「予備試験組」合格者の現実

     かつて某法科大学院院長が、入学式で新入生に対して、「君たちは正規軍」だと言ったという話が、ある弁護士ブログ(「弁護士げんこでん」)で紹介されています。つまりは、旧司法試験や予備試験チャレンジ組は、「非正規軍」という位置付けになります。

     法科大学院関係者が、いかにも言いそうな感じという印象を持ちます。ブログ氏は、この発言を、むしろ「非正規軍」と位置付けた側を揶揄したものとしています。この院長は、従前の司法試験制度が大嫌いで、司法制度改革にもかかわっていたようだ、として、ブログ氏は、こう括ります。

      「つまりこの人らみたく司法制度改革に関わっていた有識者達にとって、『新司法試験』とは『真司法試験』だったということです」

     なるほど、という感じです。旧司法試験を経た現役法曹を「欠陥品」的な扱いまでする法科大学院関係者もいたという話は、これまでも耳にしてきたことだけに、法科大学院本道主義者の「プライド」とは、この位であったとしても不思議ではありません。

     その「非正規軍」とされた予備試験組が加わった、初めての新司法試験の結果が出ました。全体の合格者数が過去最多の2102人で前年比39人増、合格率約25.1%と新試験導入後、初めて上昇に転じたことが注目されていますが、この合格者には、予備試験組58人が加えられていますから、法科大学院修了者の合格実績には大きな変動がない、ともいえます。

     むしろ、ここで注目すべきなのは、やはり予備試験組の結果です。彼らの合格率は68.2%であるのに対し、法科大学院修了者については24.6%。2007年閣議決定の「規制改革推進のための3 か年計画」で、既に「予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験合格者の割合とを均衡させる」という方向が打ち出されていることから、予備試験組の母数を増やす、つまり同試験の合格者を増やす措置が、次回とられるのではないか、との見通しが言われています。

     ただ、むしろ気になるのは、予備試験合格者の内訳です。受験者20~24歳31人中30人合格、25歳~29歳4人全員合格。ところがそれ以上の年齢の受験者30歳~64歳についてみると、50人中24人と急激に数字が下がります。実は職業別にみても、58人中34人が現役の学生で、法科大学院生9人中8人、大学生28人中26人が各合格。その一方で、公務員・教職員・会社員・法律事務所職員・塾教師・自営業として分類されている、いわゆる有職者は、合計25人中10人合格にとどまっています。

     これは、法科大学院制度によって、働きながらの受験の道を断たれ、予備試験に活路を見出そうとしている志望者たちには、ショックな結果というべきです。予備試験の過酷な現実です。

     さらに、それにとどまりません。この結果から、予備試験の現実が、経済的事情で法科大学院に進学できない者のための例外措置とする趣旨に合致しておらず、むしろ「抜け道」として利用されていると解釈されれば、さらに冷遇策に舵を切る口実を与えかねないという見方もできます(「一聴了解」)。つまりは、「非正規軍」に、相当程度の「正規軍」と「正規軍候補者」が含まれている現実あるいは傾向を、前記法科大学院本道主義者たちがどうとらえるか、という話です。

     そもそも「バイパス」といわれたこのルートは、前記したような経済的事情等を持つ志望者救済という設置趣旨ながら、そのことの実効性よりも、いかに法科大学院制度の足を引っ張らないか、そのことの方を本道主義者たちが懸念し、にらんできた制度というべきです。まさに「正規」「非正規」という彼らの発想の反映といえます。

     予備試験は、志望者の機会保障を犠牲にしている法科大学院制度の、皮肉な象徴といえるものです。それだけに、今後の同制度の運命とともに、注目していかなければなりません。


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    No title

    法科大学院を沢山作りすぎたので、当然の結果だと思います。
    大学院の数を大幅に減らし(全然受からない所は廃校)、大学院修了者の司法試験合格率8割以上にする。これでみんな解決。

    医学部定員と医師国家試験合格者数みたいな感じに。

    予備枠なんか狭くし続けられますから、一定の人数はローに行くでしょう。志望者減で中下位ローは潰れるでしょうが、「定評ある」法科大学院はしぶといと思いますよ。それより司法修習のほうが先に崩壊するのではないですかね。借金と就職難でこれ以上もちませんよ。修習廃止、実務教育は「定評ある」法科大学院で、という思惑通りに事が進んでいる気がしますがね。

    疑問です

    ちょっとわからないのですが,予備試験ルートとロー卒ルートとで,合格最低点は同じなのでしょうか?
    もし,同じということであれば,今後,予備試験ルートの合格者のほうが増えると推測されます。
    旧司法試験時代の合格者500名から700名の時代でも,在学合格者は少なからずいました。
    2100名などというインフレ時代の司法試験では,それこそ合格最低点は途方もなく低いものと思われます。
    それこそ,額面上は,旧司法試験では,総合CとかDレベルで,現在の司法試験は合格してしまうことになります。
    昨今の弁護士就職事情から,能力者が法曹界を敬遠する傾向にありますので,受験者のレベルが旧司法試験時代より相対的に低下しているだろうことから,Eレベルでも合格です。

    そうすると,それなりの能力者は,予備試験を目指し,さっさと合格して行くことになります。
    となると,ロー卒合格者は,ただそれだけで,格落ちとのレッテルを張られる存在になるのでは,という気がします。
    そうなってくると,昨今の弁護士就職事情を考慮すると,予備試験組=エリート,ロー卒組=即独予備軍,となり,まともに法曹界を目指す人はローには入らないので,結果,ロー制度は事実上崩壊,となる気がします。

    拝読しました。

    「30歳~64歳についてみると、50人中24人と急激に数字が下がります。実は職業別にみても、58人中34人が現役の学生で、法科大学院生9人中8人、大学生28人中26人が各合格。その一方で、公務員・教職員・会社員・法律事務所職員・塾教師・自営業として分類されている、いわゆる有職者は、合計25人中10人合格」ですかぁ。現実は厳しいですね。

    結局、予備試験が出来れば、予備校が絡む。予備校に勝てない大学サイド、という流れになっているのかもしれません。

    もっとも、予備試験の合格率は低いので、法科大学院がメインであることは変わらないのでしょうけど。

    No title

    学力のピークを二年維持することを求める予備→司法ルートは、特に有職者にとってあまりにも過酷ですね。まあ今年の結果は、単に油断が原因かもしれませんが。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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