「経済的エゴイズム」への疑念は「陰謀史観」か(2)

     こうしたやりとりには、あまり意味があるようにも思えないのですが、この場合、何の反応もなしというのも、いささか素っ気ないように思いますので、もう一度、ここで書くことにしました。

     私の書いた「『経済的エゴイズム』への疑念」というエントリーに対して、小林正啓弁護士がブログで「陰謀史観」であるという論を展開され、それに対し、このエントリーの趣旨について説明したところ(「『経済的エゴイズムへの疑念は「陰謀史観」か』」)、再度「陰謀」をいうならば証拠を示せ、という論を述べていらっしゃいます。

     彼が問題にしているのは、匿名の弁護士から私に意見として寄せられた次のような事柄にかかわります。

      「第2の『経済的エゴイズム』は、日弁連内部に巣くう『持てる弁護士』(多数の顧問先を既に確保し、顧問料収入だけでも十分に食えるブル弁・企業弁護士)にとっては、『マチ弁』の窮状などは、どうでもいいという考え、むしろ、既にご自身らが確保した『職業』に絡む経済的利権を手放さず、弁護士業務の『世襲化』を図るには、愚息・愚女(娘)が弁護士資格を取りやすくする・・・旧司法試験のような難関ではなく、レベルを低くする方がよい、という考えです」

     こうした弁護士会内に存在した背景の「深層」をえぐり出すべきではないのか、というのが、この論者の問題提起でした。そして、これは私がこの世界で度々耳にしてきながら、表立って語られない、取り上げられることがない話であったことから、ここであえて取り上げました。これに対して、なぜか小林弁護士は、とりわけ後段の部分に強く反応されているようにお見受けします。つまり、「弁護士業務の『世襲化』を図るには、愚息・愚女(娘)が弁護士資格を取りやすくする」という思惑が存在したことと、それが弁護士大増員賛成につながった事実を立証せよ、ということをおっしゃっています。

     そもそも「陰謀」という言葉を言い出したのは、小林弁護士であり、私は今回、この件を一言も「陰謀」とは表現していないのですが、彼の主張からすれば、「陰謀」だというならば、ジャーナリストとして証拠を示せ、証拠を示せないのに「陰謀」を口にするな、とのことのようです。

     最初のエントリーでもこうした反論を予想するなかで、示してきたと思うのですが、はっきり申し上げれば、おそらく推測されているように、少なくとも同弁護士がいうような、「確固たる証拠」は今、持ち合わせておりません。また、小林弁護士は、「たとえば、新司法試験開始後の二世弁護士の割合を調べてみたらどうか」「同期に占める二世弁護士の割合が、新司法試験開始後有意に増えた、というなら、それは『陰謀』を示す一つの間接証拠になりうるだろう」と言いますが、これもダメです。「7、8割合格」も含めて、当初の目論見が今のところ大きく外れているからです。思惑は思惑のまま、成就しなかった(していない)とみることもできる以上、この結果からの類推は意味がありません。

     さらに、小林弁護士が前記ブログで、元日弁連会長の御子息について語ったような、世代的に該当しない場合はともかく、能力的に前記ケースに該当したかしなかったかという検証など、個人攻撃的な要素をかいくぐって行うことが困難であることははっきりしているというべきです。

     したがって、小林弁護士の証拠の有無に関する批判は、いったんここで受けとめければなりません。しかし、同弁護士にご納得いただけるかどうかは別として、ズルいと言われても、そもそも小林弁護士が強く反応する後段の部分を「陰謀」と見て、「証拠」もあるぞ、といっている話ではないのです。もちろんこの後段の部分だけが、大増員方針選択の決め手になったなどとも言っていません。ただ、「闇」として存在している、といっているのです。

     小林弁護士は、「上記陰謀論をまことしやかに語る若手会員が存在する、という事実は、私も知っている。だが、証拠もなく上の世代を批判するだけの行為は、居酒屋で上司の悪口を言い合うのと同レベルの情けない行為だ」と言っています。ただ、小林弁護士が反応していない、前段の部分(ブル弁・企業弁護士の思惑)も含めて、この話は、少なくとも若手会員だけが、あたかも上司批判のようにしているものだけではありません。

     同弁護士の見方からすれば、表立って語られないのは、証拠がつかめないから当然だ、ということになるかもしれませんが、確たる証拠が示せないものは、すべて居酒屋談義として片付けることができないからこそ、あえてここで取り上げたといわなければなりません。小林弁護士の最初のエントリーに対して書き込まれた匿名弁護士のコメントからも、居酒屋談義以上の問題意識が会内に存在していることはうかがえます。

     発言に「重みを持て」というご主張は、真摯に受け止めようと思いますが、「ストレス解消」が目的というわけではないことは、ご理解頂ければとも思います。

     なお、一点、引用そのものが間違っているところがあります。同弁護士は「『陰謀史観には与すべきでない』と批判したところ、『陰謀史観に与しないという主張は、それ自身が、陰謀を隠蔽し擁護することになる』との反論をいただいた」としていますが、そうではありません。「陰謀に与しない」という立場の人が、確たる証拠がないことをもってして、頭からあり得ない「陰謀論」と決めつける行為が、心ならずも陰謀を擁護することになると言ったのです。もちろん、はなからあり得ないと決めつけているわけではない同弁護士は、これには当たらないと思います。


