弁護士の「口達者」イメージ

     弁護士は「口がうまい」といわれます。一般の弁護士のイメージのなかにも、相当に強くあるもので、弁護士外の人との会話のなかでは、それが当然のことのようにとらえて、話しを進めていると感じることもしばしばあります。

     正確なところは分からないということをお断りしなければなりませんが、分析心理学の世界でも、夢に登場する「弁護士」は、「口が達者な人」「理屈っぽい人」の象徴だそうです。実際の法廷で立ち会ったことがない一般の方の中には、映画やテレビドラマのなかの法廷シーンで、丁々発止とやり合う弁護士のイメージが強烈にあるのかもしれません。

     もっとも、実際の弁護士業務は、書面でのやりとりが多くて、口での交渉は意外と少なく、イメージと異なって口が達者とは限らない、という弁護士もいます(「滋賀県草津市弁護士ブログ」)。確かに口が達者とはいえない方でも、優秀な弁護士がいることも事実ですし、一般の方の弁護士選びでは、前記したような基本イメージがあるだけに、そこを優劣の判断に結び付けてしまう傾向がないわけではありませんが、それは必ずしも妥当しないことは踏まえておいてもいいように思います。

     ただ、このイメージは、能力として評価される側面だけを持っているわけではありません。むしろ、多く目や耳にすることになるのは、ネガティブなものとしてです。つまりは、弁護士の口が達者なことによって「騙される」という脅威のイメージです。

      「弁護士の口車にのって」といった、言葉巧みに、結果的に損をする方に誘導されるというイメージ。また、「いかにも弁護士らしく」という言い方のなかにも、いろいろと屁理屈をこねているといったニュアンスが込められることは少なくありません。現在の政界登場人物には、「弁護士」の肩書を持っている方は少なくありませんが、その方への前記言い方がなされる時は、多くはそうしたニュアンスを込めた批判的なものであるのが現実です。

     いうまでもなくこれらのとらえ方には、弁護士という仕事に対する、弁明と自己正当化、あるいは我田引水に長けた存在であるという、強烈なネガティブイメージが存在しているということになります。前記の夢分析でも、「本当は文句のひとつも言ってやりたい」とか「理解されていない」という気持ちの表れという解釈もあるようです。弁護士に接した経験がない人と、経験したことがある、しかもそれが残念ながら良いイメージの「出会い」ではなかった場合の人が、この点で、全く同じことになるのかどうかは、素人考えでは、疑問もありますが、弁護士という存在には、こうした要素があるのは事実だと思います。

     このとらえ方を、弁護士の方のなかには十分理解している方も多いとは思いますが、これが弁護士への不安要素・不信要素として、これからも大きなウエートを占めることは自覚しておく必要があります。弁護士の仕事では、言葉を尽くして、依頼者に説明する局面もあるわけで、それを簡略化したり、省く傾向は、もちろん、言い訳がありませんが、一種のサービス精神も含めて、あるいは安心させようとして言っている言葉に、実は前記したようなイメージの不信感を増大させているケースがあります。

      「言うことは調子がいいのだけれど、どうも信じられない」

     こんな言葉とともに、「信じてもいいと思うか」といった意見を、市民から求められることは少なくありません。もちろん、こちらはそれだけでは判断できるわけがありません。相性もありますが、コミニュケーション不足という面も否定できないので、とにかくその弁護士に何度でも、遠慮しないで、疑問点をぶつけるように言います。こうしたケースの依頼者市民のなかには、やはり弁護士に対する気後れというものをみることがありますが、そのために前記イメージがどんどん増幅するということにもなります。

     裁判員制度時代には、むしろ弁護士は法廷技術としての話術を身につけるべき、ということが、弁護士会内ではいわれてきました。前記書面でのやりとりが多い弁護士業務の実態を知らず、映画やドラマから前記イメージを作っている市民のなかには、この話をすると、やや意外だと受けとめる方もいらっしゃいますが、このこと自体にも、「弁護士はさらに言葉巧みになるのか」といった受けとめ方もあります。従来の法曹養成では、こうした能力を鍛えるということがむしろ少ないのに対し、法科大学院ではソクラテスメソッドといわれる対話形式の教育方法がとられていることを挙げて、旧司法試験組よりもさらに話術で鍛えられた弁護士の登場を予想する見方もあり、その中には前記イメージに被せた警戒感をにじませるものもあります。

     これは弁護士としては、ニーズと不信感の間で、意外と難しい対応を迫られているというべきかしれません。これをこの仕事の宿命と受けとめている方もいるとは思いますが、弁護士は大衆のこのイメージと、前記コミニュケーションのあり方という点は、今後も強く意識しておく必要がありそうです。

     ちなみに、前記夢判断の世界では、自分が「弁護士になる」夢は、なぜか前記ネガティブな口が達者な人間になるということではなくて、自身の「正義感が高っている」という解釈もあるようです。これも弁護士に対する大衆の心的イメージに基づくものであるのならば、ここが増幅されるような現実は望みたいところです。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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