反省なき司法の姿

      「なぜ、司法は責任をとらないで済むんだ」という市民の素朴な疑問に出会います。無実の人に有罪と決めつけて訴追した検察、その人間に有罪判決を言い渡し、長期勾留した裁判所。これを結果からみれば、犯罪的な行為だと見る大衆の目線はあります。弁護士についても、例えば民事の訴訟で、言い掛かりに近い相手方言い分に加担して、案の定、それが単なる言い掛かりだという司法の結論が出ても、ことそのことについて、懲戒事案にならない限り、それを反省し、相手方に対して責任を負うという風ではないことに、当事者は時に怒りを感じます。

     つまりは、彼らは直接的な結果責任は負っていないという問題です。ただ、これはある意味、当然であるという話になります。彼らは、それぞれの職責で「万全」を尽くしているという建て前ですから、「不幸にして」そうした結果が生まれる場合もあり、その場合にまで責任を負わされることはない制度でなければ、仕事ができないという主張になるのです。

     謝罪ということについても、よく取り上げられますが、前記三者についていえば、およそ裁判所と弁護士は謝罪することはありませんが、検察については、一応それを見ることはあります。ただ、よく読んで頂ければ分かりますが、その場合でも、あくまで「心ならずも」結果としてこうなってしまったということを強調し、前記「万全の」建て前を掲げ、制度上、本来責任云々ということではないのだけれども、時に同情をこめて、あたかもこの「不幸」に対して、道義的な意味での結果責任は感じている、といったくらいのニュアンスであることが分かります。

     ここで問われることになるのが、反省ということです。ある弁護士のブログでは、過ちに対して、謝罪し反省し二度と同じ過ちはしないようにしようと考えるという普通のことができない人種が、刑事裁判官、捜査機関、マスコミだとしていました(齋藤水谷法律事務所〈相模原市〉ブログ)。反省なき態度で、同じことを繰り返すのだ、と。

     また、先般、再審無罪判決が出された、いわゆる「東電OL殺人事件」についても、一審無罪をひっくり返した2000年12月の東京高裁判決の過ちについて、まるで同判決そのものがなかったかのような司法の対応を問題視する声もあります(救援連絡センター「ゴビンダさん無罪確定 謝罪も検証も拒否して居直る検察と裁判所」)。

     これらは、言ってみれば、そもそも「万全」という建て前そのものの信用がない問題であると同時に、制度上の建て前に逃げ込んでいる、いわば手続き上問題がないという言い分に、再発防止へ意思が全く読みとれない問題だと思います。それは、前記事件などに関していわれる「鑑定」の進歩の強調をもってしても、とても拭いされるものではない、不信感につながっています(「『科学の進歩』に逃げ込む誤判・冤罪体質」)。

     こうみてくると、誤判・冤罪問題を直接のテーマとして掲げていない、今回の司法改革が、再発防止への反省と自覚において、前記したような市民の視点を全く無視しているということはできます。とともに、このことの根底にあるのは、専門家の意識の問題ではないかと思います。「万全」にあぐらをかいていないか、手続き上の正当性や科学の進歩に逃げ込んでいないか、自分を疑う意識の欠落といえるかもしれません。

     前記弁護士ブログ氏は、前記3種の人種はいずれも、「被疑者、被告人がやったに違いない、自分が間違うはずがない、自分達が世の中の治安を守っているんだ、そのような過剰な意識が根底にある」と喝破しています。結果責任をとらないことが保証されている立場であるがゆえに、醸成されてしまう意識とえるかもしれませんが、逆に、そういう立場であるがゆえに、より払拭されなければならない意識のはずです。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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