「食えない」状況がもたらしている実害

      「弁護士には気をつけろ」という話を目や耳にすることは、いまや珍しいことではなくなりましたが、そのなかで、ゴシップ系のメディアが、「パクリ屋」つまりは取り込み詐欺の手先となっている弁護士が「少なくない」と報じています(「週刊実話」1月31日号「サラ金過払いバブル終焉 『儲からない』弁護士が次に狙う闇ビジネス(2)」)。

     「当職はA社倒産に伴う債務整理について受任しました。しかし、売掛債権・在庫等の資産がなく、商品を売却した先からの回収も滞っているため、債権者に対する返済ができない…(中略)…債権者各位におかれましては、早急に債権回収の法的手続き等をとられることをおすすめ致します」

     会社倒産に絡んで、市民に弁護士名を付されて送られてきたこんな書面。こんなご時世ですから、債権者であれば、普通に目にすることもありそうなこの書面の送り主である弁護士が、実はその「パクリ屋」の手先かもしれない、という話です。

     この弁護士の役割は、正規に受任して調査し、倒産会社A社が「支払う気があったにもかかわらず、やむを得ない事情で倒産に至ってしまった」ということを、弁護士として証明し、詐欺罪としての立件が難しくさせること。債権者から破産を申し立てるにも相応の費用がかかり、回収見込みがない破産申請は行わないという債権回収の常識を知っていたうえでの、「やるならどうぞ」の姿勢。結果、商品を買えるだけ買って、その商品を売却した後に計画倒産や夜逃げをする業者の片棒を担いでいるのが、この弁護士だと。

     ここで紹介さているX弁護士は、近年、分かっただけで同様の案件5~6件に関与しているとされる「常習者」のような話になっています。

     要するに、弁護士が正義と事実に基づく主張を普通にしないかもしれない社会では、およそ普通の市民にそれを見抜くのは困難で、市民は結局、その不正義に巻き込まれるということのように思えます。逆に、本当にやむを得ない事情で倒産に至った会社の弁護士の正当な対応と、「パクリ屋」の手先の対応を、社会に区別させにくくさせているのが、ほかならない弁護士自身だという見方もできます。

     この雑誌の前記シリーズでは、債務整理に代わって金融円滑化法に目を付けた弁護士が、中小企業に倒産リスクのある返済条件変更を「けしかけている」実態があるということも伝えています(同「サラ金過払いバブル終焉 「儲からない」弁護士が次に狙う闇ビジネス(3)」)。

     このシリーズが、ある意味、「ちゃんとしている」と思えるのは、こうした状況を生み出している根っこに、激増政策によって「食えない弁護士」を作りだした司法改革があることを押さえていることです。この改革が生み出した状況が、市民社会を悪い意味で巻き込んでいる現実といえます(「弁護士の『食える食えない』に巻き込まれる社会」)。

     ゴシップ系メディアには、彼らなりの視点や取り上げ方があり、表現についてはそこを大幅に割り引く意見も聞かれますが、一般メディアよりも、大衆の実害を伝えているととれるものを目にすることがあります( 「ゴシップ誌が取り上げた全弁協『保釈保証事業』」)。司法改革のメリットばかりを強調する大マスコミの報道だけを目にする市民には、この「改革」の理念が、現実的にどういう社会の犠牲やリスクを伴うか、あるいはそれらをどれだけ念頭に置いていないかが、伝えきれていないように思えます。


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    中小企業の依頼を受けることもあり、破産手続の代理もする関係で、こういうのが蔓延すると、申立即保全処分ですね。結局受任通知ごときでは取立止まらず、裁判、あるいは実力行使で在庫商品持ち出しにどう対処するかということになるのでしょう。
    常習犯弁護士は、牢屋ーはもちろんとして、巨額の損害賠償が必要ですね。
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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