日弁連「改革」史観に基づく内向きアピール

     この司法改革について、日弁連の主導層が既に形成している、「改革」史観。それは、これまでもたびたび取り上げてきましたように、「改革」に対する日弁連の主体性・主導性と、そしてその成果の強調を最大の特徴とするものです。ただ、それは別の見方をすれば、弁護士の強力な使命感の自覚、さらには弁護士中心主義ともとれるようなものを軸にしていることが分かります。

     そして、そのアピールは、むしろ内向きには、個々の弁護士に対し、強力にそれを促すものとなっています。1990年から2009年まで、日弁連の対外的な決意表明として出されてきた「司法改革宣言」も、当然、会員への啓発、あるいは動員促進という性格を、一面で持っていたとみることができます。

     昨日、取り上げた「これからの司法像に関する基本的提言」(「日弁連『これからの司法像に関する基本的提言』の意味するもの」)のなかにも、日弁連「改革」史観がはらむ強力な使命感の自覚促進や、弁護士中心主義といえるものが、強く打ち出されている下りがあります。

     この「提言」は、より良い司法を実現するために、「利用しやすい司法の実現」「法の支配の実現」「国民の身近な開かれた司法の実現」という視点から、弁護士の役割が拡大していくことが必要、として以下のように続けます。

      「そのためには、弁護士が国民の信頼に支えられていること、そして弁護士が自由な活動が保障されていることが不可欠である。弁護士が国民から信頼され続けるためには、弁護士が『法律に精通した者』であり、『高潔な倫理観に基づいて職務に従事する者』であり続ける必要がある。そして、弁護士の自由な活動は、弁護士自治に支えられているのであり、弁護士自治を守ることは弁護士がより良い司法を実現していくために不可欠であるといえよう」

     弁護士が自らの役割拡大こそ、「より良い司法」実現につながるとくくることのうえに、進められている前記「必要論」は、一見謙虚な言葉を使いながらも、一市民としてみれば、正直、よそよそしいものすら感じてしまいます。それは、すべてが国民の求めに応じたというよりも、弁護士自身が規定したもののような印象を受けるからです。弁護士が国民から信頼されることも、「高潔な倫理観」に基づくべきことも必要でないわけがありませんが、それが今、進行している弁護士による「弁護士の役割拡大」を前提とした激増政策のなかで、どう担保される話なのか、むしろそれを揺るがす方向に現実が進んでいるように見えるからでもあります。

     そして、このよそよそしさは、もはやこれを突きつけられている多くの会員弁護士も感じることではないか、と思います。つまり、それこそこれまで繰り返し日弁連が掲げてきた、こうした会員の自覚を促すような、弁護士のあるべき論では、どうにもならないことが現在起きているという、既に答えは出ていると考える弁護士は少なくないはずだからです。

     弁護士自治について、見ようによっては、ことさら「反権力」という視点を伏せて、「自由な活動」を支えるためとする論法は、その狙いほど、弁護士にも一般にも伝わりやすい必要論になっているとも思えません。むしろ、会員弁護士のなかには、「自由な活動」どころか、自治=強制加入こそ、弁護士の自由な活動を縛る「規制」だという見方が強まっているのが、現実です(「『弁護士自治』崩壊の兆候」 「『弁護士自治』の根拠」)。

     また、中心主義という意味では、「提言」は、司法制度改革審議会の最終意見書が、いわば棚上げにした格好の、いわゆる隣接士業との関係について、弁護士の活動拡大にあたって、「避けて通れない問題」との認識を示したうえで、こう述べます。

      「弁護士の紛争の予防・解決の初期の段階から広く国民の需要に応えようとすれば、隣接士業との連携・協力のもとに、総合的な援助システム(いわゆるワンストップ・サービス)を構築することが必要となろう。他方で、これからは、弁護士が、これまで隣接士業が担ってきた分野について業務領域を拡大していくことも予想される。いずれにせよ、初期段階での法的需要に効果的に応えていくための対策を検討していく必要がある」

     初期段階で法的需要への対応として、ワンストップ・サービスとしての協力関係、いわば弁護士がその意味で隣接士業を利用することには妙味を感じても、増員された弁護士が職域を拡大することを前提とすれば、隣接士業にはお引き取り願いたい、という本音です。

     ここは当然、隣接側からの反発が予想されますが、そのことよりも、彼ら隣接側が「担ってきた分野」に当然に踏み込まざるを得なくなる弁護士の役割拡大の発想、それを支えようとする増員政策がなぜ、必要なのか。つまり、この国の法的ニーズの「受け皿」を士業総体として見ない発想、逆に、そう見てしまうと、あるいは弁護士の激増政策そのものの必要性をぐらつかせるがゆえに、そう見ない、司法審意見書以来の発想が、そこに読みとれるのです。

      「改革」路線のうえでの、これまでの焼き直しのように見えてしまう、日弁連のこの内向きのアピールには、やはりどうしても既に破綻している精神主義の匂いを感じてしまうのです。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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