「ハードルを下げる」ご都合主義

     国民がその気になっているわけでもないのに、どうもその気になっている方々の声が大きい憲法改正。そして、今回の選挙結果をバネにしようとしている方々が、口にしているのが、まずは憲法96条の改正からという話です。

     憲法改正に必要な衆参両院で各々3分の2以上の賛成と、国民投票で過半の賛成というハードル。安倍晋三・自民党総裁は「戦後レジーム」の脱却はまず、この96条改正からで、「国民の半分以上が憲法を改正すべきだと思っているのに、3分の1を超える国会議員が反対したら改正できない現行憲法はおかしい」としていますし(5月10日、mns産経ニュース)、12月15日付け読売新聞社説も同様の論調を掲げています。要するに「高いハードルならば、下げればいい」という発想です。

     前提は全く違いますが、ことこの発想だけみれば、今、弁護士会のなかで議論になりつつある、あるテーマを連想される方もいるのではないか、と思います。以前にも書きました日弁連会長選挙規定の改定問題です。日弁連会長当選に必要な総得票勝利と、「3分の1ルール」といわれる、最多得票会全国3分の1会獲得。2回目の投票で、後者を外す、つまりは結果として総得票で当選を決められるようにするという制度にすべきどうかの話です(「日弁連会長選挙規定改定への疑問」 「日弁連内対立構図のなかの会長選挙規定改定」)。

     このルールのために、再投票・再選挙にもつれこんだという事実はあります。ただ、このルールを当選できないことの「ネック」とする見方が、この提案には明らかに被ります。つまりは、当選できない「高いハードルならば、下げればいい」。

     この比較が、必ずしもこじつけのように思えないのは、この発想に共通したご都合主義が見てとれるからです。つまりは、「ハードル」の存在する理由の度外視です。権力者による暴走への歯止め。硬性憲法の証明ともいえるこの条文が、一体、何を意図したのか、そのことを飛び越える議論。片や、会内民主主義確保のために、大弁護士会の「専制」を招かないためという制度の意図を飛び越える議論。つまりは、飛び越えたい側にとって、不都合な「ネック」は、見方を変えれば、まさに「ネック」として機能する必要がある、もともとそのために制度設計された「歯止め」だということです。

      「歯止め」として機能している時に、「飛び越えたい側」から提案されている現実。もちろん、片や「この国のため」「国民のため」が強調され、片や「日弁連のため」(あるいはひいては「国民のため」)であることがいわれるわけですが、これまた「歯止め」の存在意義よりも、極力、全体の意思の忖度や社会的意義が被せられることになります。しかし、見方を変えれば、彼らの「野望」の実現かもしれない。ここを凝視しなければなりません。

     憲法改正に向けて、この「ハードル」を今、下げるということが、「民意」であるという状況があるとは思えません。一方、会長選挙規定の「ハードル」は、もともと少数意見保護を目的としているととれる以上、この「改正」が大都市会中心の意向を反映した多数決で決定されるということであるならば、そのこと自体が矛盾しているようにもとれる話です。しかし、会長選挙規定は、「飛び越えたい」勢力と日弁連執行部によって、着々と現実化しつつあることも伝えられます(武本夕香子弁護士のブログ)。

      国民にとっての、事の重大性が違うといわれることは百も承知していますが、どうしてもここに「権力者」にとって、都合がいい「野望」実現の手法と論法を被せてみたくなります。それを許すか、許さないか。まずは、そこに立つために、この視点が必要になるように思います。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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