「紹介」が減少してきた理由

     かつて弁護士の集客ルートのメインといわれていた「紹介」が、頭打ちもしくは減少してきているという話を聞きます。「法律相談」ルートも、弁護士会などでの件数急減で、今後はさらに期待薄。残るは「インターネット」か、という話になりますが、これもどこまで期待できるのか、はたまたどうすればいいのか、といった戸惑いの声も聞かれます。

      「紹介」という手段を用いた弁護士へのアクセスは、依頼者・弁護士双方にとって、一番安全で確実なものとされてきました。敷居が高いといわれる法律事務所にあって、これまで弁護士とかかわりがなかった市民にとって、「紹介」はコンタクトの足がかりであると同時に、実力においても、人間性においても、一定の安心保証となるものでした。一方、弁護士にとっても、「紹介」は依頼者に対する安心保証という面、いわばタチの悪い依頼者により遭遇しないためのものとの受けとめ方もあり、さらには弁護士が危害を加えられたりする、業務妨害事案から身を守るということにもつながりました。案件としても筋の悪い事件に出会う可能性が下がるという弁護士もいます。

     そんなメリットがあるはずの「紹介」が、なぜ、減ってきているのか。以前、ある弁護士のブログが、その理由について、推察していました。

      「『良い弁護士』と知り合った客は、以前は周囲に紹介したが、今は自分で独占する傾向が強い」

     これには、紹介を頼む人間と頼まれる人間の関係、さらに弁護士の現在の環境が大きくがかかわっています。ブログ氏も実感として語っていますが、そもそも以前の「紹介」も、弁護士の数が少なく、コンタクトもとれず、困った市民が、なんとか紹介者にたどりついたというパターンが多かった。それだけに、そこには頼まれた側も断るに断れない状況があった。ブログ氏がいうように、頼んできた側に貸しを作るという形に悪い気がしない人もいたとは思いますが、紹介は一面、のちのち責任も伴いますので、中には本音ではかかわりたくないという気持ちがあったはずです。要は、希少で、敷居の高い弁護士であったがゆえに、この紹介を旧依頼者が引き受けるということになったのではないか、ということです。

     ところが、弁護士を取り巻く環境が変わった。いまや弁護士はテレビCMも打つ時代。ネットを使えば、誰でもとりあえず弁護士にたどりつける。自分で探すことができるのならば、何もプライバシーにかかわる自身のトラブルを知人に知られてまで紹介という手段はとりたくない。一方、知人の方も、前記責任もあるし、また自らがプライバシーをさらしている弁護士と相手が近づくことを気にする意識も働いて、自分で探してもらう方を歓迎する、と。前記ブログの弁護士は、こう言っていました。

      「世の中には、『人に自慢したくなる店』というコンセプトを掲げる商店がある。この対極が、『誰にも教えたくない店』とのコンセプトだ。弁護士は、デリケートなプライベートを取り扱う。顧客は皆、静けさを望むものだ。法律事務所の立ち位置は、『誰にも教えたくない店』の方だろう」

     つまり、実はかつて弁護士にとって集客の本道であった「紹介」というルートは、前記メリットはあるものの、本来的には弁護士という仕事の性格からは、相容れないものをはらんでいた、ということです。それが、希少性と敷居の高さという、弁護士の現実があったことで、なんとか成立していたということになります。「誰にも教えたくない店」に当たるかもしれない法律事務所という存在は、それこそプラス評価の口コミが伝播しないかもしれない特殊性を持つということにも気付かされます。

     そして、もし、この推測が正しいとすれば、弁護士の増員によって希少性をなくし、CМやネットでの情報公開を進め、敷居を低くすることを目指した「改革」が、弁護士のメインの集客ルートを成り立たせなくさせてきているという、皮肉な現象も見えてきます。


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    紹介が減少しているのは私もですが、私は、原因を少し違って考えています。
    過払請求を除くと、当地の一般民事事件数は、2000年ころの1/2以下、破産申立事件数は1/3以下になっています。私の場合のこれらの事件関係の紹介案件も、2000年ころと比較して、ほぼ同じくらいの割合で減少しているように思います。
    すなわち相談者・依頼者が「紹介」に頼らなくなったというよりも、案件自体が大きく減少しているのが原因だと考えています。過払を除く一般民事等については、相談者・依頼者は、いまだに「紹介」に頼ることが多いのではないかと思います。
    田舎なのでネットなどでの広告をしている事務所は少数ですが、過払を除いて、相談者・依頼者が、広告に熱心な事務所に殺到しているようには見えません。というか、過払以外は、ほとんど処理していないように見えます。

    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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