日弁連内対立構図のなかの会長選挙規定改定

     司法改革の路線をめぐる、日弁連内の対立構図が鮮明になった時も、会内の受けとめ方は一様ではありませんでした。この実態を全会員が、否応なく目の当たりにすることになるのは、2年に一度の日弁連会長選挙の結果でありましたが、いわゆる路線をめぐる対立が、争点となることを経験する前の日弁連は、個人的あるいは会派(派閥)レベルはともかく、会全体を割る対立が、尾を引くということがなかったということもあると思います。

     主流派を構成して「政権」を維持できるという自信を持っていた「改革」推進派は、このことを当初、かなり楽観視していました。以前も紹介したように、この対立に対し、当時の主流派の幹部は、いわゆる合流論。いずれ反対・慎重派が折れてくると。「だれでも新しいことには抵抗があるものだ」といったセリフもよく耳にしました。

     ただ、ほどなく事態の深刻度を知った彼らのセリフは、「哲学の違い」といったものに変わります。つまり、対話は不可能と。当時、記事では、主流派が勝利しても、日弁連はこれまでにないような「野党」的存在を抱えることになると書きましたが、現実はその通りになりました。

      「改革」路線を反映した日弁連会長選挙は、さかのぼること1998年の小堀樹・前田知克両候補の対決にさかのぼり、次の2000年から反「改革」陣営からの高山俊吉候補の5期連続出馬を経て、その流れのなかでの2010年宇都宮健児候補の初の再投票での劇的勝利、そして本年、初の再選挙にもつれ込んでの同候補再出馬での敗北という結果でした。高山・宇都宮候補の立場は、異なりますが、日弁連が抱えた「対立」構図は引き継がれ、会員の不満を反映したその形の行きついた結果が、再投票・再選挙、さらにはその先の無限ループ的未決着を想定させるまでの事態であったということができます。

     そして、今、現日弁連執行部が進めている会長選挙規定改定の動き(「日弁連会長選挙規定改定への疑問」)は、この対立構図の反映とみなければなりません。2回目の投票で、いわゆる「3分の1ルール」(最多票獲得会が全国3分の1以上)を外す、つまり、もう一つの当選要件である最多票だけで当選できる形の模索です。事実上、1回目の同ルール適用を無意味化する、この形への疑問は、前記エントリーで書きましたが、最近も、猪野亨弁護士がブロクで的確な指摘をされています。

     この中で、彼は非常に重要な事情について触れています。

      「大単位会対地方単位会(実質は、派閥対非派閥)の対立は、2010年、2012年の会長選挙を通じても決定的となり、従来の激増路線が続く限り、解消されることはありません。そうなれば、もはや派閥候補が地方単位会で多数(といってもわずか3分の1ですが)を獲得する見込みはなく、それ故に決定的に邪魔なのが、会長選挙の再選挙規定(再投票における3分の1条項)ということになります」

     実質的には派閥・非派閥とくくれる大単位会と地方単位会の対立が決定的となった今の日弁連の状況のなかで、「改革」路線がこのまま焦点になる限り、大単位会・派閥候補が今後も勝ち切れなることはない。この決定的な彼ら側の認識、あるいは危機感が、この選挙規定改定の動きにつながっている、ということです。大単位会・派閥候補陣営は、選挙戦でも極力、日弁連の現状をこうした対立構図で描くことを嫌い、また、そうした形に持ち込まれることを不利とする見方に立っていたように見えましたが、選挙の勝ち負けにおいて、「3分の1ルール」が存在する危機感の裏返しともとれました。その除去は、あるいは初の再選挙で辛くも当選できた現会長と執行部の「使命」ように見えます。

     そのことは、「3分の1ルール」がなぜ存在してきたのかという意味とともに、この「対立」構図の意味もまた、消し去ろうとするもののように思えてなりません。


    ただいま、「日弁連会長選挙」「弁護士自治と弁護士会の強制加入制度」についてもご意見募集中!
    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。http://www.shihouwatch.com/

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信中!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR