「経済的エゴイズム」への疑念は「陰謀史観」か

     このブログのエントリー「『経済的エゴイズム』への疑念」で書いた内容について、「陰謀史観」であるという論を、小林正啓弁護士がブログで展開されています。

     小林弁護士は、私がここで書いた「司法制度改革審議会の席上、経済界側の委員ですら、地域経済の実情からも、弁護士が現実にやっていかれるのかどうかを危ぶんだ、年合格3000人体制に『大丈夫』と太鼓判を押したのは、当時の日弁連会長だったという事実」と、その後で引用した「経済的エゴイズム」の内容、「日弁連内部に巣くう『持てる弁護士』(多数の顧問先を既に確保し、顧問料収入だけでも十分に食えるブル弁・企業弁護士)にとっては、『マチ弁』の窮状などは、どうでもいいという考え、むしろ、既にご自身らが確保した『職業』に絡む経済的利権を手放さず、弁護士業務の『世襲化』を図るには、愚息・愚女(娘)が弁護士資格を取りやすくする・・・旧司法試験のような難関ではなく、レベルを低くする方がよい、という考え」を結びつけ、「文脈上、愚息(娘)に事務所を嗣がせるため司法試験合格者大幅増員に賛成した筆頭として、当時の日弁連会長を挙げている」としています。また、小林弁護士は、そのご子息の実名まで挙げて、前記に該当しないということを強弁されています。

     文脈上、こうとられてしまうとすれば、これは一応、弁明しておかなければいけませんが、元日弁連会長をこのケースにあてはめて、個人的責任を追及することが本稿の目的ではありませんし、ましてご本人やご子息を中傷するような意図も全くありません。

     では、なぜ、これを書いたのかといえば、小林弁護士が書いていらっしゃることに関連します。同弁護士は、「集団の意思と、構成員個人の意思とは全く別」で、「集団には集団の意思がある」、つまり、日弁連の方針選択は、日弁連の意思で行ったのだから、考えなければいけないのは、そちらの方なんだ、ということを言っておられるようにとれます。

     ただ、その結果はどうなるかといえば、「市民のため」の「改革」、あるいは司法改革宣言で、日弁連が対外的に表明している「集団の意思」が、並べられることになるのではないでしょうか。前記エントリーの前提は、「散々言われてきたような、多くの弁護士がこの『改革』の成功を本当に信じたとか、それが『市民のためになる』という善意からの行動だったとか、という説明」だけでは、納得できないものが会員間にある、ということです。その先に、何がいわれているのか、何が聞こえてくるのか、その現実として、構成員の意思に内在した「経済的エゴイズム」という説を取り上げたに過ぎません。

     もっともどんな内在的な意思が介入していようとも、あくまで「内在」ですから、小林弁護士がいうような「集団の意思」として表明されるようなことは、まずないというべきです。「皆様のご子息が弁護士資格を取り易くするためにも、是非、この決議にご賛同を頂きたい」などという呼びかけがなされるわけもない。常にちゃんと別の提案理由は用意され、それに挙手がなされるわけです。だから、もちろん最終的に集団の意思選択として、それが全国何分の一かの出席会員と委任状出席会員の意思であっても、全会員の責任ということになります。たとえ、決して表明されることがない、どういった内在的意思がリーダーたちを突き動かし、それが前記会員たちの選択の背景にあったとしても。

     小林弁護士のご主張は分かりますし、そもそも前記エントリーでも、「弁護士らしい反論」は予想しておりました。ただ、ここでは、弁護士会内でずっといわれている認識をご紹介し、彼の主張の先、つまりは直ちに「確たる証拠」がないとされ、封印されようとすることを伝えようとしたまでです。

     小林弁護士も「このように考えて弁護士大増員に賛成した人が実在した可能性は否定しない。全国に何人か、あるいは何十人かはいたと思う」と推測されていますが、その程度においての推測には当然、異論もあると思いますし、この「経済的エゴイズム」、「持てる弁護士」たちが存在した議論環境そのものの「深層」を、今、えぐり出す必要をいう会員の声があることは事実です。彼は、「ムッソリーニと愛人を吊したところで、ファシズムの病巣は取り除けない」と言いますが、ヒトラーがいかに合法的に政権を奪取したからといって、当時のドイツ国民の意思だけを取り上げ、「わが闘争」は読まなくていい、ということにはならないように思います。

     ちなみに小林弁護士は、陰謀史観には「与すべきではない」というお立場で、同史観そのものについても、自説を展開されていらっしゃいますが、私は少なくとも、現段階で確たる証拠がない=あるわけがない=トンデモ=陰謀論批判という見方には与しない立場です。いうまでもありませんが、すべての陰謀は、この論調に逃げ込める、むしろ逃げ込めるからこその陰謀というべきであり、陰謀に与しない立場から繰り出される前記トンデモ批判は、陰謀の最大の隠れ蓑として、心ならずもその擁護者となってしまうからです。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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