弁護士の状況に注がれる医師のある目線

     弁護士増員や競争という問題をめぐり、なにかと引き合いに出され、比べられる医師。法科大学院を法曹養成の中核に据えるプロセスの教育という発想のなかには、当初から医学部のイメージがあったともいわれますが、いまだにそれらを範にできるとの見方が、この「路線」を推進しようとする側のなかにある印象を持ちます。

     ただ、当の医師やその周辺が、今の「改革」がもたらしている弁護士の状況をどんな目で見ているのか、その一端を教えてくれるような記事を掲載している関係者のブログ(「大学病院部長が日本を斬る……の?」)があります。タイトルは「弁護士会ってどうなの」

      「医者たちは言いますよ、弁護士の様にだけはなってはいけないと」

     法科大学院などに踊らされて弁護士になったはいいが、早速の就職難。法曹人口の増加は弁護士会も賛成したはずだが、こんな当たり前のことを法曹資格(注・法律関連資格の意味か?)の最高峰、司法試験合格者が一体どうして予想しなかったのか、何を目指しているのか、結局、数絞れってことか、企業にサラリーマンとして就職しろってことか――。こんな素朴な疑問を羅列したうえで言います。

      「弁護士にしろ、医者にしろ自己犠牲が必要な部分ってあるんですよね。だから、自分たちの利益のために動いてはならないという弁護士の姿勢は潔いと思いますよ。医者も医者増やせと言ったのは医者ですからね」
      「でもね、弁護士なら、金銭的な紛争なども関わってくるんですよね。その時に弁護士に対して絶対の信頼がなければその職業って成立するんですか。かつては数百人しか合格しない最難関試験だった。だからこそ信頼されていたんでしょ。金の為には働くはずがないと。医者や弁護士が金の為に働くようになったら、そりゃ終わりでしょ」
      「ここまで増やして、自分たちの利権を守るためとの主張は出来ないにしろ、結局質が下がって損をするのは国民ですよ」

     彼は非常に重要なことを言っています。自ら手を挙げた増員という方向がもたらしたのは、「金のために働く」弁護士たちの登場。それは難関を突破してきた人材というイメージが形付くっていたものとともに、大衆のなかにある彼らへの基本的な信頼を破壊する。それはこれまで自己犠牲をともなって存在してきたはずの弁護士の姿を消し去り、そのツケは国民に回って来るという話。実は、そうした弁護士の状況に、自分たちは陥ってはならないという目線で、医師たちが見ている、と。

     実はこのブログ氏は、別のエントリー(「医学部人気が高い:アホですか」)で、これまで歯学部や法科大学院を目指していた層が、より「食える資格」(学費値下げ競争で元がとれる)、より簡単に受かるとの見通しのもとに医学部を目指す傾向を取り上げ、医学部定員増がもたらす質の低下、訴訟の増加、そして意識の変化を懸念しています。

      「勿論いまどき医者を聖職だなどと言うつもりは有りませんが、こうなると何が起きるかというと、単に職業として医者という仕事をやる、ということに
    なります」
      「医師増員の結果待っているのは、訴訟の嵐。その結果、更に救急や外科系が減少するでしょう。また、田舎の医療は保てるのか」
      「日本の医療が保っていたのは間違いなく医者たちの使命感です。自分たちが医療を支えているという自負です。だから、時間も金も関係なく働いているんですよ。勿論その意識は薄くなってきたのは事実です。それは医者も労働者だというんですから、サラリーマン化するのは当然ですよ」
      「ある時は聖職者のように自己犠牲で働け。しかし、結果が悪ければ訴訟だ。収入は聖職なんだから少なくても良いだろ。これを受け入れ続けるのは容易ではありません」

     これは、ぴったりと弁護士の状況に重なってみえます。これまで弁護士を支えていた使命感の減退とともに、強まるビジネスとして、一サービス業として割り切る意識、結果としての弁護過誤訴訟増加の恐れ、そして、それでもいわれることになる「成仏理論」(「弁護士『成仏理論』が描き出す未来」)。もっとも、彼が言うような「訴訟の嵐」「結果が悪ければ訴訟」というのが、皮肉にも弁護士激増政策がむしろ求め、期待している社会という関係になります。

     彼の見方がすべてではない、という異論が早速聞こえてきそうです。ただ、もし、今後の法曹養成をめぐる議論で、その範として医師・医学部の事情通などのご意見を拝聴したとしても、「改革」に対する前記したような目線もあることが、とこかで取り上げられることはあるのでしょうか。


    ただいま、「弁護士の競争による『淘汰』」「今、必要とされる弁護士」についてもご意見募集中!
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    テーマ : 弁護士の仕事
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    No title

    muhuhuさん

     情報のご提供ありがとうございます。

    読めば本物だと誰でも分かる

    この部長をにせ医者だというのはこの部長に散々叩かれた
    獣医、薬剤師、柔道整復師です
    中でも獣医たちは執拗です。

    ご注意を!!

    No title

    m-flyさん

     情報のご提供ありがとうございます。
     拝見させていただきます。

    この人物は偽医者ですよ。

    河野様が取り上げた「大学病院 部長」なる人物は偽医師ですよ。
    この記事だけでなく、通読してみれば異常さがわかると思いますが。

    検証しているブログもありますので。
    http://daigakubyouinbutyou.blog136.fc2.com/
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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