描き込んだ法科大学院」)は、まだ法科大学院という存在に被せられるのか、そもそも法科大学院と弁護士の実情を知っている地域の弁護士が、本当にそんな期待感を持っているのか――。新潟県弁護士会など11弁護士会の会長が1月25日に発表した法科大学院の地域適正配置に関する共同声明には、まずそうした疑問と、意外な感じを持ってしまいました。

     共同声明は、結論として、国に対し、統廃合基準策定など法曹養成制度の在り方を検討での地域適正配置の理念の尊重、地方法科大学院に対する国立大学法人運営費交付金・私立大学等経常費補助金を減額回避と適正な公的支援を求めていますが、その理由をこう言っています。

      「法の支配をあまねく実現するためには、各地の様々な分野から法曹を生み出すことが重要であり、そのためには、もともと司法改革審議会意見書が制度設計の基本的考え方として指摘していたとおり、法科大学院を全国に適正配置し、地方在住者がその地域で教育を受けて法曹になる機会を実質的に保障することが、司法制度改革の目的に直結する理念として重要である」
      「そして、地方法科大学院の存在が地元志望者の経済的負担を大きく軽減させるだけでなく、司法過疎の解消、地域司法の充実・発展に貢献し、さらには、地方自治・地方分権を支える人材を育成するという観点からも重要な役割を担っていること等を併せて考えれば、法科大学院の統廃合等は、地域適正配置の理念を踏まえつつ実施される必要がある」

     地域在住者の法曹になるための教育機会の保障と、地方で活躍する人材育成。その基本にあるのは、「バイブル」たる司法審意見書が示した「法の支配」をあまねく行きわたらせる「津々浦々」論。地域から人材を吸い上げるのも、「多様化」への貢献である、と。「改革」の理念に絡めながら、前記期待感がいまだ健在であるような印象を強く持ちます。

     ただ失礼ながら、本当に地域に適正配置されれば、法科大学院に人材がやって来る、地域にあれば、そこから人材が地域に根付く道筋がつくと、弁護士会の関係者の方々が、本気で考えているのか、そのことを疑いたくなってしまうのです。法科大学院制度を本道とする以上、付きまとう志望者への負担、そして、その先の弁護士になって、彼らを支えることのできる地域の経済的なニーズの存在。これらを念頭に、この主張はなされているのかということです。

     地域志望者の機会保障や利便をいう、彼らの立場を考えているととれる切り口も、彼らを敬遠させる現実問題の前には、色あせます。地域に存在することが、少しでも機会保障と多様化に貢献するはずなのだ、ということでしょうか。

     地域にあろうが無かろうが、費用対効果の意味で敬遠される法科大学院。そして、地域に根差すことができると、簡単には見通せない、弁護士の経済的環境。そのことを重々分かったうえで、それでも必要なのだと、強弁するためには、やはり大義として「理念」にご登場頂く――。

     そう見てしまうと、そこまでして、彼らが地域法科大学院を守ろうとする、本当の目的が何かあるのではないか、といううがった見方までしたくなるのです。


    ただいま、「地方の弁護士の経済的ニーズ」「弁護士の経済的窮状」についてもご意見募集中!
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    不満を言う時期はもう過ぎたと思います。
    法科大学院の根絶のために、行動を起こす時期です。
    それすらも遅すぎるかもしれませんが。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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