弁護士にとっての「肩書」

     長年、弁護士界を見てきても、時々、分からなくなるのは、弁護士にとって、いわゆる「肩書」というのが、実際にどのくらいの価値があって、どのくらいの魅力があるのか、ということです。

     そう思ってしまうのは、以前にも書きましたが、弁護士会の役員選挙に、それこそ目の色を変えて臨む弁護士の姿を見ていることもあります(「選挙に燃える弁護士たち」)。もちろん、選挙に出馬する人がみんな、「肩書」ほしさにやっているというわけではありません。弁護士会や司法を変えたい、といった高い志を持っている人はいます。

     ただ、抱えている仕事も犠牲にして、ものすごい労力とおカネをかけて、臨む姿を見ていると、正直、公式見解は別として、すべての人が同じようなレベルの志で臨んでいるとまでは、とてもいえないように見えるのです。

     もうかつてのことかと思いきや、どうも最近もあるようですが、弁護士会の役員選挙に出馬し、落選した候補者が、名刺などに「元○○○会会長選挙候補者」などと刷り込んで、依頼者などにわたしているといったことがあります。

     「候補者」ですよ、落選した。「候補者になるのも大したものなのだよ」ということのアピールでしょうか。ぱっと見た市民は、「えー、会長さんなんだ」と思ってしまうかもしれません。

     こういうエピソードも見るにつけ、やはり弁護士にとって「肩書」とは、ありがたいものなのではないか、と思ってしまうのです。

     よく「肩書」の価値について、弁護士にふってみます。よくいわれることは、弁護士というものは、長年仕事をしてきてキャリアを積んでも、普通の会社に勤めている人間のように、課長だの部長だの、果ては取締役といった、それこそ名刺に刷り込んでアピールできる「肩書」がないんだと。だから、という話です。

     あとは会長・副会長クラスになると、社会的信用も違ってきて、退任したあとの本業の方も違ってくるとか。こちらの方も確かに、退任後も現職時代に作った「○○弁護士会会長」といった名刺を依頼者に見せている、という話もよく聞きます。

     断っておきますが、すべての弁護士がこういう考えであるというわけでは、決してありません。前記したように選挙に打って出られる方にも、全く「肩書」のメリットなんて念頭にない方が沢山いますし、そもそも弁護士会の役員というポジションそのものに妙味も、魅力も感じていない弁護士が、おそらく大半だとは思います。

    それでも弁護士も、やはり人の子とでもいうべきでしょうか。「肩書」そのものの威力にすがりたくなる人もいるように思えるのです。

     ただ、根本的に違うように思えるのは、「○○事件弁護団長」とか、「○○裁判主任弁護人」といった、内容が出でいる場合です。実績のアピールは、市民に伝える意味があります。その意味の範囲では、「元会長」が全くいただけないということにはならないことになります。また、なにかの見返りを期待した、自己宣伝というよりも、自身の誇りとして掲げたい、という気持ちも尊重したいとは思います。

     やはり、個々の弁護士のメンタリティの問題というべきかもしれません。弁護士は「弁護士」で十分。肩書など必要ない、という方はそのように実践されているわけですし、そうでない方もそれなりに、という話です。

     しかし、あえてご忠告申し上げれば、そのメンタリティは、「肩書」アピールから透けて見えて、あるいはご自身の意に反して、伝わる市民には伝わっているだろうということです。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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