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    No title

    この点は、ブログ主さんの主張に説得力がありますね。口では司法改革の理念を唱えた弁護士の多くの心の底には、自分の子供が弁護士になりやすくなることへの期待があったというのは、いかにもありそうなことです。

    ただ、そこまで人の心理がわかっているブログ主さんが、増員反対を唱える弁護士の心の中に、殿様商売の維持、既得権益確保への強い思いがあることに気が付かないことが不思議でなりません。

    外から見れば、明らかすぎるほど明らかなんですけど。

    おかしいですよね。

    >なぜか小林弁護士は、とりわけ後段の部分に強く反応されているようにお見受けします。

    そうですよね。小林正啓先生にしては,変ですね。
    「前段」部分を一方的に捨象して,「後段」部分にのみ過敏に反応されるとは。

    前段の法科大学院関係者にみられる経済的エゴイズムは,法科大学院が破綻すれば,失職する学者(特に法曹実務能力のない研究者!)が現に存在する訳ですから,経済的利害関係は彼らにとっては直截・切実でしょう。これに対し,後段の経済的エゴイズムは,えてして無自覚・無意識的な惰性ともいうべき集団的心理傾向を指して問題提起しているのですから,これを一部日弁連幹部の「共謀」「謀議」を予想させる「陰謀論」に一方的に置き換えるのはいかがなものか,と思いますね。

    司法試験合格者・年間500名時代に比べれば,はるかに苦労せずに司法試験合格を果たした「二世弁護士」が輩出されいることは,ジャーナリスティックに調査するまでもなく自明ではないでしょうか(「苦学」という言葉は死後になりつつありますが,それでも,世間一般の家庭では,子息を大学を卒業させるだけでも,相当な経済的負担であって,その上に法科大学院の学費を援助するとなれば,進路を断念せざるを得ない家庭もあります。法科大学院制度のもとでは,競争相手が相対的に減るという面では,経済的余裕のあるブル弁・企業弁護士の師弟等に有利に働くことくらいは,余程鈍い弁護士でないかぎり,思うことです)。

    「今回、この件を一言も『陰謀』とは表現していない」といわれる貴兄のおっしゃるとおりだと思いますよ。

    『深層(膿)をえぐり出す』作業(2)

    (つづき)
     そして,このような「司法改革」(①大量増員論+②法科大学院制度)が,利害関係者らの「経済的エゴイズム」というダイナミズムのもとに推進された,という社会的・歴史的事実が,社会のコンセンサスとして自覚されるならば,
    自ずと自覚されるべきは,(1)法科大学院制度そのものが,教員・事務職員らの経済的利権と密接不可分に結びついていること,(2)法科大学院制度(そのコロラリーとしての,司法試験の受験資格制限)が「金持ちにしか法曹になれない」という標語の裏腹で観念されるべき,「持てる弁護士」らの「世襲化」を支える基盤となりうること,(3)弁護士大量増員によって,「自由競争原理」が導入されるというが,実は,既に優良顧問先を十分に確保した「持てる弁護士」と,ツテのない新人弁護士(即独,ノキ弁等)との間で公正な競争原理が作用する訳がなく,法科大学院は,大量の「三振組」のみならず,新人弁護士との関係においてさえも,彼ら受講生と国家予算(税金)を「喰い物」にしている,といった歪んだ経済構造が浮かび上がってくることになります。
     このような「深層(膿)」を我々法曹の一人一人が自覚し,このような欺瞞的経済構造の中核に位置する「諸悪の根源」が「法科大学院制度」,あるいは少なくとも「司法試験受験の資格制限」を伴った法科大学院制度であることを自覚したならば,「『深層をえぐり出す』という作業」の出発点は何か?,自ずと明らかでしょう。

     それは,良識ある全ての「マチ弁」が願っていること,即ち,まずは「法科大学院制度に絡む利権の権化」たる,井上正仁氏と鎌田薫氏を,「特別利害関係人」として「法曹養成制度検討会議」から排除することなのです。

    『深層(膿)をえぐり出す』作業

    貴兄から,「どういう形で成立するのかが分からない『深層をえぐり出す』という作業」というコメントをいただきました。

     確かに,「深層(膿)をえぐり出さないことには,正論が通らない」という私の意見は,具体性に欠け,実現可能性の乏しい観念論に過ぎない,との批判を浴びるかもしれません。

     しかしながら,ここで私が念頭にあることは,たとえ実現可能性が乏しくても,極めて単純・明快なことなのです。

     具体的に申しますと,「国民がより利用しやすい司法制度の実現」といった「美名」のもとに正当化された「司法改革」(その中核は,なんといっても,①法曹人口[実際には,弁護士人口]の大量増員と②法科大学院制度でしょう)が,実は,推進者・利害関係者の「リビドー」ともいうべき「経済的エゴイズム」によって突き動かされてきたことを,一人でも多くの弁護士・法曹関係者(勿論「確信犯」以外の方々です!)が「意識的に」「自覚」すること,そして,各人のかかる「自覚」のもとに,「失敗」「破綻」した「司法改革」の背景にあった,「経済的エゴイズム」(一面では私利私欲)の欺瞞性について,法曹界・弁護士業界,ひいては社会全体が,共通認識(コンセンサス)として自覚することが,まず前提となります。

    つづく
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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