「予備試験」をめぐる嫌な予感

     新司法試験での予備試験組の合格率の高さが、予想通りの形で注目され始めています(「『予備試験組』合格者の現実」)。9月24日付けの東京新聞朝刊は「新司法試験 法科大学院離れ拍車」との見出しで、関係者の衝撃を伝えています。要は経済的な事情などで法科大学院に行けない人のための「例外ルート」が、活用されてしまうという脅威です。同日付けの日本経済新聞も「司法試験、予備試験組が高い合格率 『近道』で人気 金銭負担少なく学生に魅力」という見出しで、法曹界への「最短ルート」として注目されていることを伝えています。

     現状合格率1.8%の最難関ペーパーテストといわれる予備試験を経た、このルートが、志望者にとって、現実的に「最短」といえるかどうかはともかく、予備試験組の司法試験合格率68.2%に対し、法科大学院修了者については24.6%、法科大学院別トップの一橋大(57%)を10ポイント以上上回ったという現実は、当然、前記の見方につながります。

     もっとも、衝撃という意味では、東京新聞の記事も触れているように、むしろ予備試験組合格者58人のうち26人が大学生、8人が法科大学院生の方だったというべきかもしれません。この事実をもって、優秀で、かつ若い人材がこちらのルートに流れるという懸念になります。

     さらに、予想通りの展開を予感させるのは、ここから先です。つまりは前記エントリーでも書いたように、この予備試験の現実が、例外措置とする趣旨に合致しておらず、「抜け道」として利用されているとして、さらなる冷遇策、現役法科大学院生・学部生の受験禁止や制限措置に舵を切る口実となる予感です。

     しかし、これをやったならば、いよいよ法科大学院は最末期というべきかもしれません。若くて優秀な人材が他のルートに流れることを、自らの価値を棚上げして、封じようとしていることが歴然としてしまうからです。そもそも受験資格化にしがみつく法科大学院本道主義には、その価値で勝負して勝利する自信のなさ、あるいは利用されない脅威が張り付いているというべきですが(「受験資格化を必要とする理由」)、まさにそれが露骨に出される、いわばこうなったならば、力づくでもという話にとれてしまいます。

     東京新聞の記事には、予備試験を「金と時間を節約する抜け道」とする法務省幹部の言葉が引用されています。志望者が金と時間を節約する道を選択することを頭からいけないことだというのであれば、まず、法科大学院ルートはそれに見合う価値を示すべきです。むしろ、金と時間のかけるだけの価値がないという判断をされているという現実への、自覚があまりにないように思えてしまいます。そして、それでも価値が見合わないルートを力づくで強制した場合、今度はさらに法曹界が見離されるという自覚もないようにみえるのです。

     同紙は、今回の予備試験の結果に危機感を募らせている中西一裕・日弁連事務次長のこんなコメントで記事を締めくくっています。

      「法科大学院は、実務家のため必要な教育を行う場所。『早く受かりたい』という理由で予備試験を選ぶという態度は、制度の趣旨と懸け離れている」

     肝心の「実務家のため必要な教育を行う場所」ということが、本当に志望者に理解され、たとえ早く受かったとしても、あとあと大きなツケがまわってくるくらいの実績を作ることができないならば、あるいはその自信がないのならば、いくら「けしからん」と言ってみたところで、どうにもならないということを中西事務次長は、理解されていないように思えます。

     まず、制度の趣旨が、受けとめられている制度の現実と「懸け離れている」ことを直視すべきです。


    ただいま、「予備試験」「日弁連の『法科大学院制度の改善に関する具体的提言』」についてもご意見募集中!
    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。http://www.shihouwatch.com/

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信中!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 資格試験
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    No title

    匿名弁護士さんに同感です。
    貧しい人達が歯を食いしばって納めた血税を、なんの意味もないハコモノのために、平然とドブに捨て続け、
    ローにお金払えない人の合格者枠を減らしまくったくせして、「合格者大増員こそ正義」とうそぶき、
    国から合格枠特権手に入れなきゃ学生集めできなかったくせして、「弁護士はもっと競争しろ」とのたまう。
    こんな連中が、旧試法曹の人間性を云々言ってるわけですから

    法曹の人間性を学者、官僚が云々しようという愚昧さを嘲笑う

    おそらく、法科大学院、法務省、文科省、「改革派」の弁護士の側から、予備試験受験資格の制限という報復がなされるのでしょうね。
    ただ、根本的な問題として、法科大学院の制度設計者や教員は、実務法曹の人間性を云々できるような立派な人格の持ち主でしたかね?と、問いかけたい。
    まともな講義もできず、予備校に学生を取られたことにただただ嫉妬して、国を抱き込んで、税金を浪費させてまで、私腹を肥やして、肝心要の司法制度の安定や、法曹・法曹志望者個々人の人生なんぞ、どうでもいいとかぬかしている、本当にご立派な連中ですよね。

    No title

    だったらどうして、実務家のための必要な教育を受けていない、否受けようともしない奴らが、全国どこの法科大学院卒をも上回る最優秀者として、超高給で有名な最大手渉外事務所でひっぱりだこになるんでしょうか。最大手渉外事務所ってのは、実務家として失格レベルのろくでなしで充分に務まるような仕事しかしてないんでしょうか。きっとそうなんでしょうね。幹部はみんな、東大法学部を出ただけで法科大学院なんか出てない奴ばっかりだから。

    旧試験時代にも、1次試験というのがありました。これを高校生のうちにも通っていれば、大学組よりずっと若く弁護士になれた筈ですが、そんなのが最優秀者としてひっぱりだこになってたなんて話は聞いたことがない。

    日弁連事務次長とやらがどこのどんな事務所に居るのか知らない(調べようとも思わない)が、そんなに予備試験組を忌み嫌うのなら、その予備試験組を最高に優遇する最大手事務所を冷遇してみろ。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR