疑わざるを得なくなる現実

     ある弁護士(匿名)のブログに、弁護士が舞い込んできた案件を「受任しない」あるいは「受任したくない」理由として、15のパターンを列挙しています(「ねぐら」『弁護士が受任しない理由』)。受任するかどうかというテーマは、現実的には職務に対する姿勢や考え方で、弁護士によって違いが出てくる面も否定できませんが、それでもここに指摘されているパターンは、これまで弁護士からの口から聞かれてきたことが、ほぼ網羅されているように思えます。

     詳しくは、ご覧頂ければと思いますが、これを見ると、その内容は大体、次のように、分類できます。

     ① 相談者・依頼者との意思疎通等関係性において、弁護活動継続が困難とする場合。
     ② 相談者・依頼者の要求・主張などで案件の無理筋を理由とする場合。
     ③ 不正・不法への加担を回避しようとする場合。
     ④ 弁護士に相談する目的において、不適切であったり、誤解がある場合。

     ただ、これを読むと、率直に感じることは、むしろ懸念されるのは、こうしたケースにおいて、弁護士によって「受任しない」という選択がなされないことの方ではないか、というような気もしてくるのです。こうした理由による弁護士の「受任しない」選択は、ある意味、非常にまっとうなものにも見えます。もちろん、弁護士本人のリスク回避という面もありますが、いずれのケースも、もし、弁護士が目先の着手金目的で、いわば正当な活動を度外視して引き受けた場合、それはいうまでもなく、依頼者にとっても、社会にとっても、弁護士という存在自体が有り難いものではなくなる可能性があるからです。

     ブログ氏は、こうした「依頼」を弁護士が間違って受任してしまうと、自分の首を絞め、無理筋な案件の「着地」に苦労するうえ、相手方弁護士からは「こんな事件を裁判所に持ち込みやがって」という冷ややかな目で見られ、依頼者からは思った通りにならないことを逆恨みされる、としています。

     しかし、見方によっては、これも非常にまっとうな弁護士の意見であるようにも見えなくありません。そもそも本音では「着地」に苦労するつもりがない弁護士が、見せかけのテクニックで依頼者の逆恨みを買わないようにもっていく余地だってありますし、裁判で「こんな事件を持ち込みやがって」という話はいくらも聞こえてくる今日、そうした弁護士が相手方弁護士の冷やかな目線を気にするとも思えません。かつてならば、同業者の前で恥ずかしくていえないような主張を平気で掲げてくる弁護士がいることが、弁護士の間でいわれています(「歓迎できない『従順』弁護士の登場」)。

     先日、このまま判決に持ち込んだならば、確実に負けるというケースについて、和解について説得する努力を回避して、あっさり無謀に付き合う弁護士の問題性について言及しましたが、一方で、逆に弁護士自身にとって、訴訟を続けることが割に合わないと判断した場合に、強引に説得して和解に持ち込んだり、依頼者の意向無視で双方弁護士の話し合いで決めてしまうケースもある、という指摘がありました(「回避される依頼者の『説得』」)。

     説得する能力不足ということであれば、より前者のケースになるように思われますが、いずれにしてもこう見てしまうと、依頼者・市民が不利益を被らないためには、右に転んでも左にころんでも、弁護士の言うことを疑わなくてはならないように思えてしまいます。

     一度嘘をつける、あるいはその実績があると判断された人間の言動は、すべてが疑われてしまうかもしれませんし、相手からすれば逆に疑わざるを得なくなってしまうということもあります。弁護士という存在が、ひとつ間違えれば、依頼者・市民の不利益につながる危険性と責任を負っていることとともに、彼らが基本的にまっとうで、信用できる存在であることの重要性について、私たちの社会は、もっと認識しておく必要があるように思えます。


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    昔の弁護士はさも信用できた、品行方正だったみたいな書き方ですねw

    はっきり言いますが昔に比べたら今の方がはるかにマシです。これは国民のほとんどが同意見でしょう。
    昔の弁護士の傲慢な態度や依頼を引き受けない態度といったらおよそ職業としてあり得ないレベルでしたね。今は多少はマシになりましたか。多少はね。競争原理のおかげでしょうか。

    弁護士側の依頼を受けない理由はわからなくはないですけど。たまには相談料や紹介料だけ取られてたらい回しにされる依頼者の立場で記事を書かれてみては?
    プロフィール

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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